表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/163

第80話 新しい絆④

2021.8.5一部手直し実施しました。

流れに変化はありません。

クシナは、マリカの家に入っていたスザが突然吹き飛ばされ、そのままでかい魔物と対峙しているのを見た。

コヨーテたちを引き付けておくのも、もういいだろうとクシナは決心した。下手に殲滅しようとすると逃げ出し、スザの行動の支障となる可能性があったので、手加減していたのだ。


「殲滅に入ります。ナギさんは先にスザを助けに行ってください!」


ナギは頷き、土壁天井部から飛び降りて斜面を下って行く。

クシナは、魔物の後ろ側にランスを大量に落とした。コヨーテもコボルトもさらに斜面に作られた壁に殺到してくる。後ろから押されて横に広がろうと動き始めた時、炎の壁が両側に立ち上がった。ナギは炎の壁を右手に見ながら弧を描いて、走り出す。


「まるで嘘みたい」


マリカは眼下に広がる光景を見ながら呟いていた。

自分が立っている壁の前方に先ほどから炎の壁が立ちあがっていた。前と左右の炎の壁の近くにいるコヨーテたちは熱さから逃げるために後方へ下がろうとするが、ランスの爆撃に追われ、逃げるコボルトたちが山の斜面に向かって押し寄せる。


追い詰められたコヨーテとコボルトたちは生きるために同士討ちを始めていた。押されて焼かれ、コボルトに切り殺されるコヨーテとランスにより爆散・焼かれ、コヨーテに噛みつかれて倒れるコボルト。その中に何か塊が落下してきた。


「フレイムバースト!」


クシナの新たな魔法が突き出された右手の延長線上に現れる。同士討ちを続けるコヨーテとコボルトの真ん中に巨大な炎の塊が膨れ上がり、

ドォヴァアァン

と巨大な音と共に爆発した。

腕で顔を隠し、目を瞑って爆風を耐えたマリカは、ゆっくりと目を開け、腕の隙間からどうなったかを見る。


「えっ!?」


驚き、腕を下ろしてまじまじと見つめるマリカの目には、焼け焦げた土と爆風にえぐられた大地だけが映っていた。


「・・・あれだけいた魔物が・・・」


放心状態のマリカの肩を揺すったミナミは、


「追いかけますぅ♡」


壁を下りて行くクシナを指差し、マリカの手を引いてクシナの後を追うように階段を下りて行った。



スザは怒っていた。冷静を設定しているはずだが、その鎮静効果すら上回る怒りをハイコボルトはもたらしたのだ。


「女性たちを、自分たちが繁殖するためだけの道具にするとは!さらに隙を生み出すためだけに殺し、投げつけた!」


ハイコボルトはスザの言葉を遮るように、突進し右手で振りかぶった剣を袈裟懸けに振る。動かないスザを切った。


「ゲハハ・・ハ?」


はずが、剣は空振りし、地面に突き刺さっていた。

ドンッ!

と右脇腹に衝撃を受け、ハイコボルトは3m以上吹き飛び、ゴロゴロと転がり止まる。右脇腹を押さえながら、ハイコボルトは立ち上がった。その手の間から血が流れ出ている。よく見るとあばら骨が突き出ていた。


スザの一蹴りは剛毛でできた鎧を破壊し、肋骨を折ったのだ。剣を左手に持ち替え、前かがみながらハイコボルトは剣先をスザに向ける。


「お前らは女性に薬を盛って狂わせ、快楽に溺れさせ、魔物を産ませた!」


スザの怒気に、ハイコボルトは後退りする。自然と足が引いていくのだ。その背後でコヨーテとコボルトがクシナの魔法に焼かれながら同士討ちしているのが見えた。


「死んで詫びろ!」


ハイコボルトの目には、スザが突然何人も目の前に現れたように見えていた。稲妻が4本走る。それは両肘と両膝の関節部分に突き刺さり、そして通り過ぎた。ハイコボルトは突然尻もちをつき、空を見上げていた。本能が体を起こそうと手足を動かすが、目線が少し上がってはコクッと下がるだけ。


「アッ!ギャアアァ!」


ハイコボルトは気づき、叫び声を上げていた。両腕と両足がなかったのだ。

アガッ!

顎を蹴られ、奇妙な声を上げたハイコボルトは、そのまま振り抜いたスザの足で頭部を破壊され、さらに勢いで吹き飛んでいく。コヨーテとコボルトが同士討ちする中に落下し、クシナの魔法で蒸発した。


爆風がスザの黒マントをバサバサとそよがせるが、スザにはなんの影響もなかった。いや、クシナの魔法のおかげで、少しだけスッキリした表情を見せているようだ。

爆発音がオンオン・・・と山の間に木霊していた。


「大丈夫ですか!?」


走り寄ったナギは、立ち尽くすスザに声をかけた。


「ええ、ちょっと頭に来ましたが大丈夫です」


スザは頷きながら苦い笑顔を見せた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