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第58話 イの国②

2021.8.4一部手直し実施しました。

流れに変化はありません。

『次にイの国の軍だが、中核は北の湖の軍となろう。はっきり言って、カナヤマと塔の街の成人男性の数は絶望的に少ない。この街など少年しかいない。まずはタケル殿の意見を聞きたい』


タケルはイズに頭を下げた後、


「今まではイの塔の街を仮想敵国としていたので、200から250人を準備していたのですが、魔物などの討伐を主と考えると、そこまでは不要かと。50人もいれば十分ではないないでしょうか」

『まあ、いざとなればスザとクシナ、タケルが500人くらいの働きは楽にするだろうしな』


タケルは頷き、


「現状の北の湖の軍は200人程度なので、150人近くを新たな村や港、塔の街、カナヤマ、東の村に分けられるでしょう」

『イの国の軍だが、国王の下にユウ、タケル、ナギの3人を置いて、基本ユウが見る形にしたい。タケルは湖の町、ナギはスザとクシナの護衛もある。ユウを教育・補佐する形でどうであろうか?』


タケルはユウを見て、


「ユウ殿はまだ若い。私の部下で優秀な者を選び、副官としましょう。もちろん私もユウ殿を教育・補佐させていただきます。一緒に湖の軍の中で若く、優秀な者を選出して、将来の幹部として育てましょう」


ナギも大きく頷き、


「若く、伸び代もある。いろいろな見方ができるかもしれませんが、建国した国だからこそ、若い力で国と共に成長すればよいかと思います」

『ナギも十分若い。そなたもまだまだ伸び代がある。そなたも教育することによって自分も伸びることができるであろう。よろしく頼む』


ナギは頭を下げ、了承した。


『そういえば、今回の戦いでカナヤマも塔も夫を亡くした人がたくさん増えたのではないか?』


ノブとサユリは大きく頷いた。


『本人たちの意思もあろうが、まだ結婚していない兵士たちにすべての事情を話して、結婚込みで各所に移住してもらうように言ってはもらえないだろうか?』


タケルは、ほうと頷き、


「いいですね。それらの情報も与えて、兵士をやめて移住しないかを聞いていきましょう」


クシナは手を挙げた。


「夫を亡くした人だけではなく、孤児も増えたと思われます。できればこの街に集め、今までやっていた教育をやって、各地に移住させていくことを考えてみたいのですが・・・」


サユリもタケルも頷いた。


『適性や本人の希望も合わせて、カナヤマの鍛冶職人や湖の漁師、狩人や兵士、農民を育てていければ、未来の明るい、いい国になれるだろう』


夫を亡くした人についてはサユリとクシナが、孤児についてはノブとマイ、クシナが話を進めることになった。


『次に国王だが、もう皆には話をしている通り、スザで問題ないか?』


全員が頷いた。


『ではスザ、言いたいことがあろう。言ってみよ』


スザは頷き、


「俺は、イズ様のおかげで望みを遥かに超える力を得ました。ただ、この街を、好きな人たちを救いたいと思っただけだったんだけど。それがこの街を、そして皆を救い出したら英雄と呼ばれるようになっていた。でも、俺は今も何も変わっていないと思っているんだ。好きな人たちを守りたい。その好きな人がイの塔の街だけじゃなく、カナヤマの町、東の村、北の湖の町にもいるというだけなんだって。皆が俺に、国王になれと望むなら俺は国王をやる。でも俺の胸の中にあるのは、その思いだけ。この国をよくするため、好きな人たちを守るためにがんばるから、みんな力をかして欲しい」

「もちろんですぅ♡」


ミナミの声に、全員頷いた。


「そして、イズ様やみんなに反対されようとも、俺は旅に出るつもりだ。東の村のハイオークや、タケルの父キョウを狂わせた、破滅の呪い。このまま放っておくと、必ず近い将来、この国に災いをもたらすと思う。で、ダンジョン核を持って逃げたドラゴニュート。あいつは俺たちが何の障害にもならないと思って、俺たちを相手にもせず、どこかへ行った。いずれあのドラゴニュートも破滅の呪いに染まって、ここに攻め寄せてくるかもしれない。だから旅に出て、呪いのダンジョン核がどこかで力を蓄えていないか調べたい。いや、必ずやる!」


