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第20話 ダンジョンの町“カナヤマ”攻略戦⑨

ゴウゥッ!


スザの背に吸い込まれようとしていた刀身が音と共に跳ね上がる。赤い光の槍。ナギは炎が剣を弾き返したとわかった。その勢いでギンはたたらを踏む。


「なんだぁ!?」


無数の炎がギンを襲うが、バックステップで躱し続ける。ギンには当たらず、足元で次々と爆発を起こしていた。その間にスザは離れ、ほっと一息付けた。


ギンを襲うと同時に、次々と炎の槍がゴーレムたちにも突き刺さり、四散させてゆく。そして巨大な炎の壁が立ち上がった。それは中央広場をダンジョンから溢れ出てくるゴーレムから隔離した。


「間に合ったわね」


スザの背後、カナヤマの町民たちの間から、赤髪の少女が笑顔で現れた。


『なんていい子!クシナはいい子よ!』


イズの喜び爆発の声がスザの脳内に響き渡った。


「みんなは?」

「マイに馬車で逃げるよう言い聞かせたわ」


ギンから目を離さず、クシナはスザの隣まで来ると、はいとパンを差し出した。


「倒した兵士から奪ったわ」

「ありがとう」


スザは受け取ったパンにかじりついた。今は体力を回復することが先決。少しでも回復できそうなことはすべきだろう。

クシナの周りから炎の槍が無数に飛び出てゴーレムを倒していく。炎の壁の中、中央広場に入り込んだゴーレムはすべて破壊し終えた。


「いつの間にこんな規格外の力を手に入れた?」


ギンはギリリと歯を食いしばった後、クシナを睨みつけた。


「あなたが父を殺したから、私は力を得ることができたわ」


クシナは口を開きながら、炎の槍を噴き出し続ける。


「チィィィ」


舌打ちしながらギンは炎の槍を避け、避けられないものは剣で弾きながら右へ左へ前へ後ろへと不規則に移動し続ける。ギンは避け続けるのが精一杯で、2人へは近寄ることができない。


ナギはギンを助けに行きたいが、サユリが2人には近づけさせないようけん制している。


『持ってきていた食べ物、飲み物すべて取りなさい』


スザはマントの下に隠したポケットから取り出し、無言で口に運び続ける。

楽観視はできない。今の間に回復して、隙をついて倒す!


スザは口いっぱいに頬張りながら、魔法を躱し続けるギンを注視する。スザと戦っていた時と違い、ギンの表情に余裕はない。


圧倒的な近接戦闘能力でスザに攻撃はさせなかった。しかし、魔法戦は分が悪い。中遠距離戦闘に持ち込まれ、近接戦闘に持ち込もうとしてもクシナの手数が多すぎて逃げることに精一杯。更に炎の威力が強く、その熱さでジリジリと体力を奪っているのだ。


『苛立っているわね』


スザにも苛立ち、焦りのような表情だと読み取れた。


もうすぐ、あれを仕掛けるんじゃない?

『私もそう思うわ。体力はどう?』

半分くらいは戻った。いける。その時が勝負!


ギンはジグザグに逃げながら、広場の中央にある崩れかけた石の構造物の影に入った。


ここか!


炎の槍たちと構造物がはじけ飛ぶ。あの斬撃を飛ばしたのだ。と同時に石煙の間からギンが宙に躍り上がった。すでに居合の構え。


「残念だな!」


ギンは右手で剣を振りぬいた。


「あ!?」


はずだった。斬撃が出ない!ギンは振り抜いた右腕に、ひじから先がないと気づいた。


「お前がなっ!」


下から短剣を振り上げたスザが笑顔で右足をブンッと振り上げる。剣を握ったギンの右手はスザの横で宙をクルクルと回っていた。


「ガッ!」


胸を蹴り上げられたギンは自分で飛び上がった以上に跳ね上がっていた。重心はずれ、胸からくるりと宙を回り、ゆっくりと回転しながら背中をさらす。


「はああぁ!」


クシナの気合の声と共に右腕から炎の刃が噴き出て、ギンの背中を貫く。


「・・せか・」


ギンはそれ以上言葉を出せなかった。刃は胸を突き出て更に体を縦に、真っ二つに切断した。

ドウッと背中から地面に落ちたスザは痛いことを忘れて、炎に包まれ宙を舞うギンのなれの果てを見ていた。


「すごい・・・すごすぎる」

『まあ、クシナは先祖返りね。赤髪の英雄と同じかそれ以上の強さよ』


「スザぁ!」


倒れ、大の字になったスザにクシナは駆け寄っていく。

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