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第27話 ダンジョンの町“カナヤマ”攻略戦⑯

午前が終わるころ、朝食後に出ていったサユリが帰ってきた。


「我々は、イの国としてひとつとなることを望む。しかし、イの塔の街に隷属することはない。どちらが上とか下とかはない、対等の関係でなければ関係を破棄することになる」


サユリはクシナを見つめた。クシナはもちろん大きく頷いた。隣に視線を移すと、スザも真剣な眼差しで頷く。


「対等な協力体制を作りましょう。宜しくお願いします」


スザは頭を下げた。サユリもクシナも同じく頭を下げる。


「ここに対等の関係を結んで、新たなイの国が誕生した!」


頭を上げ、サユリは宣言した。

その声は屋外にも聞こえたようだ。外の町民たちは大声でイの国誕生を喜んでいる。

サユリはクシナと、そしてスザと握手を交わした。


昼が過ぎた。ナギは来なかった。

スザは、ちょっとごめんと言って駆け出す。町の大門とは反対側だ。


「どこに行くんだ!?」


その背にサユリは大声をかける。その肩をちょんちょんとクシナは突いた。その耳元でごにょごにょと何か言っている。


「本当にいいのか?」


サユリの疑問にクシナは頷いた。


「スザは惜しいと思っています。もちろん私も」

「・・・ありがとう」


サユリはクシナともう見えないスザに頭を下げた。


ドタドタと音がする。ちょっと、ダメですよ!という声が響くが、お構いなく唐突にドアが開いた。

スザが立っていた。肩で息をしている。


「ナギさん!」


その声に、背を向けて立っていたナギは、スザに向かってバッと土下座した。


「私には資格がありません!まだここで罪を償っていません!ここでこの町を守って死ぬことが私の望みです!協力することはできません!申し訳ございません!」


スザの言葉を遮るように一気にナギは自分の思いを吐き出した。


「・・・」


スザは何も言えず、ただ土下座しているナギを見つめていた。そしてがっくりと肩を落とす。


「・・・ダンジョンではありがとうございました。お世話になりました・・・」


土下座のナギに頭を下げたスザは、身動きしないナギをもう一度見た後、ゆっくりと振り返った。

部屋を出ようとした時、サユリが現れた。スザを押し返し、中に入る。


「あんた!ナギ!さっきの言葉は本気かい!?」

「はい!私はこの町を守るため戦います!それで罪を償わせてください!」


サユリは胸を張って腕を組む。


「わかった!この町の代表代行として、お前の望みを叶えよう!」


ナギは土下座のまま頭を更に下げ、ドンッと床に額を撃ちつけた。


「ありがとうございます!」

「では、町の代表代行として命令する!その命を懸けて、ここにいるスザとクシナを守れ!」


えっ!?とナギは頭を上げた。


ナギもスザも驚きの表情でサユリを見つめている。クシナは無表情・・・ではなく、ほんの少しだけ微笑んでいる。


「このカナヤマの町は、イの塔の街と対等の関係を結んでイの国となった。お前はカナヤマの町を、命を懸けて守ると誓ったな!」


ナギは大きく頷く。


「それはすなわち、イの国を命を懸けて守ることだ!それはこの国、町に住む未来ある子供の命を守ることであり、カナヤマの町を守ることと同義である!」

無茶な論法じゃない?

「その中でも、特にスザはカナヤマの町にとって重要人物である」

サブダンジョンマスターで、このカナヤマの町を任されましたね。すぐに丸投げしましたけど。

「そしてクシナは赤髪の英雄の娘で魔法使いだ。接近戦には弱い。2人はお前の命を懸けて守るに値する人物だと私は確信している!」

おおう!そんなことで認めるわけないじゃない!


ナギの呆けていた表情が、ゆっくりと変わっていく。そして微笑み始めた!?


「わかりました!このナギ、命に代えてお2人を守りします!」


そしてドンッと額を床に打ち付けた。


うそぉ!?認めてるぅ!


サユリはどうだ!とドヤ顔でスザを見つめていた。



「どうだ?」

「確定しました」


ふむ・・・と顎に手を当て、考えたのは一瞬だった。


「では準備に入れ」

「はっ!」


鱗の甲冑を身に着けた老年男性は踵を返し、部屋を退出した。


「目の前に現れた最大の好機。宿願を果たそうぞ・・・」


トン、トン、トンと執務室の扉を叩く音がした。


「入れ、どうした?」

「湖の畔で、子供たちが綺麗な球を見つけたと。それで町長様にと・・・」


手のひらに乗るくらいの小さな透明の球が差し出された。

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