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第141話 裂き乱れる兄弟愛⑰

またブックマークを頂きました。

ありがとうございます。

励みになります。


2021.8.9一部手直し実施しました。

流れに変化はありません。

ドオオン!


大きな音を立て、門が締まった。簡素な服。足元には投げられたズタ袋。


ショウタとショウジは、ズタ袋を拾い歩き出す。袋の中には短剣と水筒、食べ物が少々。

2人は短剣を腰に差し、どこへ向かうともなく歩き続ける。


戦場となった門の周辺から平原は、まだ片づけ終わっておらず、魔物の死体の半分程度は捨て置かれたままだった。すでに日は落ち始め、今から夜の帳が下りてくる。


2人は西に向かっていた。理由はない。トクジュの村、ショウジの町があるので、魔物が出る危険性が低いと本能でわかっているのだろう。

2人は道から少し北に出て、さらに西へと進み続けた。そして平原の真ん中に座り、木を集め、火を起こす。すでに夜。遠くに村や町の明かりがぼんやりと見えていた。


「兄者、これからどうする?」


ショウジは焚火に木を放り込みながら、一緒に火に当たる兄に問いかけた。


「どうするかな・・・お前の考えは?」


ショウジは兄の顔を見る。そして首を動かし、遠くに見える自分たちが大きくした町や村の明かりへ視線を向けた。


「もう、ここに俺たちの居場所はない。・・・どこかに居場所を探すしかないが・・・」


背後に何かを感じたショウジはハッと立ち上がり、振り返った。


「何だ!?」


ショウタもつられて立ち上がる。


ギャギャギャ・・・


背後から鳴き声?笑い声?が聞こえる。


「くそっ!ゴブリンか!」


ショウジはシャッ!と短剣を抜く。

暗くてわかり辛いが、5匹はいるか?


ショウジは兄を背にかばいながら、ゆっくりと後退し始めた。

焚火に照らされ、ゴブリンが姿を現す。手にはさびた剣と盾。股間しか布で隠していないので、防御力はなさそうだ。


戦おうと低く構えたショウジは、その奥に更に影を見た。


「逃げるぞ、兄者。3、2、1行け!」


2人はゴブリンたちに背を見せ、一気に走り出す。目指すは一番近いたくさんの明かり。絶望的な距離だ。


「くそっ!くそっ!」

ギャギャギャ!


息を切らして走る2人。喜ぶ声がどんどん大きくなる。


「あっ!?」

「兄者!?」


ドオッと派手にこけたショウタに、ショウジは急停止して戻った。近づこうとするゴブリンに短剣を振り、威嚇する。


「俺はここで死ぬのか?」

「立て!兄者、立て!一緒に戦おう!あきらめるな!」


ショウジは立てない兄を背にかばいつつ、包囲しようとしているゴブリンに短剣を振り続ける。


「俺は何のために生きてきた?自分の外面ばかり気にして・・・」

「立て、兄者!あきらめたらそれで終わりだ!」

「そうだ・・・生まれ変わったら楽しいことを、人々の役に立つことをできたらいいなぁ」

「立て!あきらめるな!」

「そうだね。あきらめたら終わりだね」

「えっ!?」


囲んでいたゴブリンの動きが突如止まり、血を噴き出しながら首が飛ぶ。さらにその奥に火の壁が立ちあがり、さらに進んできていたゴブリンたちが炎に巻かれ、踊り、転がっていく。

炎が背後に揺らめく中、2人の前に赤黒い影が立っていた。ビュッと剣を振り、血を落とした後、納刀する。


「ショウタ殿、ショウジ殿。2人とも俺たちが来なかったら、ここで死んでいたはずです」


いつの間にか、2人を囲んで5つの影が立っていた。

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