第11話 イの塔の街解放作戦⑤
2021.8.4一部手直し実施しました。
流れに変化はありません。
頃合いを見て感謝の輪から抜け出したスザは、イズの待つスクリーンのある部屋に戻ってきていた。
イズは敵の会話や探知した情報をまとめ、スクリーンに映し出していた。
・女子たちは馬車に乗せられ、連れ去られた
・連れ去られた先は、“カナヤマ”=ダンジョンの町
・人質として連れて行ったことからすぐさまどうこうされることはない
「焦って疲れた中、夜通し追いかける必要もなさそうね。と、いうことでこれを飲みなさい」
イズから白い薬を受け取った。
「眠り薬よ。興奮して寝れないかなと思って」
起こしてあげるから心配するなと言われ、スザは薬を飲んだ。横になった途端、スザは眠りに落ちた。
イズに起こされた翌朝、街の炊き出しで朝食を取り、再びスクリーンの部屋に戻ってきた。
「まずは現状確認から」
イズの言葉に“ブック”を呼び出し、告げる。
等級:20 補正:30(暗殺者) 力:44(74) 生命力:49(79) 気力:59(89) 魔力:23(53) 知能:80(110) 体力:62(92) 技巧:91(121) 均整:93(123) 機敏:95(125) 徳:32(62) 運:101(131) (数字)は補正後
選択可能職業数:2(選択:1 暗殺者(+2) 選択2:未設定) 新規取得職業:英雄、死神 選択可能能力:6/10 常時発動能力:0/2 配下:0/10 補正:0
「すごいわねぇ。特に“英雄”と“死神”なんて職業、今まで出てこなかったものが初めて出てきたなんて」
実際に選択して確かめようとの話になり、スザは職業を暗殺者からまず英雄に変えた。
選択可能職業数:2(選択1: 英雄(選択:1 未設定)、選択2:未設定) 補正:50(+0)
「これって、英雄の職業と一緒に他の職業も設定できるってことよ。だから、魔法使いの英雄とか剣の達人の英雄とか暗殺の英雄とかになれるのよ」
「・・・暗殺の英雄って・・・」
「そりゃそうよね。英雄って職業じゃないもの。称号だもんね。実際は英雄を設定した後の選択した職業の英雄っていうか専門職っていうか、どーんと突き抜けた職業になれるってことなのよ」
イズは楽しそうに右手をどーんと斜め上に突き上げていた。スザは置いてけぼりだ。
「補正も破格の“50”でしょ。その値って、その道を究めた人がもらえる値よ。それがはじめからなんてね、すごいわ。さらに後に選択した職業の補正も加わるような設定よね、それって」
(+0)のところですね。そのようです。暗殺を設定したら、50+30の“80”ですね。暗殺の英雄の誕生です。おめでとうございます。
「なぁに他人事なのよ。ゴミのあんたがすんごくなって、死ににくくなるのよ、わかる?」
オラオラ!て感じでスザの目の前に人差し指を突きつけ、圧をかけてくる。
急にお!?って表情に変わったイズは、
「ちょっと、“英雄”ってところを長押しして」
「長押し?」
こうやるのよと言いながら、人差し指でスザの額をじっと押しつづける。
わかりましたと返事を返して、ブック上の文字“英雄”を教えてもらったように長押しした。なんかあぶらぎっしゅね・・・なんていいながら、人差し指を服でふいているけど無視しよう。
「取得条件:初陣で敵を30人以上倒し、味方を救い出す。もしくは占領地を解放する。設定効果:等級上昇時、職業による能力の上昇値が最大値で加算される」
読み上げた後、2人でスゲーと棒読みしていた。次!つぎぃ!とせっつくイズ。
“死神”を長押しした。
「取得条件:等級20に到達するまでの間に、連続で30人以上を殺す。設定効果:殺害された死体を見た敵は、恐怖で一定時間能力が30%低下する。殺害した死体を見た味方は、士気が上がり一定時間能力が30%向上する。一定時間後も新たな死体を見れば効果が持続する。」
再び2人でスゲーと棒読みした。殺し続ければ、永遠に影響を与え続けることができるのだ。実際に“死神”へと職業を変更した。死神も称号のようで、英雄と同じように職業を設定できる。でも英雄と違って、死神自体の補正値はない。設定した職業に死神の効果を付け加えるのだ。もちろんそれだけで十分に強い。
「“英雄”を職業の一つに設定することはいいわよね」
もちろんスザは大きく頷く。
「何の職業を“英雄”にぶら下げるかは、あとで話し合いましょう。で、“死神”よね。どう思う?」
「いや、もう一つに付けるべきでしょ。俺が戦えば戦うほど敵は不利に、味方は有利になるんだから」
