第124話 ダンジョン五重塔⑯
午後、マスター部屋を出た5階でイズ、イチ、スザ、クシナ、ナギ、ミナミは集まった。今後についてどうするかを話し合うためだ。
「イチと同じように今は二つの私が存在しているわ」
金髪の美女、18歳のイズは巨大な胸を服の下からもわかるくらいにプルンと揺らせて、そう話し始めた。
「イの国では魔力体が、ここでは新たな肉体を持った私が並列している。簡単に言うと、同時に2つの場所を見ている、事柄を経験していると思ってもらったらいい。どちらも私、イズ。なんの問題もないわ」
イチも頷いている。
「体は大丈夫なのですか?」
クシナは心配そうにイズを見ている。
「この体はキドウマルの実験情報とイチの経験、私の過去の情報、それにスザとクシナからもらった遺伝情報から作り出した、高性能の半魔人体と考えてもらっていいわ」
「半魔人?」
スザの呟きにイズとイチは頷く。
「私のこの体も同じような半魔人体。でもほとんどがキドウマルの情報からできているので、突然体が崩れるかもしれないわ。だから、もう魔力体だけにするつもり。もう戦う必要もないだろうしね」
スザは首を傾げる。
「じゃあ、なんでイズは新たな体をここで作ったの?」
クシナとミナミは、はぁと小さくため息をついた。イズはスザを指差し、クシナとミナミを見る。2人は大きく頷いた。
「そりゃあ、クシナとミナミも苦労するわね。とてつもない鈍さ。やっぱり、あれか・・・」
何のお話ですか?美女たちが顔を突き合わせてブツブツ言ってます
「まあ、その、あれよ。一緒に旅をしたいのよ」
イズは頭を掻きながら、そっぽを向いて小さい声で答えていた。
心なしか、顔が赤いような・・・
「えぇ?ゴーレム馬は4体しかないのに!?」
「なぜ、そこに引っかかる?」
クシナは小さく突っ込んでいた。
「何!?私が一緒に行ってはダメなの!?」
イズはスザに顔をグッと近づけて、ものすごい剣幕で睨みつけた。
「いや、誰かが歩く羽目になりそうだから・・・」
「あんたが私を乗せて、2人で馬に乗ればいいじゃない!」
バッ!バッ!と手が2つ上がった。
「・・・何?クシナ、ミナミ?」
ちょっとトゲがある感じで、イズは手を上げている2人を見た。
「交代制がいいですぅ♡!」
「平等で!」
ギロリとイズは2人を睨む。
「私はイズよ!」
クシナとミナミは、イズをキッと睨み返した。
「旅を一緒にするのであれば」
「すでに仲間ですぅ♡!」
クシナとミナミは視線を合わせ、頷いた後、再びイズへと視線を向けた。
「仲間とは、喜びも悲しみも責任も分かち合うもの!」
2人は真剣な表情で声を合わせた。
「・・ぷっ!あははは!」
イチは手を叩きながら、大笑いし始めた。
「母上!郷に入っては郷に従え!って言うじゃない?」
イズはクシナとミナミを見て、少し笑った。
「仕方ない。クシナとミナミの言うことに従うわよ。じゃあ、これからよろしくね」
金髪、赤髪、黒髪の美女・美少女たちは手を合わせ、大きく頷いた。
スザもナギも何も言うことはできずに、イズの加入が決定した。
「西の地で、古の巨星が落ちました」
白い小袖に緋色の袴。背後に朱色の鳥居が形作られ、その前には人頭大の透明な球が置かれていた。ダンジョン核だ。そのダンジョン核を守るように、黒髪の少女は目の前で頭を垂れ、跪く人物に向かって厳かに宣言した。
「詳細はわかりません。でも、その衝撃はここにも届くことでしょう。もし迷うことがあれば、私に何なりと相談しなさい」
「はい、ありがとうございます。守り神ツクシマ様」
69話から始まったキドウマルとの戦いがやっと完結しました。でもまだ続きます。東へと進み、そして北へ。イの国に戻れるのはいつなのか・・・がんばります。