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第77話 新しい絆①

スザたち5人は、マリカの案内できつねの村を目指す。

二つ川の村の大きな川の上流に目指す村はあるらしい。川は山脈から流れてきており、東に向かって進んで川をさかのぼっていく。道は整備されてはいないが、村同士で人が移動していたことで踏み固められ、移動するのに支障があるほどではない。


ゴーレム馬に乗り、川の流れに沿って山と山の間を道なりにくねくねと進んでいく。馬上のクシナとミナミはムッとした表情のままだ。2人からは、同じゴーレム馬に、マリカを抱きかかえるように座るスザの姿が目にはいるからだ。


5人の移動で4頭しかゴーレム馬がないので、頭ではそうしなくちゃいけないのはわかるが、それを許せるかと言えば、許せます・・・とは言えないのが女心なのだろう。

村長のマスオから必ず守ってほしいと言われれば、スザがマリカと移動するしかないのはわかるのだが。


「来る!」


スザの叫び声に、クシナとミナミは現実に引き戻された。魔物がこちらに移動してきているのだ。それは馬上からもはっきりと見えた。


「昨日よりも多いな・・・100匹くらいコヨーテがいるな。その後ろには50匹くらいのコボルトか」


スザの呟きにマリカは小さく震えた。それを感じたスザは、落ちないように押さえていたマリカのお腹を抱き寄せるように、少しだけ力を入れて、


「大丈夫!見ていて」


スザは、振り返り、見上げたマリカに笑顔を見せながら馬を下りた。


「速度を上げたわ!こっちに気付いたみたい!」


クシナの注意を呼び掛ける声に、スザはコヨーテたちの動きを見ながら、片手を上げて了解の返事を返した。

コヨーテたち100匹はクシナが言ったように速度を上げ、後続のコボルトたちを引き離しながら、道なりにスザたちに向かってきている。今のところは、川に飛び込むということはないようだ。


どんどんコヨーテが進んできて、距離50mを切った時、コヨーテの進路の両側に土壁が立ち上がった。それは進行方向に対して斜め45°、5m間隔、片側3枚ずつで中央に集めるような形だ。


コヨーテたちは勢いを止められず、土壁に沿って中央にギュッと押し付けられるように集まるしかなかった。体同士がぶつかり合い、それで速度が落ちる。中央に開けられた幅2m程度の出口に向かってコヨーテたちが殺到する。その前に、赤い人間が立ちふさがった。噛みつこうと大きな口を開け、勢いのまま突っ込む。


「ハアァッ!」


クシナの気合と共に突き出された両腕から炎の刃が真っすぐに伸びる。コヨーテたちが切り裂かれ、燃え上がった。叫び声すら発することができずに。


「ランス!」


3枚ずつ、6枚の土壁から槍がドンッと突き出た。土壁の前にいたコヨーテたちは串刺しで宙に浮かぶ。土壁が消え去った時、生き残っていたコヨーテは10匹もいなかった。怯えて動けないコヨーテは、血を吹き散らしてバラバラになった。


「すごい」


マリカの呟きがスザに聞こえた。


昨日、スザたちは戦い方について話し合いをしていた。そして、マリカが見ている間は魔法を中心にした戦いをすることにしたのだ。マリカに魔法使いの適性があるなら、なるべく早く目覚めてほしいと思うし、魔法を見せた方がいいだろうと決したのだ。


血煙が収まった場所には、立ち止まったコボルトたちがいた。

マリカは目の前にいたスザが一瞬で消えたように見えた。


「サンダー!」


スザは、コボルトたちの前で魔法を唱えていた。同時に、天空から稲光が落下し、ドガギャッ!と轟音を響かせる。何本もの稲妻が落下し、地面の揺れが収まった時、黒焦げになったコボルトだったものの前に立ち、黒いマントを風にたなびかせるスザの後ろ姿がマリカの目に入った。

クシナは振り返り、馬上で動かず、スザをじっと見つめるマリカを見て、ため息をついた。


「また、恋敵が増えてしまった・・・」


その呟きは小さすぎで、誰にも聞こえなかった。

スザは土魔法を使い、コヨーテとコボルトだったものを山に埋めた。土魔法で倒したコヨーテも炎でほとんどが焼けてしまったからだ。ナギに一言、


「次は人数分の食料が取れるくらいは残してください」


と言われてしまい、クシナ、ミナミと共に謝ることになった。

戦った場所から離れ、昼食を取り、再びきつねの村を目指して進む。少しして、南の支流と東の本流に分かれる分岐点に来た。南側にきつねの村があるため、ここを南の支流に沿って進むことになる。マリカに聞くと、残りの道は半分より少し少ないという。


「このまま進むと夕方前に村に着き、戦いが夜になるかもしれない」


スザはそう言って、マリカにこの地で今日はとどまり、朝から村に出発することを提案した。マリカは素直に了承してくれた。

川際から少し離れ、分岐点が見通せる高さの山側に土魔法で小屋を建てた。ナギとミナミで野生動物を狩り、スザは川で魚を取って、夕食とした。あの軍勢以降、コヨーテたちは現れなかった。

緊張が続いていたのだろう。マリカは皆が見守る中、眠りに落ちていた。火を囲い4人は話をする。


「もう、配下になってるはず」


クシナがうんうんと頷きながら言うので、スザは胸からブックを出し、確認した。

クシナの予想通り、配下に名前が出ていました。


配下20:マリカ(魔法使い) 補正:6(魔力)×2 信頼心酔度:2/10


やっぱりと言いながら、クシナはミナミと2人で眠るマリカを見て、ため息をついた。


「ですぅ♡」


ミナミが何に納得したのかわかりません。

でも、さすがにイズがわかったように、魔力が6とはすばらしい。何もしていないのに60代の数値ということです。いい才能をお持ちでうらやましいです。


そう言えば、今は職業を死神(暗殺者)に戻しています。さっき一度胸の奥が暖かくなったので、等級が1上がったと思いますが、今日は見るのをやめときます。

マリカをパーティー設定して、経験値が入るようにしました。この一連の戦いで何か魔法を使えるようになればいいなとは思いますが、高望みをしてはいけません。

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