第152話 教会の少女⑩
またブックマークを頂きました。
ありがとうございます。
がんばります。
翌日、白の教祖服を着たハルカは壁画の前で祈りを捧げた後、ゆっくりと壁画を背に歩き始めた。祈りの部屋の扉が開かれ、ハルカは群衆の前に姿を現した。厳かな雰囲気に人々は黙ったまま、ハルカの言葉を待っている。
「私は!壁画教は!過ちを犯しました!」
ゆっくりと視線を巡らせ、人々の顔を見ながら、
「壁画様の願いは!この町を!この海を!この山を!動物を!植物を!そして我々人間を守ることです!そうです!人間です!この町の人々を!そしてここへ逃げてきた人々を!すべての人々を守ることです!」
少しざわざわとしている。
「しかし!我々は壁画様の願いを理解できず!ここに逃れてきた人々を!あろうことか見捨てることをしてしまいました!壁画教を代表してお詫び致します!」
ハルカは頭を下げた。
「教祖様!」
「頭をお上げください!御使い様!」
ざわつく声の中、十分に頭を下げた後、ハルカはゆっくりと体を戻した。
「私は!この教会の壁画様から力を頂きました!人々を癒す力です!しかし!この力だけでは!この町を!あなたたちを守ることはできませんでした!そこで私は!共に魔物からこの町を守って頂ける人々と同盟を結びました!」
祈りの部屋からスザとクシナ、イズが現れた。
「昨日、魔物を退けた!」
「魔物を倒した黒騎士!」
「魔法使い様!」
スザたちはそのまま歩き、ハルカの横に並んだ。
「皆さんはこの町から西の一帯を支配されているイの国の方々です!食料!魔物との戦い!この町に不足していることを支えて下さるとの話を頂きました!」
拍手と歓声が上がる。
「イの国の方々と同盟を結び、この町を!皆さんを守りたいと思います!」
さらなる歓声と拍手が広場を包み込む。その時、スザは異変を感じた。
無数の矢が宙を遮り、ハルカやスザたちを目掛け落下してきていた。歓声と拍手により、矢の発射音や風切り音がまったく聞こえなかったのだ。
スザの黒いレイのマントから、魔力の矢が自動で発射された。しかし、レイの矢はスザに当たる矢にしか向かっていない。瞬時にそれを理解したスザは、
「ウィンドウォール!」
全員の前に風の壁を出現させ、間一髪矢がハルカたちに突き刺さるのを防いだ。
「キャアァ!」
人々が悲鳴を上げ、逃げようと右往左往している。広場は恐慌状態に陥っていた。
「教祖様こちらへ!」
サトシは離れた位置から誰よりもいち早くハルカの元に着き、背でかばいながらハルカを祈りの部屋に誘導する。その動きが突如止まった。ハルカはサトシにドンッと押され、石畳に倒れる。
「サトシ様!?」
「ガハッ!」
上半身を起こしながら振り向いたハルカの目に、血を吐くサトシの体から、無数の剣が飛び出てくるのを見た。
「逃げ・・・」
倒れ行くサトシの体を飛び越え、突き出されたいくつもの短剣がハルカに迫っていた。剣先がハルカの体に届く!その直前、すべての短剣が握った手首が血をまき散らしながら、クルクルと宙を舞った。
3人の頭巾をかぶった男たちが勢いのままハルカに組み付き押し倒す。
「キャッ!」
ハルカの短い悲鳴を聞きながら、真ん中の男が無事な左手を懐に入れ、予備の小さな短剣を抜いた。大きく振りかぶった動きが止まる。ハルカは、男たちの首がポンポンと飛び、血が噴き出るのを見ながら意識を失った。