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第147話 教会の少女⑤

悲鳴を上げながら、難民が我先にと門から遠ざかっていく。


「構え!射よ!」


矢が風切り音を上げながら、最後尾の子供たちに迫る。


振り返りながら走る少年の目に矢が迫り、突き刺さる・・・と思われた直前、土壁がグゥ!と立ちあがった。それは道幅すべてに渡っていた。高さ2mの土壁に矢が突き刺さり、逃げ遅れた子供や難民たちを矢から防いでいる。

土壁を背に姿を現したのは、2人の少年だった。


「ん?あれは・・・?」


騎士サトシは2人の少年たちに見覚えがあった。


「ハルカ!どうしてだ!」

「ハルカ!俺たちは仲間だろ!?なんでこんなことをするんだ!」


ボロボロの服を着た、薄汚れた少年たち。


「ハルカと共に壁画の前に倒れていた2人か!ハルカはレンとカイトと呼んでいたな」


サトシは理解したと同時に弓に矢を番える。引き絞り、エイヤ!と矢を放った。

矢はサトシに近い側の少年レンへと向かう。それがバシャッ!と音を立て真っ二つに折れ、地に落ちる。


「カイト!」


サトシに狙われたレンは、隣のカイトと呼んだ少年に叫びながら、目で合図を送った。


「レン!わかった!」


レンによる魔法で土がせりあがり、頷くカイトとレンの2人を覆う。身を守る土壁の覆いには、周囲を見渡せるための隙間と指が出るような穴が無数に開けられていた。その隙間から何かが飛び出て、


「ぎゃぁ!」


壁の上の兵士が一人壁の内側に落下した。その隣が同じように悲鳴を上げ、同様に落ちていく。


「水!水の矢だ!」


落下した2人の傷跡を見た兵士は、そう叫んで壁の上の兵士たちに知らせた。


「敵は2人だ!押しつぶせ!」


サトシは門の内側の弓箭部隊に指示を出す。

背の盾と弓を取替え、盾を構えて腰の剣を抜刀した。神聖騎士団は騎兵にも弓箭兵にも歩兵にも状況によって変われる、選ばれた兵士の集まりだ。サトシの指示を理解した騎士たちは、盾を並べ、縦列を作った。


「開門!開門!」


ギギギ・・・と音を立て門が開いていく。


「ウオオオ!」


全開するまでも待つこともなく、兵士は盾を構え前進を開始した。カイトはゆっくりと迫ってくる兵士に水矢を当てるが、盾を貫通することはできない。


「くそっ!」

「任せろ!」


レンは意識を集中される。そして、手を押し出した。


「出でよ!ゴーレム!兵士たちを叩きのめせ!」


兵士たちと土の覆いの間で地面が盛り上がり始めた。それは徐々に形を作り、3体の土ゴーレムとなった。

身長は2m。短い足に地面につく長さの腕。顔はただの土の塊だ。


3体はのっしのっしと歩き、盾兵の前で腕を上げ、ブン!と力いっぱい振り下ろす。ドコッ!と音を立てて腕は土にめり込み、土をまき散らしながら地面に穴を開けていた。でも歩兵はその攻撃に当たることはなかった。


「動きが鈍いぞ!」

「回り込め!」


盾を構えながら、ゴーレムの側面、背面へと回り、散らばりながら剣を叩きこむ。


「やばいぞ!」

「やってるよ!」


レンに言われるまでもなく、カイトは水矢を放っていたが、ゴーレムの攻撃部隊を盾兵が守り、水矢は盾に弾かれるばかり。

2人の魔法攻撃は、神聖騎士団に何の効果も上げていなかった。グズグズに切り刻まれた土ゴーレムはとうとう地面に倒れ、土くれに戻って行った。


そしてレンとカイトがこもる土の覆いに騎士団の攻撃が開始された。

レンは土槍を生み出し、盾兵を攻撃したがこれも阻まれ、とうとう覆いを突き破られた。レンもカイトも首を掴まれ、覆いから引きずり出された。手足も胴体も押さえつけられ、兵士2人が剣を天に掲げた。


「待て!」


騎士サトシが監視櫓の上で待ったをかけた。


「なぜですか!?」

「黙れ!」


兵士の不平にサトシは手で押さえるようなしぐさをしながら、キョロキョロと周囲をうかがっていた。


「どうされましたか?」


従者が何かをうかがっているサトシに声をかけた。


「何か聞こえないか?」

「えっ?」

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