第93話 再会⑥
2021.8.6一部手直し実施しました。
流れに変化はありません。
マスター部屋の横にいつの間にか部屋が作られていた。気を利かしてくれて男女別々。
「スザ。少し話をしたいのですが」
ナギは未だに敬語のままだ。真剣な声色にスザは、ナギの正面に座る。
「どうしたのですか?」
「・・・俺は、足を引っ張っていないでしょうか?」
「えっ!?」
ナギは首を振る。
「いや、違う。俺はお前たちの足を引っ張っている」
口を挟もうとしたスザを、手を前に出し押しとどめた。
「これは俺が体感していることだ。でも、俺はお前たちを守りたい。スザ、クシナ、ミナミを守りたい。増えた仲間を守りたい。でも、それには力が足りない」
ナギの心からの叫びをスザは黙って聞いている。
「イチ様が作られた魔法を吹き出す長筒を見た。彼らが魔法銃と呼んでいたものだ」
剣も弓も使えない住民が自らの身を守るためにイチが作ったと言っていた。魔法の素養がなくても魔石に応じた力を体内にある魔力を使って出せる。体内魔力が少ないと連続で力を出せないため、人が代わることによって絶え間なく魔法銃からの攻撃を継続させていた。
「あれを俺専用に作ってもらったら、お前たちを守れるんじゃないかと思ったんだ。だから」
真っすぐスザの目を見つめて、ゆっくりと頭を下げた。
「ワイバーンの魔石を俺のために使わせてください」
ガチャッと扉が開いた。
イチは机の書類から顔を上げた。
「何か用があるのかしら?」
スザとナギがゆっくりと入ってきた。そしてイチの前に立ち、2人で頭を下げる。
「イチ様。ワイバーンの魔石でナギのために武器を作って欲しいのです!」
「・・・話を聞かせてもらってもよろしいですか?」
ナギは先ほどスザにした話をイチにもした。そして緑の巨大な魔石を2個机の上に置く。
イチはナギの装備をチラと見て、
「その剣と鎧は母イズからもらったの?」
ナギは頷いた。
「あの人、センスないから・・・古いわねぇ。何百年も前に作った良い品を渡しているのだけれどね」
ナギとスザの顔を見て、小さくイチは笑う。
「いいわよ。作ってあげるわ。その代わりにこの戦いに手を貸してくれないかしら」
スザは笑顔で、
「もちろん!初めからそのつもりです」
イチはナギから自身の戦い方を聞き、さらにスザから仲間の戦い方も聞いた。
「今、頭の中でナギの戦う姿と新たな武装を想像できたわ。明日の朝を楽しみにして待ってなさい」
「ありがとうございます!」
ナギとスザは揃って頭を下げ、では・・・と退出する。
「あ、スザ。ちょっとこっちへいらっしゃい。ナギは部屋へ戻っていいわ」
イチは右手をスザに向かってこっちに来いと振る。
ナギの後ろで扉が閉まった瞬間、ガチャッと大きな音が鳴った。たぶん扉に鍵がかかった音だ。ナギは一瞬天を仰いだが、すぐさま自分の部屋へと戻って行った。
次の日の朝、スザがげっそりしていたのは言うまでもない。




