第117話 ダンジョン五重塔⑨
2021.8.9一部手直し実施しました。
流れに変化はありません。
4階は冬。雪が降っている。
山々に囲まれ、遠くには池があり、五重塔が立っていた。山も塔も雪化粧されている。このダンジョンの外観と全く同じだ。
池のほとりに、赤色の番傘をさした女性が立っていた。後ろ姿だ。なぜが番傘にも、女性の立っている周辺の地面にも雪がない。そして薄着。体のラインがくっきりとわかる赤と黒のドレスを着て立っているのだ。白い世界にひっそりと立つ赤い女性。絵画のようだ。
4人で近づいていくと、その女性がくるりと振り返った。そしてその垂れ目はスザたちを見つめている。
「ようこそ、4階へ。私を倒せば、あなた方の望んだキドウマル様が待つ5階へ行けるわよ」
赤髪の美女はクシナと互角のプロポーションだ。巨大な胸、細いウェスト、横に張った腰骨と尻。垂れ目と左目の横にあるほくろ、赤くプルプルの唇に細面の顔で、男を虜にするような美しさ、エロスを感じさせる。
魔物名:火竜ジョウサ 特徴:炎の支配者であり竜。人化可能。他は表示拒絶 属性:見た目通り火属性だからね(改変)他は表示拒絶 備考:女性だから丁重にね(改変)
「私は火竜ジョウサ。レイゼよりは強いかしらねぇ・・・がんばってね」
笑顔で垂れ目がなくなる。その姿が掻き消えた。立っていた地面がドオオン!と爆発する。
「チッ!」
クシナは上げた手を下ろしながら舌打ちした。
「あら、いやだわ。そんなに急がなくても遊んであげるわよ」
宙に舞ったジョウサはにこやかに呟く。そして持っていた番傘を体の前に持ってきた。
ドオオ!
激しい音と共に、傘全体から炎が噴き出る。スザはクシナとミナミを抱きかかえ、炎の射線上から飛び退く。ナギももちろん飛んで避けていた。炎が雪を蒸発させる。
ガキィッ!
たたんだ番傘が赤い光となった鋭い突きを、スザはアヤメの剣を両手に持って上へすらす。
「ハアッ!」
宙に投げられたクシナは体を自由落下させながら、両手を上空へ向けた。腕の周辺から無数の炎の矢が天を目指してつき進む。足元からジョウサに直撃した。
ドドドドドドドドド!
轟音と共に爆炎がジョウサを包む。スザはそこから風魔法で飛んで逃げていた。矢を放ったクシナもミナミに抱えられ、ふわりと地面に着地する。
風が吹き、爆炎が晴れていく。開いた番傘が肩の上に見え、笑顔のジョウサが煙の中から現れた。顔にも、むき出しの腕にも、チラリと見える太もも、ほっそりとした脛も薄手の赤と黒の衣装も、焼けてもいないし、傷も入ってはいなかった。
ジョウサはゆっくりと地面に着地する。
「足元が少し暖かくて、刺激も美容に良さそうでした。気持ちよくして頂き、ありがとうね」
クシナに笑顔を見せながら、番傘の下で小さく頭を下げた。
「グヌヌヌ!」
クシナは唇をかみしめる。
「風さん♡!」
ミナミの声に、風が渦巻きジョウサを包み込んだ。薄っすらと見えるジョウサの影は、動かない。風の影響も受けていないように見える。
突然風の中が赤く輝いた。
「回避!」
スザの声に、全員がジョウサから離れた。直後、
ドボバアアアア!
風に炎が混ざり、爆ぜた。爆風が4人に迫ったが離れたおかげで大した影響はない。炎が渦巻きながらゆっくりと小さくなっていく。しかし、その炎は消えない。そして薄手の服の上でグルグルと循環していた。その中心にはもちろんジョウサがいた。すでに番傘は閉じ、右手に握っている。
「あらやだ。とっても豪勢な服になったじゃない?」
笑顔のジョウサは右手の番傘をくいっ!と手首を捻って持ち上げた。
ゴオオウッ!
番傘の延長線上から炎が地面の上を走り、つき進む。その先にはクシナとミナミがいた。