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第132話 裂き乱れる兄弟愛⑧

社から続く、木の床。この上に足を一歩乗せたところで、スザたち5人は巨大な部屋に移されたことがわかった。部屋の中だが、奥には巨石が並び立ち、草原が広がっている。


「ようこそいらっしゃいました」


奥の巨石群から、ゆっくりと少女が姿を現した。

白い小袖に緋色の袴。黒髪の少女は立ち止まり、お辞儀をした。


「私は守り神ツクシマ。皆さん風に言うと、ダンジョンマスター、ツクシマです。あなた方ですね、西の巨星を落としたのは・・・」


クシナとミナミが顔を合わせる。


「キドウマルのことだね?」


イズの声にツクシマは頷く。


「そう、我々だ」

「わかりました。私の守護と戦って頂けますか?もちろん、いやだと言っても戦ってもらいますが」


イズはスザを見て頷き、一番後ろまで下がる。スザたちは基本戦闘隊形を取った。


「ああ、この戦いも皆さんだけをここに導いたのも、トクジュは知らぬことです。私の独断専行ということをお伝え致します」


ツクシマは頭を下げた。と、その瞬間背後の空間が割れ、巨大なものが飛び出してきた。


ズドオォン!


音と土煙を上げ、姿を現す。額には巨大な魔石。前に突き出た2本の角から上に逆ハの字に後ろへと流れる角、四つ足。頭を低くし、今にも突進するように構えた。全長5mを超えた灰色の鹿だ。


「では、勝負です。行きなさい、私のゴーレムよ!」

「ンギイィィィ!」


ゴーレム鹿は雄叫びを上げた瞬間、スザたちの目の前にいた。突進した勢いを乗せて、頭を振り上げる。


ドコォ!

「ナギ!」


宙に吹き飛ばされたナギは、体の前に構えていた丸盾をパッと開いた。右手にはすでに剣が握られている。足も伸ばしたナギは大きく回転しながら空中で再び両足を縮め、素早く伸びる。まるで空中を蹴ったかのように、ドンッ!と向きを変えた。


両手で剣を握り、一気にゴーレム鹿に突進して背から腹に突き抜けていた。


「ギャアアア!」


鹿は叫び声を上げながら、よろめく。

そこに一陣の風が吹いた。風は鹿の首を通り抜け、ドンッと地上に姿を現す。


地上から立ち上がり、顔の前に掲げていたアヤメの剣をビュッと振り下ろしたのはスザだ。その背後でゆっくりとゴーレム鹿の首がずれ、ドオン!と音を立てながら地面に落下した。胴体もその後を追うように、ズズンン!と横倒しになる。


勝負は一瞬でついていた。

ゴーレム鹿は地面に吸収されていく。その側を通り、ツクシマは地面に片膝をつき、頭を垂れた。その前には金髪の美女イズが立っていた。


「あなた様のために、このダンジョンを捧げます」


イズは黙って頭を垂れ続けるツクシマを見下ろしていた。


「いいのですか?」


ツクシマは、そのまま頭をさらに下げた。


「ひとつだけ、お願いがあります」

「何でしょう」

「社の国をお守りください。私は数百年前にダンジョンの攻略者である、この国の建国者と国の守り神となるという約束をしております。どうか、そのお力でこの地に平穏をもたらせてくださいますようお願い致します」

「わかった」


イズはツクシマの頭に手を置いた。


「はい。完了しました」

「えっ!?・・・私を消さないのですか?」


イズはツクシマの頭から手を放した。ツクシマは頭を上げ、目を見開いてイズを見上げている。


「これであなたは私の管轄に入りました。これまで同様、この社の国を守ってください。それが私への忠義の証となるでしょう」


イズは笑顔で、茫然としているツクシマの手を取り、立ち上がらせた。


「何かあれば、連絡をしてください。協力は惜しみません。それは、この者たちも同じです」


スザたちはイズの元に集まり、頷いた。


「我々はイの国のものです。イの国は、このダンジョンマスター、イズが守護する国。イの国は魔物を倒し、人々が平和に豊かに暮らしていけるよう、開発をしております。イの国から南下して、ここまで魔物を倒し、魔物から人々が解放されるよう動いてきました」


スザの言葉にクシナ、ミナミ、ナギが頷く。


「この国は豊かですが、危機が訪れようとしているように見えます。我々は魔物を倒し、この国の平和が続くように協力を惜しみません」


スザの言葉に、ツクシマは頭を下げた。


「ありがとうございます。私もこの社の国の平和が続くことを願っております。しかし後継者争いが起こり、この国に分裂の危機が訪れております。皆さんの、そのお力をお貸し下さいますようお願い致します」


スザはクシナ、ミナミ、ナギと目を合わせ大きく頷いた。


「もちろんです。この国の平和のために、協力をさせて下さい」


頭を上げたツクシマは笑顔に包まれていた。

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