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第2話 赤く染まる街②

今日も午前中の畑仕事を終え、誰よりも早く昼食を取り、スザはいつものようにイの塔の最上階にいた。いつものように、ただ大きな窓から、山々を、海を、街を眺めていた。

周囲をぐるりと囲む柵が見え、南には大きな門が開かれており、門上部の監視櫓で警備兵が人の出入りを注視しているのが目に入る。いつもの景色だ。


「ん?」


スザは違和感を覚えた。何かが違う?

大門の向こう、その上空の青空に少しずつ色が混ざってゆく。地上部分から沸き立っているようだ。空の色は薄い灰色から、どんどん茶色へと変わってゆく。


「何?砂煙?」


自然とスザの顔は窓へと近づく。もっと見えないかと思った瞬間、監視櫓からギャンギャンと銅鑼の音が鳴り響き、同時に大門から多数の人間がドッと溢れ出た。


街中で動いていた人々の動きが一斉に止まる。


小さいわぁわぁという声の混ざった音と共に、敵だぁと叫ぶ声が微かに聞こえてきた。

スザの目は、もちろん自分たちの家に向かった。自分たち孤児の住む建物だ。声に導かれるように、子供たちの姿が家からどんどんと現れ、走って周囲に散らばってゆく。遠目にも赤い髪の少女が身振り手振りで何かを言っているのがわかった。


スザは、バッと窓から身をはがし、最上階から出ようと開けっ放しの扉に向かって走り出した。瞬間、ドンと大きな音を立てて、急激に扉が閉まる。

扉にぶつかる手前で何とかスザは止まった。


「外に誰がいるの?開けてください!助けにいかなきゃ!」


叫びながらスザは、両手のこぶしを扉にどんどんと打ち付ける。力いっぱい押しても、体ごと勢いよくぶつかっても扉は開かない。


「開けてください!みんなが!開けてください!助けにいかなきゃいけない!」


どんどんと扉を叩くスザは、背後に何かを感じて、バッと振り向いた。

そこには、椅子があった。


「椅子?さっきまで何もなかったのに・・・ていうか、今までこの部屋には椅子なんてなかった・・・」


背もたれのついた、ふかふかの椅子だ。この塔の偉い人が座ってもおかしくないほどの意匠の凝った椅子だ。その椅子の座の上に何か置いてあった。


「・・・なに?」


スザは、椅子に向かって一歩踏み出す。見なくちゃいけない・・・となぜか思った。なぜかわからない。だがゆっくりと、まるで吸い寄せられるようにスザは進み、椅子の前に立っていた。


「本・・・だ・・・」


そう、本である。皮で装丁されている、意匠の凝った本だ。スザはいつの間にかその本を手に取っていた。本は皮の帯で止められている。何の疑いも持たずその帯を外し、本を開いた。


「え!?」


スザは声だけを残し、光に包まれた。光が収まった後には、スザの姿は部屋になかった。

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