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第155話 教会の少女⑬

翌日、祈りの部屋の外にある広場にて、ハルカは公開裁判を急遽開いた。


「この者たちは、昨日教祖様を殺害しようと矢を射かけ、騎士団長サトシ殿を殺害した。またその後も再度この教会を襲撃しようと計画したところを捕縛された。釈明すべきことがあるか?」


昨日の夜、祈りの部屋にて行われた司教と豪商たちの舌戦が再び今日も繰り返されたのみ。あっちが悪いの水掛け論に、集まった群衆は、


「教祖様を殺そうとは不埒!」

「死刑だ!」

「磔にしろ!」

「首を刎ねろ!」


ハルカへの襲撃を見ていたことから、人々は過激な判決を要求していた。困り顔のハルカを見かね、スザは中央に座るハルカに近寄っていく。


「どうしたらいいんでしょうか・・・」

「人々は教祖様を崇めているので、その反動で過激な言葉を発していますね」


スザの言葉に、ハルカはため息をつく。


「私は、なるべく人を殺したくありません。そんなことを繰り返していたら、殺すのが当たり前のように感じるかもしれない・・・。私は壁画様が下さった魔法のように、人々を癒して行きたいのです」


スザはその言葉を聞き、質問をする。


「司教や豪商たちは、この町に有益でしたか?」


ハルカは大きく頷いた。


「それはもちろん!司教様がまとめ、指示しないと何も動かないし、豪商たちがお金を出してくれないと、私たちは人々を救うどころか、自分たちが飢え死にしていたかもしれません」


スザは唾を飛ばしながら言い合う5人を見ながら、


「今までの功績と昨日の襲撃、サトシ殿の殺害を比べて、死刑が見合うと思いますか?」


ハルカは首を横に振る。


「いいえ。サトシ殿の殺害については思うところはありますが、それでも5人を殺すことはありません」

「では、ずっと死ぬまで牢屋に入れておきますか?」


ハルカは少し考え、またしても首を横に振った。


「今の食料が心許ない状況で囚人を増やすことはありませんし、もしかして彼らの支持者が現れ助け、再び戦いが起こるかもしれません。それは避けたいです」

「ではどうするのがいいですか?」


スザの問いにハルカはじっと5人を見つめ熟考する。


「・・・5人をこの町から追放します。1日分の食料・水を与えて」


どうでしょうかとハルカはスザを見つめた。

スザは頷き、


「良い考えと思います。それを皆に宣言されればどうでしょうか」


ハルカは頷き、椅子から立ち上がる。そして、


「皆さんの考えはわかった!しかし、5人の今までの功績を考慮し、この町からの追放処分に決する!」


歓声と拍手が上がった。


「さすが教祖様!」

「御使い様は心が広い!」


概ね良好な判断と受け入れられたようだ。



翌日、囚人5人を連れ、スザとナギは町を出た。半日離れたところでスザは5人を解放し、食料、水、短剣を渡した。


「この街道は我々が作ったものだ。この街道から離れなければ魔物に襲われることはないだろう」


5人は黙って聞いている。


「西に向かうと大きな町がある。そこで働くか、さらに西に向かっても人々は住んでいる。ここには戻って来ず、新たな町や村で暮らすといい」


西に向かってトボトボ歩く5人を見送って、スザとナギは教会の町へと引き返した。

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