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第62話 戦場はイの国③

2021.8.5一部手直し実施しました。

流れに変化はありません。

翌日の朝、皆が各地に帰る前にもう一度塔の映像室に集まってもらった。もちろん、領主を任命するため。その理由をイズから説明されると、誰も拒否できない。もちろん、初めから拒否する奴などいないのだが。


美少女イズの映像の横にスザは立ち、任命式を行う。前髪はまた元通り、目を隠したままだ。イズもクシナも諦めたようで、なんかをきっかけに自ら前髪を上げるまで待つしかないと思っているようだ。


「領主サユリ殿、今まで通り、カナヤマの町をお願いします」

「領主タケル殿、タキ様との約束を果たすため、北の湖の町を今まで以上にお願いします」

「領主ノブ殿、クシナに代わり、この街をお願いします」


スザの依頼に、全員が頭を下げ了承した。

タケル、サユリは帰っていった。タケルは今から軍の解体と再構築という大きな仕事がある。兵たちの希望を聞いて、調整を取るので30日くらいはかかるだろう。


「じゃあ、俺も行くね!」


イズから新たに槍と剣をもらったユウは4人連れて、東の村に向かった。修行込みの肉を取るためだ。


「じゃあノブ兄、マイを借りるよ」


ノブは頷き、マイはノブにじゃあねと手を振りながら、スザの元に来た。


「今から過酷な日々が始まるのね・・・」


少しだけ、マイの表情が暗い。道を整備し、各所で倒壊した住民の建物を作り、且つ行政府兼国王府となる建物を作るのだ。暗くなるはずです。


「お姉ちゃん、暗い♡楽しく行こう♡!」

「・・・そうね、私たちのがんばりで、皆が楽になるんだもの!」

「その調子♡!」


マイは左手を前に持ってきて、よしっと拳を握った。右手には土色の魔石が付いた黒い杖を持ち、背には白のマントがふわりと風にそよいでいる。約束通りイズから新たにもらったものだ。土魔法に高い補正がかかる魔石がついた杖に、魔力や体力を上げる魔法のマントだ。得意を伸ばし弱点を補う、イズからの愛のこもった贈り物である。


スザ、ナギ、クシナ、ミナミにマイが加わった5人で、まずはイの塔の街からカナヤマの町までの徒歩1日の距離の道を整備する。スザとマイが土魔法で道を作り、他の3人が2人を守るため、警戒に当たる予定だ。



サユリ、ノブ、タケルと話し合った結果、道幅は10m程度となった。馬車が行き来できて、人も両側に通行できる道幅だ。もちろん余裕を見ている。道は中央が一番高く、両側に向かって低くなるような傾斜を付けることにした。雨が降っても水溜りができにくくなるようにだ。


土で整備すると馬車の車輪で轍ができ、水溜りだったり、穴ぼこができたりして車輪がはまり込む可能性が高くなる。それを年がら年中補修するのは御免被りたい。


一回道を削って、傾斜のついた高さにし、その上に同じ大きさの直方体の石塊を作り出して、端から置いていく。中央は先端を丸めた矢じり型の石塊を作り出して隙間に置いてみよう。

スザは、構造把握を能力に設定して、職業を死神から建築師に変えている。もちろん魔法使いはそのままだ。

4人が見ている前で、スザは目をつむり、集中した。頭の中に道の構造を描く。よしっ!


「みちぃ!」


クシナが一瞬カクッとなったように見えたのは気のせいだろう。


南門を出た広場の先で、幅約10m、長さ約30mに渡って、一気に土煙が上がり、土が削り取られた。森の木など、邪魔なものは先に抜いている。舞い上がった土が、その場で石塊に変化し、両側から中央に向かって落ちていく。それが道の先に向かって続いていくのだ。


「すごいですぅ♡!」


ミナミが飛び上がりながら拍手している。


魔力の減りも少ない。マイと二人で合わせたら、予定の7日より短くすむかも・・・


「・・・ムリデス・・・」


マイは、ペタンとその場にくずおれ、泣きそうな顔でクシナを見上げている。


「スザァ!もう少し、わかりやすくやりなさいよ!」


赤髪の美女がものすごい剣幕でわめき、指を突きつけてきた。目もつりあがっている。

2人の間に飛び込んできた影が一つ。


「ダメですぅ♡!」


口調は優しいが、両手を広げ、その可愛い顔と体で背にスザを庇う姿は、クシナが悪者にしか見えない・・・って、悪者なのだが。


「・・・」


クシナは口がパクパクするだけで、それ以上は何も言えない。


「スザ様は、悪くないですぅ♡!もちろん、お姉ちゃんも悪くないですぅ♡!今の中でできることを分担してやればいいですぅ♡!」

「さすが、ミナミちゃん!」


ナギさんが拍手しています。なんか、銀髪の貴公子って感じが変わってませんか?


スザは頭をかきかきして、


「ごめん、勢いでつい・・・。まず横10m、長さ1m分道の土を削る。次にその土で石塊を作る。最後に調整する、という感じでやるので、見ていて。その後、一緒にやってみようよ」


スザの言葉にマイは、こっくりと大きく頷いた。


道を作る工程を分割して確認し、その後実践することでマイは理解できたようだ。地盤に正確に傾斜をつけるところにまだ若干甘さが残り、石塊が少し不均一だが、それはスザが手直しできる範囲なので問題ない。


マイに20mほど先から道を先行して作ってもらい、スザが後を追いかける形で道を作ることにした。これであれば、マイの作った道を追っかけて手直しできる。この距離であれば、何かあっても護衛できる範囲だ。


昼ご飯の休憩を取った。1kmちょっと進んだくらい。朝遅くの開始だったから、想定ぐらいの進み具合だと、スザは食事を取りながら、話していた。


「ごめんなさい。私、だいぶキツイ。魔力が1/3くらいしか残ってないと思う」

「お昼からは休み休みやっていけばいいよ」


マイの謝罪にスザは笑顔で小さく首を横に振りながら、


「それにだいぶ慣れた感じだから、修正も少なくなってるし、魔力の消費も少なくなると思うよ」

「やればやるほど上手くできるようになるから、お姉ちゃんがんばれ♡!」

「ミナミ、マイにそんな圧をかけないで。マイはやれる範囲でやっていけばいいよ」


クシナの言葉にスザは頷く。


「カナヤマの町に着くまでまだ余裕もあるし、予定通りの速さだから、休み休みで大丈夫。やればやるほど上手くなるから、明日、明後日と続ければ、速度も上がるし、もっともっと魔力の消費も少なくなるよ」


昼からはスザが主に進め、マイは魔力残量を気にしながら手伝っていた感じだった。夕方、初日の終わりでは、道の7分の1強進んでいた。7日でカナヤマの町に着こうと考えていたので、少し予定より前倒しで進んでいる。


スザがいつものように土魔法で小屋を立て、水魔法で器に水を貯めこむ。食事は、途中で捕まえた動物を料理し、持ってきていた食料と一緒に食べた。マイは、4人が協力してテキパキと夜と食事の準備をするのを驚きながら見ていた。


「お姉ちゃんも、明日にはできるようになるよ♡」


ミナミの言葉に頷きながら、もちろん明日から手伝えるようがんばろうと心に誓っていた。

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