第94話 再会⑦
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2021.8.6一部手直し実施しました。
流れに変化はありません。
朝食後のイチの執務室に集まった一同の前で、
「はい、これ。私とスザの最高傑作よ」
「・・・ありがとうございます」
銀色の全身鎧と幅広の剣がナギに手渡された。胸の緑の魔石にナギが触ると一瞬で鎧が体を包む。その光が晴れると、ナギは銀色の鎧を全身に身に着けていた。
「そそるぅ!蒸着!いや赤射!いや焼結!いや変身!いや・・・」
なんかナギの鎧を見て1人でブツブツ言ってますよ
「ありがとうございます、イチ様。この鎧、全然重さを感じません!」
ナギは体を動かしているが、何も着ていないかのようだ。可動域も生身と変わらず、鎧は動きに合わせて変形していた。
「重さだけではなく、強度もあるわよ。ワイバーンくらいなら噛みつかれても歯の方が折れるわ」
そしてイチはナギを呼び、スザたちに背を向けてゴニョゴニョと小さな声で話していた。ナギは小さくうんうんと頷いている。まあ、放っておくことにしよう。
「あ、スザも装備を改造したかったら、また大きな魔石を取ってくればいいわ。そして・・・ね」
イチは皆の前でスザにウィンクした。スザの前に女性陣がぞろぞろと集まり、イチへの壁となった。
「あら・・・スザは人気者ね」
イチは笑いながら、またナギに何やら教えていた。
イチは、スザ、クシナ、ナギを連れ、橋を渡って島の村の役場を訪れた。今後どうするかを決定するためだ。その会議には島の村村長セン、砂浜の村村長キク、イチ、島の村軍司令タカ、スザ、クシナ、ナギが出席していた。両村長とも老人の男性であり、戦場に立つことはできない。軍司令タカは30代後半の油の乗り切った色黒の男性で、昨日の戦場では常にイチの側から離れなかった人だ。
スザら3人はイチの協力者として両村長キク、センに紹介された。
「今回の砂浜の村奪還作戦は失敗しました」
イチは何も隠し事をせずにすべてを話した。
砂浜の村はコボルトとコヨーテの群れに支配されており、ワイバーンが3体もいて今の武装では奪還は困難だったこと、スザたちのおかげでワイバーン1体を葬れたこと、まだ多くのコボルトとコヨーテが砂浜の村にいることなどだ。
「我々の砂浜の村は・・・」
心配そうに表情を曇らせる砂浜の村村長キクは、それ以上の言葉を飲み込んだ。
イチはその目を見て頷く。
「大丈夫。必ず奪還します」
「イチ様。でも先ほど我々の武装では難しいとおっしゃられましたが・・・」
この島の村村長センは、イチの矛盾点を指摘する。
「我々、イの国部隊が奪還します」
イチの横に座っていた黒髪の大きな目が特徴の可愛い少年が胸を張って主張した。
イチはスザの黒髪の上に手を乗せ、ポンポンと優しく叩く。
「この少年が、イの国国王のスザ。別名イの国の英雄。信じられないでしょうが、ワイバーンを瞬時に倒した手練れです」
「もうすぐ16歳になるので、少年ではありません」
スザはイチの言葉を訂正し、イの国から南下して二つ川の村、きつねの村を解放、イの国に組み入れて更に南下したところで、イチたちの奪還作戦に遭遇したと説明した。もちろん、両村長は戦いを見ていないので懐疑的な表情だが、イチの手前文句は言えない。
「口で言っても信じられないでしょうが、私が保証します。彼らは私の数倍強いことを」
両村長キク、セン、軍司令タカもその言葉に驚きの表情だ。
「私も彼らの働きを遠くで見ましたから我々よりはるかに強いことはわかりますが・・・イチ様の数倍も強いのですか?」
イチはタカの言葉に大きく頷き、
「私が追い詰められていたワイバーンを一瞬で倒したのです。もしかしたら数十倍かもしれません」
3人が目を大きくして、イチの横に座る黒髪の、青年に成りきる手前の少年を見ていた。




