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第133話 裂き乱れる兄弟愛⑨

またブックマークを頂きました。

ありがとうございます。

励みになります。

「ツクシマ様!ああ!スザさん!」


トクジュは部屋に現れたツクシマとスザたちの姿を見て、安心した。


「私だけが、このツクシマ様の謁見部屋に瞬時に移動させられましたが、他に誰もいないのでどうしたのか心配しましたよ」


トクジュは跪き、ツクシマが前を通って守り神の椅子に座るのを見送った。しかし、ツクシマはその椅子には座らず、横に立つのみ。

トクジュは首を傾げた。


「どうされたのですか?」


スザたちは跪くトクジュの横を通り、椅子の横まで行った。皆が止まる中、金髪の美女だけがそのまま進み、ツクシマの椅子にスッと座る。


「えっ!?」


トクジュが驚く中、ツクシマが金髪の美女に跪き、臣下の礼を取った。


「ツクシマよ、なおって良い」


金髪の美女の言葉にツクシマは頭を下げた後、立ち上がり、椅子の横についた。


「さて、トクジュよ。自己紹介しよう。我が名はイズ。イの国の守護者にて、イの塔のダンジョンマスターである」


トクジュは跪いたまま、顔を上げているが、ポカーンとした表情のままだ。


「先ほど、ツクシマと話をして、このダンジョン社及びダンジョンマスターは我が配下となった。ダンジョンマスター代理として、ツクシマをこのダンジョン社に任命したので、今まで通りツクシマを守り神として協力を仰げばよい」


何のことかわからず、トクジュは反応できない。


「トクジュ。返事を」


ツクシマの言葉に、ハッとしたトクジュは、ガバッと頭を下げ、


「はいっ!ツクシマ様を今まで通り守り神として崇め、ご指示に従います」


イズはニコリと笑い、椅子を立つ。イズはツクシマに椅子を譲り、スザの隣に立った。


「守り神として、この社の国をどうしたいのか、ツクシマよ、その考えを我々に示して欲しい」


イズの言葉に、ツクシマは一礼した後、椅子に座り、トクジュを見ながら話し始めた。


「私は、私の可愛い子供たちが平和に暮らすことを望んでいます。もちろん、トクジュたちダンジョン踏破者の子孫たちだけではなく、この国に暮らす人々すべてです。そのためには魔物を一掃し、人々を豊かにできる人こそ国の主になることが必須だと思っています」


そう言った後、ツクシマは目を瞑り、小さく首を振る。


「しかし本来であればテルの後を継ぎ、人々を平和に導くはずの人間が、己の欲と自尊心のみのために、この国の実権を握ろうと争っています。この争いはこの国の人々を亡びへと導くものになるでしょう」


ツクシマは閉じた目を開き、トクジュを見つめた。


「それは絶対に阻止しなければなりません。殺せと言っているのではありません。その地位に値しない器であれば、その地位に相応しい器へと変え、外された器には、その器に合った地位を与えれば良いのです。この社の国の国主に値する器。つまり自分より人々を優先し、この国の人々を平和へと導く者。今までの統治や人々への対応などを見て、私は、トクジュあなたが相応しいと思っております」


トクジュはツクシマの視線を受けた後、ガバッと頭を下げた。


「ありがとうございます。非才なる身ですがツクシマ様のご期待に応えられるよう、全身全霊を持ってこの国を平和で豊かな国に致します。どうぞツクシマ様、守り神としてお導き下さい」


ツクシマは、笑顔で大きく頷いた。そして右手に立つイズを見る。


「イズ様。私はあなたの配下となりました。あなた様の恩恵もこの社の国に恵んでくださるようお願い致します」


ツクシマが頭を下げるのを見ながら、


「もちろん、私はこの社の国もイの国の一部として繁栄させることを約束しよう。イの国の一部になったからと言って、要求することはない。我々が行う統治に参加して、意見を出し、この国に危機が来れば共に助け合うことを期待する」


イズは隣のスザを見た。スザは頷き、


「私、スザはイの国の国王として、この国の内部での格差が生じないよう、イの国に行ったすべてのことを仲間になった国に行うことを宣言する。一つ、道路の建設。一つ、村や町の建屋や壁などの建設。一つ、国内の自由な移動及び輸送手段の提供。一つ、魔物の一掃。他にも必要があると思うことは各所と意見を交換しながら実施していく。時間がかかるかもしれないが、必ず実施することをイズ様にかけて誓う。トクジュ殿」


トクジュは頭を上げ、スザを見る。


「我々はあなたがこの社の国の主となることに協力する。しかし、それはトクジュ殿の全力を注いで行ったと我々が判断した後のこと。我々の武力を背景にこの国の主になったとしても、それは恒久の平和をもたらすとは考えにくいからだ。しかし、我々は常にあなたの後ろに立ち、あなたを支えることを約束する」


トクジュは大きく頷き、笑った。


「わかりました。皆さんのご期待に沿えるよう、全力でこの社の国の主になってみせます。ご照覧あれ」



「ショウタ様!」


ショウタは、息を切らし部屋に入ってきた部下に、地図から顔を上げた。


「今、作戦会議中だぞ。急ぎの案件なのか?」


側近たちと、スザを取り込んだ後、どのようにショウジを攻めるかを話し合っていたのだ。


「ゴーレム鳥が書状を持ってやって来ました」


ショウタはその書状を受け取り、開いた。



「社まで来いと・・・」


同時刻。ショウジも側近からゴーレム鳥で運ばれた書状を開き、読んでいた。


「なぜ、ツクシマ様は突然来いと言われているのですか?」


側近の質問に、書状を渡しながら、


「後継者について、話し合いの場を設けるそうだ」

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