第116話 ダンジョン五重塔⑧
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『本当に素晴らしい!この竜の形態では相手にならないとは!』
「あっ!」
クシナは驚きの声を上げていた。一瞬で傷も翼も元通りになっていたからだ。レイゼは自分に氷魔法をかけたのだ。それですべての傷が回復していた。
そしてスザたちが見ている間に、レイゼの体が縮んでいく。そして最初に現れた時の鎧を纏った形へと変身していた。
「では、決着をつけようか・・なあっ!」
爆発したように突進したレイゼは、残像を残してナギの前に現れ、すでに握った氷の剣を振り下ろしていた。
ガキッ!
「なっ!?」
驚きの声を上げながら、レイゼはくの字になり後方へ飛んで行った。地面に叩きつけられ止まったレイゼは、自分を吹き飛ばした者を見た。
スザは両手で頭上に剣を掲げたまま、上げていた左足を下げている。
スザが一瞬でナギの前に現れ、右足一本で踏ん張りレイゼの剣戟を止めながら、がら空きの腹を左足で蹴りつけたのだ。掲げた剣は炎を纏っている。イチが作ったアヤメの剣は、スザの魔法をそのまま発現できる剣だった。
「ほおお!こりゃあ!酒が進むねぇ!」
スクリーンの前で叫ぶキドウマルは、またまた杯をあおった。
「まさか、ここまでとは・・・しかし!」
レイゼは立ち上がり、氷の剣を中段から、ゆっくりと上段に剣を構える。体から魔力が溢れ出て、上段に構えた氷の剣に蓄えられていった。
「我もキドウマル様の将!むざむざとやられはせんよ!」
声と共に振り下ろされた剣から氷の斬撃がドオオオン!とスザに向かって突き進む。スザの後ろにはナギ、クシナとミナミもいる。逃げられない。いや、逃げる気などあるはずもない!
「ハアアァ!」
袈裟懸けに振り下ろした剣から炎の斬撃が飛翔する。そして中央でぶつかった。しかし炎の斬撃が砕け散る。
「ああ!」
クシナの叫び声が発せられた。次の瞬間、氷の斬撃は縦に切られ、左右に分かれていた。
下から切り上げていく軌道を描きながら炎の剣が、そして黒い影が現れた。スザだ。振り下ろした氷の剣を上げようとしたときは、渾身の力を込めて剣を振り下ろすスザの姿がレイゼの目に映っていた。
ザッ!
スザの炎の剣はレイゼの左肩口から入り、胸の真ん中で止まっていた。氷の鎧が砕け、落ちていく。剣の前には傷もない巨大な魔石が現れ、綺麗な光を発して輝いていた。
「・・・見事・・・」
レイゼはニヤリと笑いながら、スザを称えた。そして片膝をつき、ドオッ!と背中から地面に倒れこんだ。
「すみません、キドウマル様。わたし・・・は・・・」
レイゼはそれ以上言葉を発することなかった。そして姿が崩れ、竜となっていた。死んでしまうと人型の変身は解けるようだ。スザに笑顔のクシナ、ミナミが駆け寄る。2人に抱き着かれながら、スザはナギに頷いた。ナギも笑顔で頷き、竜の解体を始める。
スクリーンの前でそれを見ていたキドウマルは、何も言わず杯を天に掲げた後、その杯を一気に飲み干した。
「あなた様、これは望み通りなのですか?」
キドウマルの背後から赤髪の美女が現れていた。
「・・・望み通りであり、望み通りでもない・・・」
「そう・・・」
赤髪の美女は、赤と黒の薄いドレスに包まれた肉感的な尻をプルンプルンと振りながら、キドウマルが座る椅子のひじ掛けに座り、瓶からキドウマルの杯に酒を注いだ。
キドウマルは肉感的な尻を強調する細い腰を抱きながら、
「でも、ジョウサ。お前が逝くのは望まないな・・・」
ジョウサと呼ばれた美女は、キドウマルの顔を巨大な乳で優しく包み込んだ。
「あらあら・・・本心なら嬉しいですけれども・・・」
「本心さ」
ジョウサはキドウマルの手を握り、杯を自分の口に持ってきて、あおった。そしてキドウマルと唇を重ね、ゆっくりと酒をキドウマルの口の中に注ぎ込んでいく。熱い接吻の後、
「では、あなた様の言葉を信じて、敵を葬ってきましょう」
するりとキドウマルの腕から抜け、プルンプルンと尻を振りながらジョウサは去って行った。
昼食を取り、休憩も終わろうとした時、4階へと続く階段と扉が現れた。スザたちはお互いに視線を交わし、頷いて立ち上がった。