第15話 ダンジョンの町“カナヤマ”攻略戦④
2021.8.4一部手直し実施しました。
流れに変化はありません。
『私は赤髪の英雄の娘、クシナ。あなたが町の代表ですか?』
『そうだ。町長のギンだ』
クシナは兵士に連れられ、執務室を訪れていた。目の前にはギンと名乗る、左頬に傷の男が机についている。そう父を殺した男だ。机の左前には銀色長髪の切れ長目ハンサムが立っていた。
湧いてくる怒りを一呼吸で体外に出し、
『あなた方の狙いは武力による周辺地域の支配。私たちイの塔の街は、そのための食糧基地。もしくは数年後の前線基地といったところでしょうか』
『・・・ほう』
ギンはつぶやき、右手を少しだけ上げる。続けろということだろう。
『そして連れてこられた私たちは二つの町をつなぐ人質。かすがい。子をなすためだけの犠牲者と言いましょうか』
『まあそんなところじゃないか?』
他人事のようにギンは対応する。表情に変化もない。
『そんな魔物の益になるようなことはやめて頂きたい』
『・・・なぜそう思う?』
『私たち人類は今も魔物の脅威に晒されています。こうやって均衡がとれ、私たちが生きて生活ができているのも、先人たちが協力し合う体制を作り、それを維持してきたからです』
フンッと鼻で笑うギン。
『それをあなたは人との間で争いを作り、魔物に隙を見せようとしている。人同士が潰しあいをすること、すなわちこれを魔物の益と言わず、なんと言いましょう』
『小賢しいことだな、ナギよ』
話を振られた銀色長髪ハンサムことナギは、小さく頷くと、視線をクシナに合わせた。
『魔物の益にはならない、とすればどうされる?』
『え!?』
『イの塔の街を作られた赤髪の英雄。彼は、ダンジョンマスターと交渉しイの塔を魔物から解放したと言われています。それがなぜイの塔だけと考えられるのですか?赤髪の英雄だけだと考えられるのですか?』
クシナは目を見開いた。
『そうです。ギン様はダンジョン“カナヤマ”を踏破し、ダンジョンマスターを倒したのです。そして自らがダンジョンマスターとなられました』
クシナは顔をバッと動かし、机に座るギンを凝視した。
『まあ、俺は赤髪とは違い、魔物を生み出さないようにはしないがな』
『それは、どういう・・・』
最後までクシナは言葉を続けることができなかった。ギンの指示で入ってきた兵士がクシナの両腕を取り、執務室の外へと連れ出そうとし始めたからだ。
執務室の扉を出ようとしたクシナの背に、
『そうだ、ちょっと考えておいてくれ。俺の子供を産むことを。時間はたっぷりあるだろうから』
クシナが口を開く前に執務室の扉は音を立てて閉められた。
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