表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/163

第50話 父と子と・・・④

「ダアアァ!」

「キャアアァ!」


スザとクシナは穴の中を、絶叫を上げながら滑り落ちていた。下に光が見える。スザは腹ばいのまま頭から、クシナは座ったままの形でお尻から光の中に滑り込んだ。

2人は、ポヨン、ポヨンと何度か跳ね、宙に止まった。浮かんでいた。


「水の中!?」


でも息ができる。びっくりして横を見ると、クシナも驚いたように目を見開いてスザを見ていた。


『よく来た、我が母イズに連なるものたちよ』


正面を見た。タケルが同じように浮いている。その更に前、青い光の中に美女がいた。

スケスケの服を着た巨乳の金髪美女が。豪華な椅子に座り、右手に長い杖を持っている。杖の先には青い光を放つ玉があった。


その左右には鱗を纏った騎士たちがずらりと立っている。よく見ると、顔も鱗でおおわれていた。


『そなたたちは、そこで見ておいてもらおう。これは我とタケルの話だからな』


タケルは振り向き、スザとクシナを見て大きく頷き、また正面に戻る。


「タキ様。お招き頂き、ありがとうございます」


タケルは深くお辞儀をした。


『力を欲して、わざわざここまで来るとは・・・来るのではなかったと後ほど後悔すると思うぞ。あんな大それたこと考えるべきではなかったと・・・田舎でただ妻を得て子を成し、寿命を全うすべきであったと』


タキは動きもせず、無表情でタケルを見つめる。


『今ならまだ帰ることもできるが、どうするか?』

「無論、私は力を得るために来ました!そのためであれば、何でもします!」

『本当か?』


タケルはタキを睨みつけるように見て大きく頷いた。

ふん・・・と鼻で息をして、杖を前に押し出した。

先の魔石から光が放たれる。その光は丸く、大きく広がり、タケルの前で停止した。体を包むほどの大きさだ。その中に剣が浮かんでいた。


『タケル、そなたが望む力。それは人の力を遥かに凌駕するもの。そんな力を持った者は、心を壊し、狂い、やがて人を、自分の愛する者も破滅に導く。かつてのそなたの祖先もそうであったように・・・』


タケルは目を見開いた。


『この話は伝えられていないか・・・そなたたちが開祖と呼ぶ者、敬意を評して青髪の英雄と呼ぼうか・・・彼は最初我の理想とした統治者であった。赤髪の英雄たちと協力してこの地から魔物を一掃し、町を作った。しかし徐々に与えられた力に振り回され、飲み込まれ、魔物のみならず人をも自分の大いなる望みのために殺し始めた。イズ様と話し合い、イの塔の踏破した者こそがこの地を治める者と思わせ、イの塔の中で自らの部下や子供、赤髪の英雄に誅された』


タケルは動かない。じっとタキの言葉を聞いている。


『そなたが得ようとしているのは、そのような人を不幸にする力だ』

「私は、そうは思いません!」


クシナだ。クシナが突如タキに叫んだ。


「私は、赤髪の英雄様から父の代まで受け継がれた力を得ました。それは私にとって大きすぎる力です。でも、私は人を不幸にするような力だと思っていません!使い方次第です!炎は、寒いときには人々に暖を与え、料理にも必要です。でも、家や森を燃やし、人々を殺す一面もあります。使い方を間違えなければ、人を幸せにします!タケル殿が人の道を外れないよう私たちが導きます!」


クシナの言葉にタケルはありがとうございますと小さく呟いた。


『感動の言葉だな。しかし・・・』


その言葉とは裏腹に、タキの表情にはなんの変化もない。冷静にただタケルを見つめているだけだ。


『ブック。わが母イズが赤髪の英雄に与えた世界を取り戻す力。その力を重荷に感じた・・・違うな・・・青髪の英雄と同じように狂うと悟った赤髪の英雄は、賢明にもその力を遠ざけた。今は、そこにあるようだがな』


タキは杖を少しずらし、スザを指した。


『話がそれたな。そんな英雄と言われていた男たちが狂い、逃げ出すほどの力を得て、本当に御せると思うのか?タケルよ』


すっと手が上がった。スザだ。


「ちょっと、いいですか?イズの娘か仲間か知らないが、人を非難するようなことばかり言って!クシナも言っていたように人を不幸にも幸せにもするのは、その力の使い方次第だ!俺もクシナも人から英雄と呼ばれるほどの力を得た。その強大な力のせいで俺も変わるかもしれない・・・そうイズに言ったんだよ!イズはなんて言ったと思う?」


タケルもクシナもスザを見つめていた。


「イズはな、人の道から外れるようには絶対にさせない!そのために俺と共に歩もう・・・そう言ってくれたんだよ!」


初めてタキの表情が変わった。目を見開いた、驚愕の表情に。


「タケルが自らの意志で人を守るために変わろうとしている時に、あんたは恐れさせることばかりを言って、手を差し伸べようとかそうならないようにしようとか、そんなタケルを守ってやろうって気はないのかよ!」

少しでも「おもしろい」、「続きが気になる」と思って頂ければ、ブックマークをお願い致します。

またページ下部の☆を押して評価頂けたら、とっても励みになります。

気軽に評価☆を押してもらえれば幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