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第30話 スザ出撃す③

次の日。

朝食後、イの塔の街にいる配下を映像室に集めた。もちろん、イズの命令である。

イズは直接姿を見せることはしなかった。


まだ体ができていない・・・って何を言ってんだと思った。いつも俺に見せてるでしょ?

イズは何も言わず、ただ首を振った。謎だ。


『みんな、来てくれてありがとう。私がダンジョンマスター、イズです』


金髪の美少女が壁面一杯の画面に大きく映っており、声は画面横から流れた。


『これは仮の姿です。もう少ししたら、みんなの前に出ていけるようになるでしょう。その時には姿が変わっているかもしれませんが』


ナギ、クシナ、ユウ、マイ、ノブ、ミナミの6人はガバッと頭を下げた。スザはそんなみんなを画面の横に立って見ている。ダンジョンマスター側という立場のためだ。


『ここに集まってもらったのは、なぜスザがサブダンジョンマスターとなったのかを知ってもらうためです』


1人の少女がモジモジしながら、ゆっくりと手を上げた。ミナミだ。


「・・・イズ様、お話の途中にすみません。なぜ私が呼ばれているのでしょうか?」

「・・・それなら俺もです」


ノブも同じく手を上げた。というか、ユウもマイもおずおずと手を上げた。


「あ、ごめん。それも話を聞いていけばわかるから、イズ様の言葉をとりあえず聞いてもらえませんか?」


スザの言葉に上げていた手を全員降ろした。


イズは簡単にまとめて経緯を述べた。


スザがイの塔の能力を受け継いだこと、そのためイの塔の勢力下においてはイズと常に話ができること、能力は強力なもので配下に力を分け与え、配下から受けとることができること、ここにいる者とカナヤマのサユリが配下に加わっていること、みんなにはスザを支え、この国を共によき国にするよう協力してもらうこと。


これらをかいつまんで説明した。


「なぜ我々が配下になっているのでしょうか」


ノブが挙手して質問してきた。


『配下になれる者は、スザと皆がお互いに信頼し合っている者か、一方的にスザに心酔している者である。ここにいる者は、そうして配下になった、スザと私が頼りにしている者たちだ。だから私とスザに協力し、イの国を一緒に良い国にするよう手助けして欲しいと我は思う』


ノブはバッと頭を下げた。


「私は、イズ様とスザに協力します。宜しくお願い致します」


ナギを除き、全員が頭を下げ同様に宣言した。


「私はすでにこの命をスザ様、クシナ様に捧げると誓った身。何でも存分に御命じ下さい!」


ナギも頭を下げた。


『サユリもこの街に来ることもあるだろう。その時には我から説明しようと思う』

「姉も喜ぶと思います」


イズは画面越しに、短髪黒髪の少女に目を移した。


『ところでマイよ』

「はいっ!」


突然声を掛けられ、びっくりしたのだろう、体が一瞬跳ねた。


『すまん、びっくりさせた』


マイは肩を跳ね上げたまま、首を小さく左右に振る。


『ハハハ、可愛いのう。一つ願いがあるのだが・・・』

「・・・な、なんでしょうか?」


マイの顔が強張る。


『次にスザが戦いに出向くとき、ミナミを一緒に連れて行きたいのだが』

「ハイッ♡!喜んで♡!」


マイの横で、ミナミが満面の笑顔♡で返事した。


『いや、ありがたいがミナミよ。そなたの姉に了解を得たいのだよ』


ペロッ♡と小さく舌を出して、姉のマイを見つめた。その可愛さにマイは苦笑する。


「理由を聞かせてもらってもよいでしょうか」


視線を妹ミナミから画面のイズに移動させた。


『そなたの妹ミナミには、希少な回復士の素養があるのがわかった。スザはもう大事な身。行動するときには何人かで動くようになろうが、その中に回復士を加えたいのだ』

「わかりましたぁ♡!」


バッ♡と右手を上げるミナミ。その笑顔に微笑みながら、


「了解致しました。スザ殿、妹ミナミのこと宜しくお願い致します」




「助けてぇ!誰か!助けてぇ・・・・」


少女の叫び声は小さくなった。

食料を探しに行った集団が襲撃を受け、ほとんどが殺され、食われた。生き残った女性が自分の女の子が連れ去られたと助けを求めに来た。


「村長、助けに行こう!」

「ダメだ!もう少し待て!使いが着けば、赤髪の英雄が助けに来てくれる!」


既に村の家々は崩されていた。男女20数名が村のはずれにあった洞窟に潜んでいるのだ。その奥にはイの塔をかたどった小さい像が置かれていた。ぼんやり光っており、なぜか昔から魔物がこの洞窟には近づかなかった。


「どうか、我らをお守りください」


残った村人たちは、その像に一心に祈っていた。

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