第127話 裂き乱れる兄弟愛③
2021.8.9一部手直し実施しました。
流れに変化はありません。
「ガアアア!」
ゴブリンたちをかき分け、オーガたちが兵士に迫ってきた。
そして巨大な大剣を振りかぶる。
ドオオン!
激しい爆発音が響き、手前のオーガが吹き飛ばされた。炎に包まれ、土の上をゴロゴロと転がっている。体に付いた火を消そうとしているようだ。
オーガ2体も、ゴブリンたちも兵士たちも突然のことに動きが止まった。
「魔物たちを殲滅します!」
少年の大声に兵士たちは左手を見た。パッと赤く光り、
ゴウッ!
と音を立てて炎が真ん中にいたオーガに着弾、吹き飛ばす。端にいた銀色の騎士が剣を振ると、ザシュッ!と斬撃が走り、ゴブリンと端のオーガを切り裂き、血をまき散らしながら魔物たちが地面に叩きつけられていた。
「ギャアアア!」
突如転がっていたオーガとゴブリンたちが悲鳴と共に飛び上がり、宙に固定された。地面から土槍が突き立ち、体を貫いていたのだ。体から血をまき散らしながら、絶命していく。
兵士たちが戦っていた魔物たちが一瞬で排除されたのだ。
「皆さん、大丈夫ですか?けがはありませんか?」
馬上の黒い鎧を纏った少年の声に、ハッとした兵士の1人が少年に向かって進み出た。いや、もう1人いた。2人はにらみ合いながら、馬上の少年に近づく。
「この度は助けて頂き」
「ありがとうございます」
2人の声がそろい、下げた頭のまま、再びにらみ合う。どうも隊長らしい。
何人か地面に座り込んでいる兵士たちがいる。黒髪の緑色の服を着た美少女が馬を下りてきて、傷を確認しながら、
「ヒール」
「傷が治った?」
傷ついた兵士たちを全員治療したミナミは、兵士たちに頭を下げられながらスザに近づく。ミナミの困惑した表情を見て、スザは馬を下りた。
「なんかおかしいですぅ♡。突き刺された傷ばかりで、魔物からの傷じゃないっぽいですぅ♡」
スザは兵士たちを見る。その手には槍が握られていた。
スザの前でにらみ合う2人の武装は一緒だ。いや、少し違う。鎧の首周りの色が赤と青の2種類あった。よく見ると、赤ごと、青ごとでまとまりにらみ合っているのだ。
「あの、すみません」
スザの声に、にらみ合っていた隊長たちは瞬時に顔をスザに向けた。心の中で、少しだけ引いたがそれを表に出さず、
「赤色の部隊と青色の部隊で戦っていたのですか?」
「そうだ!」
スザの質問に体長たちの声がそろう。またにらみ合った。
「仲間なんでしょ?」
「違う!」
またまた声がそろう。
「我々はショウ」
「タ」
「ジ」
「さまの部隊だ!」
隊長たちは叫んだ後、ザッ!と飛び退り槍を構えた。
「ちょっと待った!」
スザはそう叫び、隊長たちの間に入って、両手で槍をつかんでいた。
「命の恩人よ!我々はこの国を守るために戦わなければならない!」
スザは叫ぶ隊長を交互に睨み、
「戦うのは魔物たちとだ!人同士ではない!」
隊長たちは気付くと、手元から槍がなくなっていた。スザが両手に槍を持ち中央でにらみを利かせていた。
「話をさせて下さい!あなたたちが信じるショウタ様、ショウジ様と!」
怒りに震えるスザを恐れ、隊長たちは部下を伝令として自分たちの主の元に送り出した。隊長2人と話をしていくと、この戦場から近いのはショウジ様の町だとわかった。
「では、まずショウジ様の町に行きます。その後ショウタ様の町を訪ねます。隊長さん、そのように宜しくお願いします」
隊長2人は大きく頷き、ショウタの部隊は分かれ自分たちの町へと戻って行った。