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第136話 裂き乱れる兄弟愛⑫

2021.8.9一部手直し実施しました。

流れに変化はありません。

赤髪の美少女が手を上げると、その方向にいくつも炎の壁が立ちあがる。


「ナギさん!ここを頼みます!」

スザは炎の壁から抜き出てゴブリンの集団へと飛び込んだ。


炎の壁の間から、赤い筋が広がっていく。直線から丸い円を描き、時には扇方に赤い筋が広がる。監視櫓のトクジュにはそう見えていた。


「トクジュ様!矢の回収が終わりました!」


下から報告がされた。頷き、トクジュは門の外に目を向ける。門の周りにはゴブリンは居らず、3人が門の前を守っていた。赤い筋は奥へ奥へと進んでいく。そこにはオーガの軍団がいた。


「オーガはスザに任せておけばよい」


イズと目を合わせ、トクジュは頷いた。


「弓兵は矢を補充して壁から離れているゴブリンを叩け!槍兵!5人組2段、門の近くからゴブリンどもを突き崩せ!押し返すぞ!」

「オウッ!」


トクジュは監視櫓から降りようとする。


「どこに行く?」


イズの問いに、


「攻められているのは私の村です。私が戦わずに、誰がこの村を守るために戦いましょうか」


笑うトクジュにイズは首をすくめた。


「マキ!」


降り立ったトクジュは、側近のマキを呼んだ。


「この西門から出て、東門のゴブリンどもを門と挟み撃ちにするぞ」

「わかりました。弓兵の半分は矢を持って東門へ行け。お館様と呼応して内と外から叩くぞ!」

「ハッ!」


槍兵と弓兵の混成部隊をトクジュはマキとともに率い、西門から出てきた。クシナと目の合ったトクジュは、


「東門を内と外で攻め、解放します」


ナギが頷くのを見て、クシナは、


「わかりました。ミナミ!」

「はーい♡」


手を上げてクシナの側にやってきた。戦場ではないと勘違いしそうな可愛い返事だ。


「トクジュ殿を守って」

「えー」


頬をプゥッと膨らませたミナミに、ため息をつきながらクシナは近づき、ゴニョゴニョと何やら呟いている。パッと笑顔に変わった。


「わかりましたぁ。スザ様の未来の妻、ミナミがトクジュさんを守りまーす♡!」


ルンルンとトクジュに近づくミナミの後ろで、クシナが深いため息をついていたのをトクジュはとりあえず見ないことにした。


「トクジュさんは私が守りますので、気にせず戦ってくださいね」


満面の笑みの後ろで、プリンとポニーテールが揺れる。少し赤くなりながら、


「は、はい。宜しくお願い致します」


トクジュはカクカクとぎこちなく硬い返事を返した。


「ン!ゴホン!」


20歳を超えている側近マキは、大きな咳払いをして、


「東門を解放するぞ!」

「オウ!」


ゴブリンどもを槍で突き崩しながら壁に沿って東に進み始めた。

血しぶきをあげながら、ゴブリンは倒れる。すぐさまその隙間を埋めようとゴブリンが現れ、槍で貫かれ倒れる。それを繰り返して行くうちに隙間を埋めるゴブリンは少なくなり、トクジュたちは東門へと近づいていった。


東門周辺からの矢と槍に突き立てられ、ゴブリンたちは潰走を始めた。その流れが滞る。そのゴブリンの集団に天から、ガガッピシャッ!と落雷が降り注ぎ、ゴブリンたちは黒焦げになりながら地に倒れ伏した。

その奥に立つ一つの影。見渡す限りの平原には、黒い鎧を纏った少年しか見えなかった。


「うおおお!」


トクジュの周辺から喜びの声が上がり、それに呼応するように村からも声が響き渡った。

トクジュ、スザたちは東門から入ると、村人の歓喜の声に包まれた。


「あれは!?」


村人の一人が空を指差す。


「ゴーレム鳥!?」


村人の上をクルクルと旋回したゴーレム鳥は、トクジュの肩へと降りてきた。文が足に括り付けられている。トクジュはそれを取り、読み始めた。


「スザ!」


村人の壁が分かれ、金髪の美女が姿を現した。


「ツクシマから連絡が来たわ」


イズの声に、文を読んだトクジュが顔を上げて頷いた。


「今、ショウジ兄から連絡が来ました」

「同じようね」

「ええ。ショウジ兄の町が魔物に攻められていると・・・」


トクジュの言葉に、さらにイズが追加する。


「ショウタの町もね」


スザは黙ってトクジュを見つめている。どう判断するかを見ているのだ。


「ショウジ兄からの連絡は、ただの事務連絡です。しかし・・・」


言葉を止め、トクジュはスザを見つめた。


「ショウジの町もショウタの町も、救います。国主として当然の行いをします」


スザは頷き、


「わかった。さあ、国主として指示を出してくれ」


トクジュは頷いた後、東門の監視櫓へと登った。そして見上げる村人、兵士に向かい、


「この村の魔物は壊滅させた!だが!他の2つの町が今、同じように魔物に攻め込まれている!私は父テルより、この社の国の後継者に指名された!」

「ウオオオオ!」


村人、兵士の声に、両手で落ち着けと動かし、


「私は!社の国の後継者としての使命を果たす!」


右手を握り、グッと天に掲げた。


「2つの町から魔物を駆逐し!人々を魔物の脅威から救い出す!我に続け!」

「オオオオ!」

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