第84話 新しい絆⑧
2021.8.5一部手直し実施しました。
流れに変化はありません。
昼食後、外に出て今から作業を再開しようとしていたナギ、クシナ、ミナミ、マリカの前に、スザはセイラたち4人を連れてきた。
「動けるようになってよかったですぅ♡」
喜ぶミナミの声が痛い。
セイラ、ユリ、アヤメ、レイは小さく礼をした後、皆に背を向け跪いた。
「何?どうしたの?」
異変を察知して、クシナが声をかける。
「この娘たちは死を望んだ」
スザの発せられた言葉を聞いて走り寄ろうとした4人は、足が泥沼にはまっていることに気付いた。
「スザ!ちょっと・・」
「黙れ!」
スザの殺気にナギ、クシナ、ミナミ、マリカが口も開けず、動けなくなる。それは跪いていた4人もだ。クシナは、セイラたち4人がガタガタ震えているのがわかった。
「もう一度言う。この娘たちは死を望んだ!コボルトたちの精を受け、体が半分魔人と化したからだ。体はもう元には戻らない。子を産んでもコボルトのような魔物になってしまう。この娘たちは、もしかしたら魔物になってしまうかもしれない!そして、この世界に居場所がないというんだ。殺して欲しいというんだ!」
スザは剣を抜いた。そしてバチッバチッ!と剣に雷を纏わせる。
「訳の分からない人間になぶり殺しにされるくらいなら、俺に殺して欲しいと言うんだ!」
突然、セイラ、ユリ、アヤメ、レイの体が土魔法で、首を前に出した形で拘束された。
セイラたち4人の目に、スザの足が現れた。中央で足を止める。目に映る剣が音を立て、激しく点減を繰り返していた。
「だから俺はこの娘たちの思いを汲もう!セイラ!ユリ!アヤメ!レイ!君たちを痛みもなく殺すと誓おう!」
スザは剣を天に掲げた。
「だ・・ダメぇえ!」
「黙れと言った!」
クシナはスザの殺気に押しつぶされそうになったが、再び、
「ダメぇえ!ダメ!だめぇ!」
「ダメですぅ♡!」
「ダメだ!」
スザは動きを止めている。
「だめぇ!半分魔人とかどうでもいい!将来どうなるかなんて誰にもわからない!なのになぜ死のうとするの!だめぇ!私が居場所を作る!私が味方になる!私が守る!私が絶対にこの娘たちを幸せにしてみせる!だからだめぇ!」
「ミナミもするぅ♡!」
「俺も味方だ!」
「みんなで守る!だから殺すなんてやめて!」
みんなの心からの叫びに、セイラ、ユリ、アヤメ、レイの4人はむせび泣いていた。
「まだ死にたい?」
スザの優しい声がかけられた。
セイラたちは首を横に振る。
剣は納められ、セイラたちの拘束は解かれた。そのまま地面に突っ伏して、4人は泣き続けた。
足元が回復したクシナたちはセイラたちに走り寄り、抱いて一緒に泣いていた。ナギは一芝居うったスザの隣に来て、それを見つめている。
セイラたちが落ち着いた時、それは突然やってきた。
「歯を食いしばれ!」
そう叫ぶクシナの声は覚えていた。




