表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

だるまさん ~試作~

作者: 太次郎兵衛



『だーるまさんがこーろんだ』


近所の公園で元気に遊ぶ子どもの声、うるさいセミの鳴き声が聞こえてくる。

"嫌な客"に絡まれながら8連勤を終えた日に夜中の2時までサークルの先輩の飲みに付き合わされて二日酔いになってる俺の頭には鈍器で繰り返し殴られているかの如く響いてくる。



「いってぇ…もうこんな時間かよ…」

時計の針は夕方4時を指していた。

幸い今日はバイトのシフトは入っていない。

ゆっくり寝られると思っていたが、明後日までのレポート課題を済ませなければならない。



「大学生ってこんな大変なのか…」

愚痴と後悔を零しながらも、子どもの声とセミの鳴き声が鈍く殴りかかってくる。

1時間ほどパソコンに向かってレポート課題をやっていると今度は違う鈍器で殴られた。


ドンッドンッ

「キャーーーーーーーー!!!」

ドンッドンッドンッ


「またかよ、もう勘弁してくれよ」

上の階の住人は決まって夕方5時に、足踏みをして奇声をあげる。大家に相談しても改善はしてくれない。深夜まで働いて家賃4万も払ってるのに。おかしな話だ。

20分ほどすると上の階の住人も大人しくなる。

しかし近所の公園で遊ぶ子どもの声とセミの鳴き声は止まらない。


「少し仮眠とって続きは後でやるかぁ」

鉛のような重い体を子どもの声とセミの鳴き声を背にし、アラームを2時間後に設定して眠りにつく。




目が覚めるとバイト先にいた。


なぜだ?俺は今まで部屋にいたはず。


俺はコンビニの制服を着ている。

店内の時計を見ると9時を指していた。

外は暗いから夜の9時だと悟った。

でもこれは夢だろう、だって部屋で寝てたんだから。夢に違いない。


時刻が分かり、夢だと思うと客が入ってきた。


「おぉ、アンちゃんまだレジやってんのかぁ?」


ほぼ毎日来る"嫌な客"だった。


「いつものくれよ。しっかしいつまでレジなんてダサい仕事してるんだぁ?俺らの時なんかなぁ、腐るほど金があったからよぉ、女を取っかえ引っ変え遊んだもんだぜぇ?」


店で1番安いタバコを作り笑顔で差し出し会計を済ませる。だが"嫌な客"は帰らず、ねちっこく話をする。

これがいつものことだった。だが違った。


「んじゃ帰るなぁ」


"嫌な客"はあっさり帰って行った。


まあ、夢だし。現実とは違うからな。


そう思っていると次は子どもが来た。

小学生くらいだろうか、こんな時間に来るのはおかしい。


まあ、夢だし。夢だからおかしくはない。


「虫のご飯は売ってますか?」


子どもが俺にそう聞く。

虫の飯なんてコンビニにあるかよ。

心の中で呟くと子どもは

「そうなんだぁ、ありがとうございます。」

少し残念そうな声色で礼を言った。

子どももすぐ帰った。


なんなんだこの夢。

そんなことを考えていると

「あがっていいよー」

と店長の声がした。


夢にまで出てくるのか、店長。

店内の時計を見ると10時を指していた。

俺はバイトを上がった。


店の外に出るとポケットに入れていた携帯が震えた。


〈今から飲まね?〉


サークルの先輩からだった。

昨日、いや今日と同じタイミングで連絡が来るなんて気持ち悪い。そう思いながら

〈是非!どこで飲みますか?〉

断り切れないことは明白だからキャラでもない返事をした。



「それで彼女がさぁ!!」


参加したくもない飲み会で先輩の話を永遠と聞く。

携帯の時計を見ると1時を指していた。


おかしい、この夢いつ覚めるんだ。


そう考えながら飲み会が終わったのは2時だった。


本当におかしいな夢だ。


フラフラの足で帰る。

途中電柱の根元で嘔吐もしながら。

口の中がゲロの臭いで満ちて気持ち悪い。汗もかいて気持ち悪い。嫌な人間に関わり続ける人生をこれからも送るのかと思うと気持ち悪い。


気持ち悪さと格闘しながら横断歩道を渡ろうとすればいきなり光に照らされた。


ブーッ!!ブーッ!!

