第113話 ダンジョン五重塔⑤
2021.8.7一部手直し実施しました。
流れに変化はありません。
「まずは君らが好きなワイバーン3体で相手をしよう。ちょっとばかり、いじっているけどね」
キドウマルは先頭のワイバーンに向かって手を上げる。ワイバーンは顔をキドウマルの手の届く高さに下げてきた。キドウマルの手がワイバーンの顎をなでる。
「さあ、持てる力を出し切って倒してごらん」
3体のワイバーンが首をもたげ、翼をバサッと広げた。もうキドウマルの姿は消えていた。
魔物名:ワイバーン 特徴:空を飛び、炎を吐く。風魔法で攻撃も行う 属性:弱点はなくしたよ(改変) 備考:面白い戦いを期待しているよ(改変)
「こいつら、弱点がなくなっている!よく注意して!」
スザの言葉に3人は頷き、いつもの基本形を取った。
3体のワイバーンは宙に舞い上がり、4人から離れていく。そして急旋回し、スザたちに向かって飛んできた。ワイバーン3体が一直線に重なり合う。
「今!」
クシナは好機とばかり、フレイムランスを束ね、ゴウッ!と発射した。
いくつも重なったランスが一つになり、巨大な炎の槍と化す。着弾すると思われた瞬間、パッと翼を広げ左右に、1体はギュッと翼を閉じて急降下し、ランスを避けた。
同時に3体の口が開き、赤く輝く。
「ウォール!」
水の壁が左右と正面に立ちあがり、ブレスの炎をバチバチと弾き返す。しかし、その炎は止まらない。と思った瞬間ブレスが止まり、水の壁がバッと粉々にはじけ飛んだ。
「きゃああ!」
クシナとミナミの叫び声が響く。
4人はワイバーン3体の突撃による衝撃波を食らい、吹き飛ばされ、ドウッと大地に背から叩きつけられていた。
スザはすぐさま立ち上がる。特に負傷したところはない。さすがイチの鎧だ。ワイバーンたちは急上昇をかけ、旋回し、再び一直線に重なり合った。
それを見てスザは風魔法で飛び上がり、ワイバーンたちに向かって加速する。
黒剣を両手に持ち、頭上に掲げ、ワイバーンを切り裂く・・はずがすでに3対のワイバーンはそこにはいなかった。
左右に避けたワイバーンは翼を広げたまま、すぐさま口を開け赤く輝かせながら振り返る。焼き尽くそうとした相手はどこにもいなかった。
「ギャアア!」
泣き声が下から響く。
左右に逃れた2体のワイバーンは互いにすれ違うように旋回した時、地上に向かって血をまき散らしながら墜落していく仲間の背を見た。そして、爆発するような速さで接近するスザの、輝く刀身だけが視界を埋める。
黒い影が下から上に通り過ぎて行った。
音もなく、胴体と切り離された首がクルクルと宙を舞う。衝撃波が、残ったもう一体のワイバーンを宙でグラグラと揺らした。その最後に、ワイバーンは背に小さな衝撃を感じた。そして背に突き刺さる痛み。
それが最後に残ったワイバーンが覚えていたことだった。腹から噴出した刀身は、切り裂きながら首から顔に向かい、ワイバーンの上半分を真っ二つにしていた。
ドスッ・・・・ドスッ・・ドスッとワイバーン3体が力なく地上に落下する。その横に黒マントをはためかせ、スザがゆっくりと着地した。
「弱点をなくしたくらいじゃぁ相手にならないか・・・いいねぇ」
スクリーンの前、豪華な椅子に座り、キドウマルは手に持った杯をグビッとあおった。
「じゃあ次に行きましょうか」
突然空間に階段が現れ、上空に伸びていく。そして空の中に扉が現れた。ゴゴゴ・・・と音を立てながら、その扉が開いた。
ナギがワイバーン3体から魔石と少々の肉を回収した後、4人は階段を登って行った。