第123話 ダンジョン五重塔⑮
スザたちはまず五重塔から西に向かって島の村まで調査したが、集落の跡などはあったが人はいなかった。はぐれた魔物を討伐し、五重塔まで戻り、そこから今度は東に向かった。
徒歩で5日ほど行ったところに大きな村の跡があったが、朽ち果てており人はいなかった。魔物もいなかった。ここにいた人たちは、さらに東に逃げたかもしれないし、全滅させられたのかもしれない。
魔物は、もしかしたらきつねの村や島の村、砂浜の村を攻めるために移動したのかもしれなかったが、真実を知る者は誰もいなかった。
スザたちはダンジョン五重塔に戻った。30日を少し過ぎていた。
「ちょうどよかった」
ダンジョン五重塔の5階で出会ったイチは、スザたちの姿を見て、安堵の息を吐いた。
無数にあったカプセルはほとんどが撤去され、3つほどが残っていた。一つにだけ、カプセルの中の液体に、人が浮かんでいた。
金髪の、年のころは17か、18くらいで、全裸の・・・
「ダメェ♡!」
ミナミの声と同時に、背中にズンと衝撃がきて、世界が暗くなった。ミナミが背中に乗って後ろから両手でスザの目を覆ったのだ。
「ハハハ・・・ごめんね、ミナミ、クシナも。明日にはイズ様が出来上がった体に意識を移すだろう」
スザはクシナに手を引かれ、マスター部屋から出て、ようやくミナミによる目隠しを取られた。
イチがスッとスザに近寄り、耳打ちする。
「ババァがさ、スザはまだか、スザはまだかとうるさくてさ。お前は、処女の少女か!ってねぇ」
イチはスザの肩をパシッと叩いて、
「明日、朝からやるから来てよ。まあ、後ろのお嬢様たちとうまいことやりながらさ」
イチは片手を上げて、マスター部屋に戻って行った。
翌日の朝、スザはクシナ、ミナミと共にマスター部屋を訪れた。ナギは外で待つとのこと。
ダンジョン核が設置されている壁の前で、イチが何やら動いていた。気配に気づいたのか、振り返る。
「おお、ちょうどよかった。今からイズ様を新しい体に入れるから」
イチはまた壁に向かいカチカチと音を立てながら動き、大きく頷いた。
「じゃあ、いくよ!」
掛け声と共に何かを押すと、ダンジョン核が輝き、その輝きが壁、天井、管を通って、カプセルに伝わっていく。
カプセルが輝き、そして光が中で液体の中に浮かぶ裸の金髪の美女に流れ込んでいった。イチ、スザ、クシナ、ミナミが見守る中、光が消える。ゆっくりと目が開いた。それに合わせるようにカプセルの前部が開き、液体がザアァと流れ出る。
金髪の美女が開いたカプセルの扉を両手に持ちながら、右足を前に出し、ペタッと床に足を着いた。と、同時に前へとよろめく。
ベチャッと床に倒れ・・はしなかった。黒い鎧を纏った少年が、その濡れた体を抱きしめ、支えていた。
「久しぶり・・・で、いいのかな?イズ?」
金髪の美女が声を出そうと口を開くと、ゴバァッ!と液体が飛び散り、スザの顔を液体まみれにしていた。
「ガハァッ!が・・・あ、あはは。あははは!水も滴るいい男になったな、スザ!」
笑いながら、イズはスザから体を離し、屈伸する。首を回し、両腕と肩を腰ごとひねって、背伸びをした。
視線に気づいたのか、イズはニヤリと笑い、
「どうやらスザの趣味が変わったらしいから、ほれ、クシナ並みにしたぞ。元気になったか?」
どでかい胸の双丘を自ら両手で抱え、プルンプルンと震わす。
バシッ!とその濡れた金髪頭が叩かれた。そして体には大きな布がかけられる。
「ボケババァ!精通もしていない童貞をからかうな!」
なんだ、まだクシナもミナミも抱いてないのか・・・意気地のないやつだな。それとも私を・・
呟きの途中でイチに再び頭を叩かれ、それ以上言うのはやめたらしい。
スザ、クシナ、ミナミは顔を真っ赤にして立っていた。
イズはくるりと背を向け、
「スザ、クシナ、ミナミ、そしてここにはいないがナギ。ありがとう。ダンジョンの攻略、感謝する。そして、イチにもこの30日強の尽力、感謝する。本当にありがとう」
壁のダンジョン核に向かって歩いて行った。
「なんで?奥に部屋ないの?作ってなかったっけ?」
キョロキョロと首を左右に振りながら、イズは叫んでいた。