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第119話 ダンジョン五重塔⑪

すみません。本日の更新は夜ではなく昼で行います。

スザたちはきちんと食事をとり、体を休め、朝を迎えた。

宙に扉と、そこに続く階段が現れる。スザはクシナ、ミナミ、ナギと視線を交わした。


「勝つぞ!」

「もちろんっ!」

「はーいっ♡!」

「おうっ!」


4人は階段を駆け上り、最後の扉を押す。ギギギ・・・ときしむ音を立て、5階の扉は開いた。

スザを先頭に中へと踏み出す。


広大な平野に青い空。遠くに山々は見える。それだけだ。背後で扉がドンッ!と音を立てて閉まった。そして扉は見えなくなる。


「ようこそ。我がダンジョン五重塔最終の5階へ」


キドウマルはいつの間にか姿を現して、スザたちに話しかけていた。白の着物に紺の袴。白い髪は後ろで結び、左手には刀を鞘ごと持っている。いつもの格好だ。


「私の望みか、君の望みか・・・望みが叶うまで、さあ!殺しあおう!」


居合抜き!キドウマルは刀を一閃した。

斬撃が飛び、大地を削ってスザたちに迫る。


「ハアッ!」


ナギだ。剣を袈裟懸けに切り下す。斬撃同士が、パアァン!とスザたちとキドウマルとの間で互いにぶつかり、光となって消えていった。

既に地上にはキドウマルの姿はない。斬撃の残光の中から姿が現れ、居合一閃!・・のはずが、


ガキッ!


と火花が散る。刀が振り抜かれる前、キドウマルの目前で止められていた。細い刀を止める、幅広の黒剣。


「アハハ!スザァ!」


狂気を宿した笑みで喜ぶキドウマルに、スザは冷静にアヤメの剣を切り上げる。互いの右手が天へと振り抜かれ、キドウマルの斬撃は天空へと消えていった。まだ攻防は続いている。スザは右手の動きを利用し腰から勢いを乗せ、ブンッ!と左足を振り抜いた。


「ゲハッ!」

「ゴホッ!」


スザもキドウマルも、互いの足を右脇腹に受け、吹き飛ぶ。


ドカアッ!


音と共に土煙を上げ、大地に叩きつけられていた。土煙が消えないうちに、シュッと大地を飛び上がる影。


ガカァッ!


衝撃波が、スザとキドウマルを中心に大地を駆けた。

刀と剣をギリギリと押し合い、視線をぶつける。


「1か月!たった1か月でここまで来るとは!最高だなぁ!スザ!」


アハハと笑いながら、キドウマルは叫んでいた。


「おっ!?」


キドウマルは驚きの声を上げながら、右前につんのめる。スザが左半身を引きながら、力を後方に逃がしていた。そして、すかさず前方へ飛び込む。


たたらを踏んだキドウマルはまだ態勢を立て直せていない。そこにザッ!と斬撃が襲う。さらに炎が旋回流となって、キドウマルを包み込んだ。


数m上空に炎が巻き上がって消える。そこから弧を描き、クルクルと回転して音もなく着地した。手をパチパチと叩いている。


「素晴らしいね!4人の連携攻撃!これだよ、戦いは!」


スザは、体に傷もなく、服も破れていないキドウマルの挙動を観察し続けていた。


「でも、ちょっとだけ邪魔かな」


キドウマルは、少女たちに飛び込もうとした時、足がゆっくりとしか動かないことに気付いた。


「泥沼!?」


キドウマルは左腕を上げながら、首をすくめた。ボンッ!と音が鳴ったかのように何かとんだ。刀を振り上げたが空振り。下げた左腕の途中からが切断され、血が噴き出ている。

キドウマルは足元を凍らせ、泥濘から足を抜き終わった。


「嫌になるなぁ。先読みされていたなんて」


モコモコと左腕の肉が盛り上がり、復活した。左手をグッパッグッパッと動かし、背後を振り向く。そこには左腕を切り取ったスザが剣を構えていた。自然体。


「本当に強くなったね。君から目を離すとやばそうだ」


キドウマルはクシナ、ミナミ、ナギへと視線を巡らした後、


「仕方ない。その時々で対処だ!」


スザに向かって突進した。その場に残像を残して刀を突き出す。

紙一重で躱したスザは、伸び切った体を切り裂こうと剣を振るが、方向を変えた刀が火花を散らし遮る。


キドウマルの背後にグッと踏み込んだスザはがら空きになった背中を切るはずが再び刀に止められる。すでにスザと正対したキドウマルは体ごとスザにぶつかった。

ギリギリと鍔迫り合い。


「チッ!」


キドウマルは体ごと刀から衝撃を与え、その反動を利用しスザから飛び退る。その両足は血だらけだ。スザの足元から氷の槍がいくつも突き出ていた。キドウマルは、着地すると同時に大地を転がる。


ドオォッ!


炎の槍がキドウマルの着地したところに突き刺さり、地面を爆散させた。右手を上げるクシナがちらと目に入る。転がった勢いを利用して飛び上がったキドウマルは刀を構えようとした時、


「なっ!?」


一瞬身動きが取れなかった。

背後に土壁が出現し、そこから飛び出た土槍が腕も体も突き刺し、行動を阻害していたのだ。


「ハアッ!」


気合に、目を上げたキドウマルは振り下ろされる剣を見た。左肩口から入り、背骨を砕いて止まる。


「ゲブハッ!」


血を吐きながら、


「まだだ!」

「まだだ!」


キドウマルとスザの声が重なっていた。

アヤネの剣の魔石が光り、キドウマルの体の中で黒剣が真ん中から二つに割れる。そして魔石の輝きが割れた剣の中央に集まり、


「アアアア!」


スザの気合と共に、剣から水魔法の砲撃が放たれる。キドウマルは目を丸くしながら、土壁ごと吹き飛び、ドオオン!と爆散した。


「ふうぅぅうぅ・・・」


スザは大きく息を吐き、力を抜く。アヤメの剣も幅広の形に戻った。


「スザ様ぁ♡!」

「スザ!」

「・・・やったね、スザ」


ミナミはスザに抱き着き、ナギはその隣でうんうんと頷いている。クシナはスザと正対し、笑顔で大きく頷いた。


「勝てた・・・みんなありがとう」


クシナの背後、50m程度先に突如扉が現れた。スザはそれに気づいた。


「扉が出てきた」


スザは顎を小さくしゃくる。

3人は振り返った。ギギギ・・・と音を立てて扉が開く。


「あの扉の先がマスターの部屋・・・」

「素晴らしい!」


スザの言葉を遮って、扉の先からパチパチと手を叩きながら人が現れた。白の着物に、紺の袴。腰には刀を差している。白い髪を後ろで束ねたハンサム。


「なんで?」


クシナの声は、全員の心情を表していた。


「さあ!2回戦の始まりですよ!また楽しませてくださいね」


笑顔のキドウマルは、刀に手をかけて前傾した。

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