イズは決意を新たにするスザを見て、


『・・・まあ、最後の議題で残っていたのが、スザの言ったダンジョン核だわ』


クシナは、全員の認識を合わせるため説明した。


ギンが死ぬ時に起こした呪い。

この街を滅ぼし、全員殺せという呪いが拡散し、ハイオークのいたダンジョン核の中に残っていたこと、タケルの父キョウが鎧の胸に着けていたのがダンジョン核で、その核により魔物化したこと、死ぬ間際までこの街を滅ぼし、全員殺せと言っていたことから考えて、その核にも破滅の呪いが残っていたと推測できることなどをだ。


「ギンが死んで、そんな日にちも経ってないのに、立て続けにこんなことが起こった。もしかして、俺たちの知らないところで、俺たちのせいで誰かが苦しみ続けているかもしれない。そして、いずれはここにやってくるかもしれない」

『スザの思いもわかるわ。でも、目の前にいるのは、見えるのは誰かしら?』


スザはイズの言葉にハッとして、周りを見た。クシナが、ナギが、ミナミが心配そうにスザを見ていた。いや、3人だけではなかった。全員が不安げに見えているのだ。


「ごめん。なんか俺・・・」

「戦いの日々が過ぎた途端、不安になったの?」


クシナの言葉に、スザは首を振る。


「違う・・・かな・・・すべてをしなくてはいけないんじゃないかと思ったんだ」

『そう思わせたのは、私ね。私が勝手に国王になれと言ったことが、自分の想像を超えて得た力とこんがらがって、すべてを背負ってしまいかけたのね・・・ごめんね、スザ』


ナギが突如バンッと立ち上がった。


「スザは、すべてを背負わなくてもいいんです!姉にもイズ様にも2人を守ると誓いました。私は、スザとクシナといたいと思いました。ミナミは、そう思うのは仲間だからだと言ってくれました」


ミナミは笑顔♡で頷く。


「私は!俺たちは仲間だ!スザ、俺にも背負わせろ!お前の苦しみを少しでも背負わせろ!」

「そうです!」


ナギの熱さにタケルもズバッと立ち上がった。


「仲間です!だからみんなで分かち合い、支え合えばいいのです!一人じゃないのです!」

「俺も!俺もスザを支えるよ!一緒に歩きたいよ!」


ユウは椅子を倒しながら立ち上がった。


「あついですぅ♡」

「ほんとね」


ミナミとクシナの声に、ノブ、マイ、サユリが大きく頷いた。


『ダンジョン核については、もちろん調査を進めることは必要だ。それも、スザが先頭に立ってやらないと難しいだろう。旅に出るのも必要だと思う。あとはいつ調査を開始し、旅に出るかだ』


スザが口を開こうとした時、ノブが手を挙げた。


「意見をいいでしょうか。まずは、この国でやるべきことをやってからだと思います」


ノブの言葉に、サユリとタケルは頷いた。


「今からこの国を立ち上げようとしているのに、その中心となるスザがいないのでは、この国が立ち行かなくなり、足元から崩れ去るね」


サユリは言い切った。ノブも大きく頷く。


『スザが旅に出ても、この国を守れるくらいになってからでないと、スザが帰ってきたら皆死んでいました・・・とかになってそうよね』


イズの呟きが大きすぎて皆に聞こえている。


「・・・わかりました。まずはここで決めたことをやっていって、それでみんなが大丈夫だと思ってから旅に出ることにします」


全員が頷いた。


『私からも注文があるわ。スザ、ブック上の配下をもっと増やしなさい。仲間と呼べる人たちね。最低でもあと2人。多ければ多いほどいいわ。それも旅立ちの条件に加えます。これ、ダンジョンマスター命令ね』


金髪の美少女は画面上でニヤリと笑う。


『そして最後に、もう一つ命令します。め・い・れ・い・ね!』

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