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第135話 裂き乱れる兄弟愛⑪

またブックマークを頂きました。

ありがとうございました。

がんばります。

トクジュはツクシマに村へと戻ることを告げ、船にやってきた。すでに兄2人の船は港を出て、二手に分かれ、自らの町へと帰っている。

トクジュの船の前には側近と、スザたちが待っていた。


「すみません。説得しきれませんでした」


スザたちに頭を下げながら、船に乗り込むトクジュを追って、スザたちも船に乗り込んでいく。トクジュはそれをポカンとした表情で見ていた。


「なぜ船に乗るのです?」


立ち尽くすトクジュを奥へと押しながら、


「5人乗るのだから、もっと奥へと行ってくれ、トクジュ殿」

「なんで?」


スザは無理やり席に座らせ、おやっさんに船を出すように促した。一同を乗せ、船は港を離れる。


「なんでって・・・当たり前だろう。魔物が攻めてきたんだから殲滅するんだ」


スザの答えに、全員が頷いた。


「魔物ですよ!死ぬかもしれないんですよ!?」


大声を上げるトクジュに、スザは首を傾げた。


「トクジュは命を懸けて皆を守るんだろ?」

「はいっ!命の限り、皆を守ります!」


スザは笑った。


「じゃあ、俺たちも同じだ。命を懸けて皆を守るんだ」

「皆さんには関係のない人々ですよ!?」


スザは、ハァと小さくため息を吐いた。


「トクジュの大切な人たちだろ?」


トクジュは頷いた。


「なら、俺たちにも大切な人たちだ。トクジュが国主として守りたい人々を俺たちも守るだけだ。まあ、この国の人々もすでに俺たちイの国の仲間なんだけどな?」

「そう。仲間を守るのは当然よ。イの国の仲間になることがどれだけ良いことか、私たちの全力を見ておきなさい」


イズがでかい胸を張って言っている。


戦わないんじゃなかったっけ?

『ん?そうよ、私は見物。あんたたちは全力を出しなさいな』

「と、言うことなんで、これを主導するのは国主であるトクジュだ。俺たちがどう動けばいいか、指示を出して欲しい」


トクジュは戦塵に包まれる村を海から眺め、そしてスザに視線を向け、大きく頷いた。



「トクジュ様だ!」

「トクジュ様が戻られたぞ!」


港に到着し、急いで船から降りたトクジュたちを村人たちが歓声で迎えていた。


「必ず守ります!だから信じて、落ち着いてください!」


そう何度も叫びながら、トクジュはスザたちを連れて東西にある門のうち西門へと向かった。魔物が殺到しており、兵士の疲弊度が高いとの報告があったからだ。

門の横の監視櫓の上にトクジュとスザが上がる。


門周辺にゴブリンが殺到しているが、武装が貧弱なせいで門も壁も大きな損傷は受けていない。しかし数が圧倒的に多い。千を超えているようだ。その後ろにはオーガらしい巨大な魔物の姿も数多く見える。攻城兵器を持たずに、ただ数で押しているだけなので、門や壁が無事であれば時間の経過と共に倒すことは可能だろう。


「トクジュ様、このままでは矢が足りなくなります」


門の守備隊長が監視櫓に登ってきて報告してきた。


「門を開いて突き崩す間に矢を回収できるか?」


隊長は首を横に振る。


「今出て行くために門を開くと、数に圧倒されて町中に入り込まれてしまいます」


トクジュは門の外に殺到するゴブリンを見ながら考える。


「トクジュ殿」


スザの声に、トクジュは視線を向ける。


「まずは俺たちの力を見せるから、それを見てどう俺たちを使うか決めたらいい。クシナ、ミナミ、ナギさん!」

「えっ!?」


スザは高い監視櫓から下にいる3人を呼んだ後、トクジュが驚く中、高さ3mの監視櫓から飛び降りた。トクジュたちが見ている中、フワリと着地する。4人でごちょごちょ話している間に、イズが監視櫓に登ってきた。


「トクジュよ」

「はい、イズ様」


イズは、スザたちを見ながらトクジュに話しかける。


「我らの力を見て、そしてすぐさま次の手に移せるよう指示を早急に出すことだ」


スザがクシナたちと目を合わせた後、イズを見上げ小さく頷いた。


「驚かず、直ぐに矢を回収せよ!とな。忘れるな。さあ、始まるぞ!」


スザたちを見ていたトクジュは、地面から瞬時に消え去る4人に、驚き慌てる。


「ほら!」


イズはトクジュの肩を軽く小突き、宙を指し示した。4人はマントをたなびかせながら宙にいた。

宙で舞っているようだとトクジュは思った。


門の前に竜巻が発生し、攻め寄せていたゴブリンが血をまき散らしながら、吹き飛んでいく。その奥では爆発音が響き渡り、ゴブリンたちが炎に包まれながら粉々に吹き飛んでいた。炎と竜巻の間では、突如ゴブリンたちが切り裂かれ、血しぶきを上げる中、竜巻で生じた空間に4人がゆっくりと降り立つ。


「イの国の国王スザ!」


イズの掛け声を待っていたかのように、4人を囲んでいたゴブリンたちが突如宙に飛び上がり、血を噴き出しながら固定された。地面から無数の土槍が生え、ゴブリンたちを貫いていたのだ。その範囲は半径10mを軽く超えている。土槍が消え、4人の周りには魔物がいなくなった。


「さあ!兵士たちよ!門の前から魔物が消えたぞ!」


イズの大声に、トクジュはハッ!と正気を取り戻した。


「兵士よ!門を開け、矢を回収せよ!」

「オオ!」


門を開け、飛び出た兵士たちは、斬撃によって体がバラバラに飛び散るゴブリンたちを見た。


「焦らずに矢を回収してください」


赤髪の美少女に声をかけられた兵士たちはドギマギしながら、丁寧にゴブリンにつき立った矢を抜いていった。

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