第29話 スザ出撃す②
2021.8.4一部手直し実施しました。
流れに変化はありません。
夕食をクシナやナギ、マイたちととったスザは、ナギと一緒にイの塔に入った。ナギの住む場所がないと思っていたら、イズから2人の部屋を作ったから使えと連絡が来たからだ。
イの塔に入ると、何もなかったはずの1階が大きく変わっていた。
入ってすぐに大きなエントランスがあり、扉を開けると兵士たちが駐在する空間がある。その左手には2階に続く階段が見える。右手には会議室、執務室があり、その奥には街の内外が映せる映像室が作られていた。
2階には部屋がたくさんあり、どこを使ってもよいらしかった。巨大な共同風呂と共同の便所があり、雑談ができるような椅子が置いてある空間もあった。どの部屋も同じ作りでベッドと机と椅子があり、服や装備が置けるタンスがあった。中には部屋着があった。食事は街で取るしかないようだ、今のところは。
3階は訓練ができる場所にしたとのことだ。魔物も出てきて倒すと経験値も入るらしい。実戦を経験できるのはとてつもなくいいことだ。
スザは部屋着に着替え、イズが呼ぶ地下のモニター室に来た。ナギは部屋で待機中だ。
「お疲れ!やったわね!」
扉を開けると、イェーイと言いながら、右手を大きく上げてイズは飛び込んできた。
スザの動きが止まる。そして時も止まる。
扉を閉め、スザは右手を上げた。小さくパンッと手を合わせた。イズは何も言わず、身をひるがえし、奥に進みくるりと振り返った。
「・・・よくやったわ、スザ。早速、能力検証をしましょう」
「・・・ありがとう。ブック」
2人とも、さっきのはなかったことにしたようだ。
スザは自分の能力値を報告する。
等級:32 補正:80+30(英雄(工作員)、死神(暗殺者)) 力:61(171) 生命力:67(177) 気力:83(193) 魔力:49(159) 知能:116(226) 体力:81(191) 技巧:127(237) 均整:119(229) 機敏:124(234) 徳:70(180) 運:125(235) (数字)は補正後
等級は12上がっていた。なんか益々暗殺者って感じの能力になってます。いや、大丈夫だ!大丈夫のはず!大丈夫だよね・・・
選択可能職業数:2(選択1:英雄(工作員+2) 選択2:死神(暗殺者+2))
英雄に設定していた工作員の熟練度が増して+2になってはいたが、職業の選べる数も暗殺者の熟練度も増していなかった。
だんだんと上がりにくくなるんだね。
選択可能能力:10/10 気配感知、冷静、急所感知、不意打ちで即死、投擲、構造把握、爆破罠設置、罠効果増加、体術、剣術
常時発動能力:2/5 気配遮断、鑑定
常時発動能力が3つ増えていた。イズと後で相談だ。
配下:2/10 補正:30 付与補正:12(技巧)×信頼心酔度×10
配下1:ユウ(騎士) 補正:3×2(力) 信頼心酔度:2/10
配下2:クシナ(魔法使い) 補正:12×2(魔力) 信頼心酔度:2/10
配下の最大数は変わってないが、2人とも信頼心酔度が上がっていた。
やっぱりあれか・・・勝手な英雄呼び。まあ、考えまい。
「配下、増やせるんじゃない?」
イズの言葉に従って配下3を押してみた。
赤い文字が増えている。ナギ、マイ、サユリだ。ん?ノブ?大真面目のノブ兄?そしてミナミ?マイの妹の?まあいいか。
補正値が一番高くなるように、職業を設定した。
配下3:ナギ(剣士) 補正:21(技巧) 信頼心酔度:1/10
配下4:マイ(魔法使い) 補正:9(魔力) 信頼心酔度:1/10
配下5:サユリ(長官(町)) 補正:15(知能) 信頼心酔度:1/10
配下6:ノブ(長官(街)) 補正:14(知能) 信頼心酔度:1/10
配下7:ミナミ(回復士) 補正:9×2(魔力) 信頼心酔度:2/10
補正:107
補正で100を超えてます。すごいです。
政治向きな職業もあったので設定した。
生産系の職業もあったけど、向いた人が配下になったら設定しよう。で、ミナミさんです。回復士ってケガとか病気を治せる職業です。冒険には持ってこい。姉のマイに話をしてミナミを今度一緒に連れて冒険に行けるように交渉しましょう。なぜか信頼心酔度も最初から2だし。
「あれじゃない?クシナと一緒」
「どういう意味?」
「でた!よくある、あれのやつ。こいつがそれか・・・」
意味の分からないことを言いながら、手を額にやって天を仰いでいる。
無視しよう。次!
「クシナの職業見直しできるはずよ」
「本当?」
イズの言葉に、配下2のクシナの職業欄を押した。
「賢者とか魔術師とかない?」
「魔術師ある」
「じゃあそれで」
魔法の出力があがるし、クシナの能力の上りも大きいらしい。
「パーティー設定もしておけば?」
「何それ?」
配下が5人を超えると、パーティー設定ができるらしい。一緒に行動する人たちをパーティーとして設定すると、自分の経験を他のパーティー設定者にも分け与えることができるのだ。とりあえず、クシナ、ナギ、ミナミをパーティーとして設定しておいた。
「みんなは俺みたいに等級が上がるとわかるの?」
イズは首を横に振る。
「自分が何の職業かもわからないし、自分の等級が上がったのも、何の能力を得たのかもわからないわ。ただ能力を使っているうちに、だんだんと使える技とか魔法が増えてくるのが自分でわかるの」
へぇ。
「普通は、自分がやったこと、つまり実績ね。実績に応じて能力が増えて、最終的に職業が付く。その結果、その道の達人になっていくのよ」
ふーん。
「例えば、剣士ね。剣士になりたいから、まずは剣を買って剣を振って敵を倒していく。訓練や実践を通して、知らないうちに剣を思うように使いこなせるようになる。例えばギンのように斬撃を飛ばせるようになるのよ。その結果、いつの間にか自分が剣士という職業になっている。そして、能力として剣術を得ているのよ。まあ、自分ではわからないけどね。周りは剣の達人、剣士と呼ぶようになる。で、自分も剣士になったと思う」
なるほど。
「能力は使えば使うほど上がっていく。見えないけど。あんたの場合は、そういうことは一切ない。異質。ブックの力で能力を強制的に与えられる。ブックの要求する経験を経ることによって、その職業と等級に見合った能力を与えられるのよ。一生懸命に努力して我がものにするのではなく、ブックを通して経験したことで、強力な能力を得る」
「怖いな。なんで俺にそれを?人によっては自分を見失っておかしくなりそう。俺だって・・・」
イズはじっとスザを見つめている。そしてフッと小さく笑った。
「スザ、あんた過去の映像を見たんでしょ?」
頷く。
「ならもういいでしょ、理由なんて・・・今回は、前とは違う。あんたはこの街が好きだと言った。だから私はあんた達と共に歩もうと思っている。私がいる限り、あんたを人の道から外れさせはしない」
強い眼差し。直後にニンマリと笑う。いやらしい笑いだ。
「私だけじゃないか。あんたの仲間たち。あいつらがあんたをおかしくさせるようにはしないわよ」
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