頭に響くからやめてくれと呑気に考えていると身体に浮遊感と激痛が走った。

と同時に意識も遠のいた。


目の前が真っ赤だった。

赤以外何も見えなかった。



ジリリッジリリッ


その音で目が覚めた。

ガバッと勢いよく起きると頭に鈍痛が走る。

アラームを止めると時計は4時を指していた。

外を見ればオレンジ色の空が広がっていた。

鈍く痛みが走る頭でも夕方とすぐに察しがつく。


おかしい、俺は確か夕方5時には寝ていたはずだ。

混乱と痛みと不安が頭を満たす。

近所の公園で遊ぶ子どもの声は聞こえなかった。

セミの鳴き声も聞こえなかった。

おかしい、何かがおかしい。



しばらくして上から



ドンッ

「キャーーーーーーーー!!!」

ドンッドンッ


俺にとっての鈍器が降り注いだ。

考えてもわからない俺はまたアラームを2時間後に設定して眠りについた。


今度いたのは横断歩道だった。


何でまたこんなとこに。


さっきの夢を思い出す。

光に照らされてブーッブーッと鳴らされる、突然の浮遊感と激痛、真っ赤に染る視界。


俺は夢の中で轢かれたのか。

誰でも考えつくことをなんで分からなかったんだ。

でも夢の中だしわからないだろ。

自問自答していると後ろから声が聞こえた


「だーるまさんが信号渡った」


え?


子どもの声だった。


俺の足が自然と動く。


やめてくれ

なんで歩いてんだよ


「だーるまさんがとーんーだ」


ブーッ!!ブーッ!!

光に照らされて浮遊感と激痛が走った。


「だーるまさんはあかくなる」


視界が真っ赤に染る。

また意識が遠のく。

また子どもが


「だるまさん交代だね」


そう言われるとまたアラームが聞こえる。


またガバッと勢いよく起きると頭に鈍痛が走る。

アラームを止めて時間を見た。


「また4時…」

外の空はオレンジ色だった。

また夕方4時だった。


近所の公園で遊ぶ子どもの声とセミの鳴き声が頭の中であっちいったり、こっちいったりと殴りながら響き渡る。

あの子どもはなんなんだ、だるまさん交代ってなんだ

さっきの子どもの言うことが気になっていた。

いくら考えてもわからない。

すると違う鈍器で上から殴られた。


ドンッドンッ

「キャーーーーーーーー!!!」

ドンッ


上の階の住人だった。

この気持ち悪い感覚から逃れたい。

でも頭が痛い。

でも気持ち悪い。

気持ち悪い。ただただ気持ち悪い。吐くこともできない気持ち悪さ。言葉にすらできない気持ち悪さ。

気持ち悪い、気持ち悪い。


「そうだ、だるまさんがころんだやろ」


思ってもないことを口にし始める。


誰だお前

何がしたい


そう問いかける


「だーるまさんがねーむった」


俺は自然と動く

アラームを2時間後に設定して眠りについた。


また横断歩道にいた。

でも今度は目の前に俺がいる。

俺はこっちを振り返っている。


「だーるまさんが信号渡った」

「だーるまさんがとーんーだ」

「だーるまさんがあかくなる」


俺の口からそう放たれる。

目の前の俺は信号を渡って、飛んで、赤くなった。

またアラームが聞こえる。

目は覚める。

夕方4時。

外の空はオレンジ色。

頭は痛い。

気持ちは悪い。


また上から鈍器が降り注ぐ。

近所の公園で遊ぶ子どもの声も

うるさいセミの鳴き声も

鈍器が殴りかかってくる。


少し安心している自分がいた。






ふと振り返ると真っ赤に染る俺がいた。







「だるまさん交代だね」
















気持ち悪いなぁ。


最後までお読み頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] なにもない [気になる点] 何処から突っ込めば良いのかわからなくなる [一言] 意味不明すぎ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