「・・・まあ、あんたが前線で戦わなければならない時は必ず設定すべきね。だから、連れ去られた少女たちを救うときは、もちろんもう一つの職業に設定しましょう」
スザはもちろん大きく頷いた。でもイズからは、少女たちを救い出してからまた考えればいいか・・・というボソッとしたつぶやきが聞こえた。
「能力はまたあと考えましょう。それより、配下をつけましょう、配下」
スザの頭に、ユウの顔が浮かんだ。
「配下ってどうすればつけられるの?」
「さっきの中に配下って項目があったでしょ。そこを選んでみて」
ブックの1枚目、下にある配下:0/10をポチっと(音は鳴らないけど)押した。右の空白に
配下1:未設定
という文字が出てきた。未設定を押すと、名前がずらりと現れた。
「赤い字の名前の子が、あんたの配下になれる。等級があんたより低くて、あんたが信頼し、あんたを信頼している子たち。もしくは等級信頼関係なく、あんたに一方的に心酔しているかよ」
おお、やっぱりユウは赤かった。あれ?クシナの名も赤い。
まず配下1:ユウを設定すると、職業選択が出てきた。
「ああ、配下の職業をこっちで勝手に選べるのよ。本人はもちろん知らないわよ。で、あんたとは違って能力値はわからないので、補正値の高い職業を設定して」
職業の補正値とは違い、一番高い能力値の1/10が補正値として加わるのだそうだ。この割合は、信頼度や心酔度によって増えていくらしい。最低は1/10だそうです。
戦士か騎士が一番高く、3だった。能力は力。小数点以下は切り捨てらしい。イズと話し合い、騎士にした。ブック内の職業のほぼ全ては設定できるが、本人の能力値によって設定条件がある場合は無理だった。英雄も死神もダメで、どうもスザ個人のみが設定できるようだ。
配下2:クシナを設定、イズは魔法使いにしろというので、言われたとおりにした。補正値は11で、魔力。すげーな、元の能力は110から119あるってことですわ。
「ね、こうやって配下を増やすと何もせずに職業の最大補正値より上を加算できるってこと。すごいわねぇ、ブックの力って」
「ハイ、スゴイデス」
2人でパシパシと拍手をした。でもまあ実際にすごい。2人の補正値ですでに14が更にすべてに加算されるってことだ。つまり等級が5くらい上がったのと同じ効果だ。
「で、更にすごいのが、あんたの能力も補正値として配下に加わるのよ。最低は1/10、配下の人たちと同じように一番能力の高いものがね」
て言いながら、なぜかプーと吹き出した。能力で一番高いのが運だなんて・・・うけるぅって言ってます。何?うけるぅって。
配下:2/10 補正:14 付与補正:10(運) これ、死神に暗殺者を設定してます。
「さあ残った英雄問題です」
問題って・・・
「一つの職業設定は暗殺者と死神だから、昨日と同じ戦い方はできるってことよ。じゃあ、どういう戦い方を足していけばいいかなんだけど・・・」
「相手の本拠地に乗り込むってことだよね」
イズは頷く。
「だったら、一気に大人数を圧倒できるものが欲しいんだけど・・・」
「まあねぇ・・・それは私も考えた。あんたが欲しいのは、魔法でしょ」
もちろんといった感じで、スザは大きく頷いた。
「でもねぇ、今すぐの戦いでは能力が少し低いのよねぇ。魔法使いになれるように等級を上げてからならいいけど、そんな余裕があるのか・・・魔法使いなら、すでにあっちにいるでしょ」
はっとするスザ。
「クシナを救出して、一緒に行動し、彼女に大人数を相手にしてもらえばいいと思うのよ、私は」
「・・・そうだね、目的はあくまでも人質の奪還だから、それを達成すれば大人数の相手はできるわけだ。イズの考えわかったよ」
金髪美少女はにっこりと微笑む。
「で、私に考えがあるのよ。あんたの暗殺者という搦め手の能力を最大限に生かす職業と能力で、大人数でも相手ができるって方法のね」
スザは、昼飯をユウや街の少年たちと取り、ユウに街のことを頼んだ。もちろんユウには配下のことや職業のことなどは一切言っていない。職業の影響があるのか、ユウは「任せておいて」と胸を張ってスザを送り出した。
南門で女性たちに囲まれた。自分の娘を助けてと囲む女性たちに、保存食を掴まされる。なんとか女性たちをなだめ、必ず連れて帰ると約束し、スザは一人イの塔の街を離れた。
目指すは、少女たちが連れ去られたダンジョンの町“カナヤマ”。
イの街を取り戻した翌日、昼のことだった。
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