第151話 教会の少女⑨
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スザはゆっくりと目を開けた。そして振り返る。クシナもミナミも心配そうな顔で見ていた。イズと目が合う。イズは無表情だ。
「大丈夫。このダンジョン核が記憶していた映像を見ていた」
スザはそう言って、壁画の右へと歩いていく。そして右端で足を止めた。
襲い来る魔物たちと逃げる人々、その間で魔物に立ち向かう背の輝く人が描かれた前だ。そこでスザは振り返った。
「この部分はダンジョン核を作ったものの願いだ。海も山も動物も植物も、そして人々も守りたいという思い・・・これがこの絵に表現されている」
スザは壁画の前から離れ、ハルカの前に来た。
「この壁画は、このダンジョン核のマスターが作った、我々へ伝えなければならない歴史と思いだ。そして、その思いはハルカ、カイト、レン、君たち3人に引き継がれている」
3人はスザの視線を受け、目を合わせた。
「なぜ私たちなんですか?」
スザは首を振る。
「わからない。でも、君たちはこのダンジョン核からの思いを伝えられた。それはわかるだろう?」
ハルカはハッとして、
「魔法ですね」
スザは頷いた。
「3人で力を合わせ、ここの人々だけでなく、海も大地も動物も植物も守らないとね」
「待たれよ!」
禿げ頭の司教が前に出てきた。
「どこの馬の骨ともわからんやつが、勝手に決めるな!ここは壁画教の治める地!湧いて出た難民に指導者面されてたまるか!そうだろ!騎士団長!」
神聖騎士団の騎士最後の生き残り、サトシが司教の言葉を受け、隣までやってきた。
「司教。私は教祖様に従う」
「なっ!?なんと?」
サトシはゆっくりと司教に振り向き、
「我々は人々を選別してしまった・・・ここに住む人々の利権を守るために、難民を攻撃した。我々神聖騎士団は、神の言葉ではなく、この町の権力者の言葉に従って、難民を虐殺してしまったのだ・・・スザ殿の言葉が本当であれば、我々は神の言葉に逆らった。であれば身を引き、神の思いを継いだ人々こそが、この壁画教の町を導くべきだ」
「バッ!バカなことを申すな!もういい!」
司教は怒ってドカドカと足音を立てながら、そのまま祈りの部屋から出て行ってしまった。
司教を見送った後、ハルカはサトシを見つめる。
「私たちはどうすればいいのでしょうか・・・」
サトシは首を振る。
「私ではなく、この町を救い、壁の言葉を聞いた人に相談してはどうでしょうか」
サトシの言葉に、ハルカはスザへと目を移す。
「私たちは・・・」
スザはハルカの言葉を遮って手を上げ、祈りの部屋の扉を指差した。そして笑顔で歩き出す。扉の前でスザは立ち止まり、扉に手をかけて振り返った。
ハルカはカイトとレンを見て、3人でスザの後を追い扉の前まできた。スザはそれに合わせて扉を開く。
「オオオオ!」
「教祖様!」
「白の御使い様!」
扉から現れた3人に、広場に集まっていた人々は歓声を爆発させた。




