第9話 イの塔の街解放作戦③
2021.8.4一部手直し実施しました。
流れに変化はありません。
「おい、なんか聞こえなかったか?」
人質たちに背を向け、兵士の1人が周りに声をかけている。
「南門の方かな。なんか聞こえたような・・・空耳かもしれないが」
「ちょっと隊長に報告してくる」
1人が駆け出し、女性たちが集められた講堂の中、隊長の元へと急いだ。すぐさま講堂の中から隊長と数人が現れ、
「おい、お前ら5人で南門を見てこい」
少年たちを監視していた中から指さしされた5人が、了解と返事をして走っていった。
「ああ、腹が減った・・・なんかあったのか?」
「お前気づかなかったのか?なんか声が聞こえたんだよ」
監視兵が少なくなったので、周りが小さい声で話をしはじめた。日も暮れてすでに数時間経過している。
「そうなんだ・・・腹が減ったから寝てた」
「・・・馬鹿なのか図太いのか、わからない奴だな」
スザのやつ、まだ塔にいるのか?それとも逃げれたのか?スザと共にクシナをおちょくった少年ユウは、仲間に呆れられながら、ぐうぅぅと腹を鳴らして広場の向こうの真っ暗な塔を見つめていた。
『こっちに5人向かっているわ。広場に残っているのは、17人』
5人を先に排除しよう。
『じゃあ罠を仕掛けるってどうよ』
5人の目に、門と倒れた兵士たちが写る。近づくと、門の下に兵士が1人肩で息をしながら、座り込んでいるのが分かった。
「どうした?」
兵士はうつむいたまま、首を振る。そして門の外側、南へと続く街道をゆっくりと震えながら指さした。
「4人で追いかけろ!」
「おう!」
足音が離れていく。
「大丈夫か・・・?」
声を掛けた兵士は、うっ!とうめいて座り込んだ兵士の上に、糸が切れた人形のごとく力なく覆いかぶさった。
「お前がどけばな」
ドサッと音を立て、ひっくり返された兵士の胸には短剣が突き刺さっていた。すぐさま短剣を回収し、4人を追いかける。4人は警戒しながら進んでいたので、まだ目の前だ。
ドサッ、ドサッと続けて地面に大きなものが落ちる音が鳴る。振り向いた兵士の喉に短剣が突き刺さった。
異変に気付いた最後の兵士の目に、喉を短剣に貫かれ倒れこんだ兵士の体が映る。
「貴様!」
すぐさま抜刀し、スザに切りかかろうと距離を詰める。スザが顔面に飛ばした短剣は兵士の剣に跳ね返された。
「うっ!?」
兵士は左足に衝撃を受ける。大腿部に短剣が刺さっていた。足が前に出ず、つんのめって、どうっ!と倒れこむ。その背にドンッ!と短剣を突き刺し、スザは全員の命を奪い取った。短剣と剣を回収し、門の櫓に上る。
『さあ、最後の仕上げのはじまりよ』
スザは大きく頷き、鐘を力いっぱい派手に何度も叩いた。
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