第39話 北の脅威⑧
『あ、ごめんなさいねスザ。少し取り込んでいたから連絡が遅れたわ』
「お、イズとやっと連絡が取れたよ」
パッと笑顔になるスザを見て、クシナは何となく心にモヤモヤを感じた。
「スザ様、楽しそうですぅ♡」
ミナミは手をもじもじとさせながら、顔を曇らせクシナにだけ聞こえるように呟いた。
クシナは無意識にミナミの手をギュッと握っていた。
スザはダンジョンでの戦いと、マスターがおらず部屋の中に玉があることを伝えた。
『はぐれダンジョンで上位種が出てきたなんて・・・何かが起きているってことかしら』
何か?
『まあ、それはダンジョン核を見れば情報が入るかもしれない』
ダンジョン核?
『そう、あんたの目の前にある光り輝く玉のことよ。マスターが離れたところで作ったダンジョンに自分の疑似人格を置いて管理させるのよ』
へえ・・・どうすればいい?手を玉に置く?
『正解です。スザさんお願いします』
了解です
「やっぱりこの球がマスターの代わりとなるものらしい。で、イズと今から調べるから」
「わかったわ」
クシナの返事と同時にナギとミナミは頷いた。スザは玉に手を置く。
『はい、じゃあやります』
その言葉を聞いた途端、スザは光に包まれた。
何人もの少女たちがいた。この部屋、マスターの部屋だ。
その女の子の前にオークがいた。血まみれで左腕がなく、ボロボロだ。
少女たちは泣き叫んでいるようだが、何も聞こえない。
1人を捕まえた。口に運んだ。血が噴き出て、痙攣していた体から力が抜けた。腰を抜かし、失禁した子もいる。
2人目を掴んだ。泣き叫んでいるようだ。1人目の足が口の中に収まった。続けて2人目の上半身が食いちぎられた。気を失う子もいた。2人目も食べ終わった。オークの体から流れていた血は止まったようだ。
3人目にその気を失った子を掴んだ。かんだ時、体が一瞬バタバタ動いたが直ぐに力が抜けた。食べ終わった。左手が生えていた。
最後に2人残っていた。右手と左手各々で逃げる子たちを捕まえた。右手側の上半身が消えた。左手側は硬直する。直ぐに左手側の上半身も口の中に収まった。少女たちはいなくなった。
オークの体が光り、その光が治まるとハイオークが立っていた。ハイオークは部屋から出て行った。また1人少女が連れてこられた。
暗くなった。
何かが聞こえる。唸り声か?いや、声だ。何を言っている?
・・・セ・・・イィ・・・ホロ・・セェ・・・ナ・・・セェ・・・
ダ・・・ツイ・・・イ・・マチ・・・セカ・・・ホ・・ミン・・・コ・・・
ダレ・・・イオ・・・デ・・・トウノ・・・セカイ・・ホロボ・・・ナコロ・・・
ダレ・オモイオ・・デイノ・ウノ・チオ・カイ・ホロゴ・・ンナ・ロセ
だれかおもいおついでいのとうのまちおせかいおほろぼせみんなころせ
誰か思いを継いで、イの塔の街を、世界を滅ぼせ!みんな殺せ!
明るくなった。いや赤暗い?がれき?暗くなった。
稲妻が中心から四方八方へ走る。
笑顔の少女たち。
暗くなった。
美女がいた。画面を見ていた。泣いていた。でも笑顔だった。
突然、壁が吹き飛んだ。がれきの下に美女はいた。血まみれだ。それを何かが掴んだ。がれきから引きずり出し、引き裂いた。
『どうした?終わったぞ?返事がないが』
えっ!?
イズの声に、スザははっとして周りを見た。ナギ、クシナ、ミナミはいつも通りの表情。心配しているような感じはない。
なんだったんだ?あの映像は?
『何?なにか見えたの?私はただ誰の所属にもなっていないダンジョン核だったから、私の所属に変えて魔物を生み出さないようにしただけよ。情報もなにもなかったわ』
そうか・・・じゃあ見たことをイズにもみんなにも教えよう
スザは皆に説明をした。
連れてこられた少女たちが傷ついたオークに食われ、そのオークがハイオークになったこと。イの塔、世界を滅ぼせ、皆を殺せという言葉。赤い暗い景色にがれきと空間を走る稲妻とオークに食われたはずの少女たちの笑顔。マスター部屋とは違う映像部屋と美女、崩れる部屋と美女の惨殺。
『まず最初だけど、オークが殺し合って、生き残ったオークが少女たちを食べて回復し、ハイオークになったと考えられるわね』
イズの言葉を伝えると、全員が頷いた。
「次の呪いと思えるような言葉とその後の赤い景色とがれきなんだけど・・・」
クシナはそう言った後、チラリとナギを見た。小さく息を吐いて、
「ギンの言葉ではないかと思うの」
ナギは目を見開いてクシナを凝視した。
「ナギさん、ごめんなさい。説明するわ。スザが見た赤い景色とがれき。最後、ギンは炎に照らされたカナヤマの町の中央広場の、宙に浮いていたわよね」
その言葉にスザは頷く。
「宙に踊り出たギンの右腕を切って、その後胸を蹴り上げた」
「そう。ギンの体が回転しているところ、背中を私が炎の刃で切り裂いた。ギンから見た景色は赤く照らされた夜空を見た後、カナヤマの町のがれきが見えたと思うの」
ナギの眉間に深い皺が刻まれる。
「そして“誰か思いを継いでイの塔の街を、世界を滅ぼせ。みんな殺せ“という言葉。イの塔の街という言葉が出てくることから考えて、ギンしか思いつかないわ」
「俺とクシナがギンを殺した時、その思いが稲妻のように世界に伝わった。その思いは幸せそうに笑う少女たちを許せなかった。そしてダンジョンを生み出した・・・」
クシナは頷き、
「推測だけどね。ナギさんごめんなさい」
『スザが見たのは、四方八方に広がる稲妻だったわね』
そうだね
『それを最も悪い状況としてとらえると、ギンの思いはこの世界中に広がっていったと考えるべきね』
そんな・・・
スザはイズの言葉を皆に伝えた。クシナは大きく頷いた。
「各地でダンジョンが現れ、この村のように襲われている可能性があるわね」
「じゃあ、旅をしてこの仮説が正しいか調べるしかないのか・・・」
スザの言葉にミナミがバッと手を上げた。
「はい♡スザ様と一緒に旅をして調べます♡」
その可愛い姿にナギもスザもクシナも笑うしかなかった。
「わかったよ。ありがとうミナミちゃん」
キャッ♡と飛び上がったミナミは、ニコッ♡と笑顔を振りまいた。
『最後のはよくわからないから置いときましょう。調査だけど、まあ、するのはいいことだわ。落ち着いたら行けばいい。その前にあんたたちにしてもらうことができたの』
何なの?
『今、イの塔の街は北の湖の軍に攻められてるのよ』
「えっ!?」
スザは他の3人がびっくりするほどの大声を出していた。
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