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第149話 教会の少女⑦

2021.8.10一部手直し実施しました。

流れに変化はありません。

「矢が尽きました」


従者の報告に、サトシは何も言えなかった。

魔物たちは一向に開かない門を諦め、壁を登ろうとしていた。そこらにある石を投げているが、矢もなくなっては防げないだろう。


「神聖騎士団よ!抜剣せよ!魔物にこの壁を乗り越えさせるな!」


魔物たちは壁に張り付き、その体をよじ登ってどんどんと壁を登ってくる。切り、突き、魔物を壁の外へと落としていく。しかし数が多すぎる。少しずつ乗り越えられ、壁の上での戦いが起こっていた。


「うわああ!」


騎士がかぎ爪によって体を引き裂かれ、血を吹き散らし倒れて行く。その喉に魔物が噛みつこうとした時、水の矢が魔物を貫いた。そして、


「ヒール」


少女の声が騎士たちの耳をうった。騎士の傷が癒え、立ち上がった。


「教祖様!」

「白の御使い様が来て下さったぞぉ!」

「ウオオオ!押し返せぇ!」


ハルカは壁の上を、ヒールをかけながら移動していく。レンとカイトが壁から土槍を出し、水の矢を放ちながら騎士団に加勢していた。そして監視櫓のサトシのところまでハルカは来た。


「・・・なぜ逃げなかった」


サトシの言葉にハルカは小さく首を振る。


「私だけ生き延びることなどできません」


そして小さく笑う。


「こんな私でも皆さんを少しでも救うことができるのであれば、協力するのが白の御使いの務めです」


サトシはハルカを見つめる。そして、


「もし何かあっても、魔物には何もさせない。白の御使いとしての尊厳を守ることを、この剣に誓おう」


ハルカは小さく頷き、笑顔で、


「その時は躊躇なく、お願いします」


頬に少しきらりと光るものが流れ落ちたように見えたが、サトシは何も言わなかった。


「神は白の御使いを我らの元にお下しなされた!神聖騎士団よ!力を振り絞れ!魔物を押し返すぞ!」

「オオオ!」


気力の回復した騎士団は壁の上から魔物を一掃した。しかしそれも長くは続かない。

圧倒的な魔物の数に押し込まれ、再び壁の上は魔物が溢れて行く。兵士は疲れ、ハルカがヒールをかける前に魔物によって倒されていく。


サトシの横にはハルカが、その前にはレンとカイト、生き残った少数の兵士が固まって、魔物たちに最後の抵抗を示そうとしていた。


「くそっ!くそっ!」

「があぁ」


倒れ行く兵士。ハルカはサトシを見つめた。サトシと目が合った後、ゆっくりと目を瞑る。


「神よ。もうすぐあなたの元に参ります」


サトシは短剣を抜き、ハルカの胸を刺そうとした瞬間、その手がグッと握られ止められた。


「そう言えば、結構前に誰かに言った気がした。諦めたらそこで終わりって」


黒い鎧の少年がそこに立っていた。握られていた手がびくともしない。


ギャアア!


悲鳴を上げ、血をまき散らしながら魔物たちが壁の上から地上に落下していく。

カイトの前には銀色の鎧を纏った銀髪の騎士が幅広の剣を振り下ろしていた。斬撃が延長線上の魔物を切り飛ばしていく。


レンの前には赤髪の美少女が立って右手を突き出していた。その手から炎の刃が噴き出し、魔物を切り、燃え上げさせる。

突如門の外、目の前の空間に魔物たちが巻き上げられていた。風に切り刻まれ、魔物が血をまき散らしながらバラバラになって落ちて行った。


「ミナミ!ここを守って!」

「了解ですぅ♡!」


緑色のローブを纏った少女が空から壁の上に降りてきた。茫然とそれを見る4人。


「クシナッ!」

「了解!」

「えっ!?」


4人の中の誰かの驚く声が響く中、宙に躍り出た赤髪の美少女を黒い鎧の少年が抱き、そのまま落ちることなく宙を駆ける。銀髪の騎士も同じように壁から飛んでいた。


「バースト!」

「サンダー!」

「ハアッ!」


門の左手側に巨大な爆発が発生し、門の前には無数の雷が落ちてきた。門の右手側には振り下ろされた剣の軌道上の魔物が切り裂かれ吹き飛ぶ。2人と1人は、大地に降り立った。

監視櫓の前では緑のローブを着た少女が竜巻をいくつも発生させ、生き残った魔物をしらみつぶしに切り刻んでいた。


スザは魔物の大群の背後が小さく吹き飛んだように見えた。トラ、ナナミ、ミサもイズに言われて参戦したのだろう。彼らにとっては等級を上げる、いい機会になる。これだけ魔物がいるのはシロイワの戦い以来久々だ。


「もうリザードマンなんて敵じゃないだろ?」


クシナの炎の前に、リザードマンたちは消し炭になっていく。


「油断禁物!」


再びドオオン!と音を立てリザードマンたちが粉々になり吹き飛んだ。まだまだ大群が残っている。しかしリザードマンたちは我先に逃げようとして前衛と後衛が中間地点でぶつかり、混乱していた。


「事実を言っただけなんだけど」


スザは混乱したリザードマンたちの群れに飛び込み、剣を振る。スザの足元から土槍が四方に散り、リザードマンを串刺しにし、道を作っては切り込み、斬撃を飛ばす。集団には竜巻をくらわし、雷を落とした。

ナギも流れるような動きでリザードマンの間を抜け、切り裂く。そして剣から魔力を解き放ち、吹き飛ばした。


クシナはリザードマンを炭にしてゆっくりと移動する。赤い悪魔にしか見えないだろう。離れては爆発させられ、近づけば切り裂かれ、燃やされるのだから。

半日の内に、教会の町を滅ぼそうと現れたリザードマンの大群は壊滅した。たった7人のイの国の精鋭によって。

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