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第67話 戦場はイの国⑧

2021.8.5一部手直し実施しました。

流れに変化はありません。

昼食を取った後、スザ、クシナ、ナギ、ミナミ、マイの5人は北門から北の湖の町に向けて出発した。


「なんか、すごい楽な気がする」


マイが楽しそうに10mの道を作りながらしゃべっていた。実際、この20日以上で魔法を使ってきたことで、腕前というか魔力というか、魔法への理解というか・・・が上がって、平坦な道を作るのにスザの手直しは不要になっていた。


特に東の村への道を整備したことが、マイの土魔法の能力を1段も2段も引き上げたのだろう。厳しいことをやれば、その努力と実績は必ず自分のものになる。これだけ細かい制御ができるのであれば、建物建築もできるだろう。北の湖の町では、小さいものから始めてみようとスザはマイを見ながら思う。スザは、マイの土魔法を見ながら、自分が旅に出ても守りに関してはマイ一人で十分だろうと確信した。


北の湖の町には、塔の街を出てから4日目の夕方に着いた。

タケルがいる町長役場を訪ねると、ブンブンと握った手を振りながら喜んでくれた。


「こっちも軍に残るもの、町に残るもの、町を出て新たな土地を開拓するものを分けることができました。あとはいつ出発するかです」


兵士は46名。町に残って漁業や商業をする者約50名、残りの約100名が新天地を目指すとのことだ。夫婦や子供連れもいるので、実際に新天地に行く総人数は、160名弱となった。


「明日、行政府兼国王府を建てるけど、場所を教えてほしいのと、他に何か建てたいものがあれば一緒にするけど、どう?」

「まず、行政府は港の近くでお願いするのと、魚市場の倉庫というか魚集積所というか、それが老朽化しているので、できれば海風でも大丈夫なものにしてもらえないかなと・・・」


タケルは、少し申し訳なさそうにスザを見る。


「了解です。まだ日が落ちるには時間があるから、その場所に案内してもらえます?」


タケルは喜んで、スザたちを港に案内した。

湖に面したところに石を積み、船が接岸できるようにしていた。50mくらいはあるだろう。その高さのまま、魚を運んで集積所に持ち込むようになっている。屋根も壁も木でできているので、少し朽ちている。


「ついでだから、この船着き場からすべて明日補強しよう。で、この集積所も立て直すよ」


スザの言葉にマイも頷く。

そのまま近くの空き地に行った。十分な広さがある。


「こんないい場所でいいの?」

「実際、人がたくさん通るから、住宅向きじゃなくて役場向きの場所なんです」


夕方近くになり、湖から風が吹いてくる。


「風が強いですね。何か問題はないのですか?」


クシナはタケルに視線を送る。


「雨が多いと、増水して湖に近い道が水であふれる時が時々ありますね。そんな頻繁じゃないですが」


今日はタケルの家で夕食をごちそうになり、そのまま泊まることになった。

夕食の後、明日以降やることを、タケルを入れて話をした。


港の補強及び集積所の屋根壁取替、道と湖の間に防波堤の建設、ゴーレム馬が通る、湖の町内部の道の整備、空地への集合住居建設、行政府兼国王府の建設をこの順番で進めることにした。作っていって他にあれば、タケルから追加依頼するということで、話は決まった。


朝、漁から戻ってくる漁師たちは、船の上で、集積所の前に立つ白と黒のマントの男女を見つけた。その2人が手を上げ下げするだけで、港の船着き場の色が変わっていく。石を積み上げて作った船着き場が綺麗な灰色に変わったのだ。


更に近づくと、突然集積所の屋根と壁が吹き飛び、上空に舞い上がって集まり、火の塊になった。驚く間に、炎が小さくなり、黒い塊になって黒マントの少年の手元に落ちた。赤いマントと緑のローブの少女たちがぴょんぴょん飛び跳ねている。

船が着くころ、集積所の屋根と壁が綺麗に輝く灰色になっていた。


「タケルさん!集積所も船着き場も補強魔法がかかっているから、少々じゃ壊れないと思うわ。もし何かあれば連絡して。私が直すから」

「おお!ありがとうマイさん!」


白いマントの少女はそう言って、船着き場を下りていく。その可憐な姿を目で追っていくと、突如、灰色の輝く壁が目の前から物凄い勢いで南側に向かって立ち上がっていく。高さ1m程度の壁が何百mにも渡って出来上がっていた。


黒マントの少年が白マントの少女に何やら話しかけ、白マントの少女が集積所を挟んで反対側に走っていくと、同じ壁が同じ高さで北側に向かって立ち上がっていった。


集積所でタケルが驚き、飛び跳ねている。その横で銀色の髪をした鎧の男はうんうんと頷くだけだ。

漁師たちが船をロープで固定し、タケルの元に行こうとしていると、マントとローブの少年少女がタケルの元に集合した。

タケルは黒いマントの少年の手を取って何度も礼をしている。


「ありがとうございます、スザさん!マイさんも、クシナさん、ミナミさんもありがとうございます!」

「タケル様、この方たちは?まるで魔法使いみたいに、こうバッと建てたような・・・」


漁師たちの先頭に立って、色黒の身の引き締まったおじさまが不思議そうな表情で立っている。


「ああ、カイさん!この黒髪、黒マントの方がイの国国王のスザ様、赤髪の方が赤髪の英雄クシナ様、白マントの方がマイさん、緑ローブの方がミナミさん、銀髪の方がナギさん。皆さん、約束通りにこの町を豊かにしようと来てくださって色々問題があるところとかを直したりしてもらっているのですよ」


漁師たちはカイを筆頭に、全員ん?という表情だ。

いやいや、いいですよ・・・と小さい声でスザはタケルに言っている。気になされず・・・って言った途端、クシナがスザに詰め寄った。あんた!国王なのよ!クシ姉、他の人の前でそれもまずいんじゃない?と小声でガチャガチャやっていたが、


「ああ、皆さん、気にせず。せっかく取ってきた魚を新たな集積所に運びましょう」


タケルの声に、そうだな・・と言いながら、カイたち漁師は船に戻って、魚を運び始めた。


「・・・私たちも決めたことをしましょう」


冷静になったクシナは、スザとマイを集積所の外へと引っ張っていった。スザとマイは可能な限り道幅を広げて、集積所の前から町の入り口まで道を整備した。ほぼ6mの幅は取れたので、馬車専用とすれば問題ないだろう。


午後からは、湖から少し離れた山側の空地に3階建ての集合住居を立てる。マイもスザに説明をされながら手伝い、最後には3階建ての住居も立てられるようになっていた。


翌日は港の空き地に移動して、4階建ての行政府兼国王府を建設する。カナヤマのものと同様に、1階は受付、相談所、会議室、2階に町長タケルの執務室とタケルを補佐する人々の事務所を作った。執務室には後ほどイズがイの塔の街やカナヤマの町にも繋がる画面を設置する。3階は国王府にした。執務室、会議室を作り、4階はスザたちの居住室を設けた。夕方前には画面の設置も終わり、イズと試験会話を行った。


「明日、湖の対岸側に移動して、午後から港と住居を作っていくつもり」

『行政府は作る?』

「・・・4階建ての建物を行政府として作ろうと思う」

『わかった。一応、東側に魔物除けの柵は作っておきなさいよ』

「了解です」

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