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第98話 再会⑪

ワイバーンはクシナとミナミが抑えてくれている。土壁ごとセイラを真っ二つにしたやつ。

涙を流しながら、スザはナギと剣を打ち合うでかい魔物を見た。


魔物名:コボルトジェネラル 特徴:ハイコボルトの上位種。コボルト、ハイコボルトを軍団として指揮できる。剣技を使う手練れの剣士 属性:火属性に弱い 備考:鎧に見えるが、実際は体毛を硬化させている。


スザはセイラの唇に自分の唇を重ねた。昨日の夜、セイラたちが望み、できなかったこと。そしてセイラの口の周りの血を綺麗にふき取った。


「セイラ、微笑んでる」


ユリの声にアヤメ、レイは大きく頷いた。スザは力のなくなったセイラをもう一度ギュッと抱きしめ、3人に、


「セイラを頼む」


と、立ち上がった。3人の頭をなでて、ゆっくりと歩きだす。

ナギは悪寒を感じた。背後に強烈な殺意が沸き上がったのだ。剣を押しあっていたコボルトジェネラルは殺気を浴びて瞬時に飛び退っていた。


「ギャアア!」


着地した時、両足が氷の槍に突き刺さっていた。さらに土の槍が大腿部と腹にいくつも突き刺さる。地面に固定され、身動きが取れない。


「簡単に死ねると思うなよ」


痛みと恐怖でもがくコボルトジェネラルの背後から、漆黒の冷たい声が呟かれた。


クシナとミナミは目の前のワイバーンが瞬時に凍り付くのを見た。本当に目の前でワイバーンの形をした氷の像ができたのだ。2人はそれを瞬時にやった人を見た。


2人の愛する人。いつも一人ぼっちで空や海を見て、女の子とは話さず、何事にも不真面目で、手抜きをしていた人。皆を取り戻すため、すべてを投げうち、すべてを手に入れた奇跡の人。金髪の美少女にだけ本心は見せるけど、でも時折見せる笑顔は素敵で・・・


今、魔物を背後から苦しめている男が同一人物とは思えなかった。叫び声を上げる魔物の片腕を引きちぎり、もう片腕は粉々に吹き飛ばし、片足を切り裂く。腹を引き裂き内臓を抉り出し・・・その口の両端は大きく引きあがっていた。


「悪魔・・・」


クシナが言ったのか、ミナミが呟いたのか、2人にはわからなかった。ただ2人にはスザの姿がそのように見えたのだ。


「ギャアアァ」

「うるさい!」


スザは前に回り、悲鳴を上げるコボルトジェネラルの口の中に剣を突っ込み、手首をひねろうとした。その手首を細い手が強く握った。


「もういい!」

「離せ、クシナ!」

「もう十分よ!」

「まだだ!まだセイラの恨みを晴らせていない!まだ・・・」


クシナは涙を流して必死にスザの手首を掴んでいた。そして首を強く左右に振る。

背後でグラリとコボルトジェネラルの体が後ろに傾ぎ、のけぞった。しかし腹を切り裂かれていたため、背骨が重さに耐えきれずボキリと折れ、氷と土槍に固定された両足に背中がドンとついて止まった。


「ね、もう十分よ。ね・・・セイラもきっと・・・」

「・・・ぐ・・・くぅ・・・」


スザの頬に涙が伝う。嗚咽を漏らさないように口をへの字に曲げ、歯を食いしばっていた。剣を下したスザは力が抜けたように、ドンと地べたに座り込んだ。


「お・・俺は・・・なか・・まを・・まもる・・って・・ちかった・・のに・・・みん・・なを・・・たすけ・・る・・って・・・いば・・しょを・・つ・・くる・・って・・しあわ・・せに・・する・・・って・・・」


背後に足音がした。ユリ、アヤメ、レイがセイラを大事に抱えてスザの後ろまで来ていた。


「私たちもセイラも、居場所を作ってもらえました。それに見て、スザ」


ユリが涙を流しながら笑顔でスザを見た後、セイラの顔を見る。


「ね・・・セイラも幸せだったって喜んでいるわ」


セイラはさっき見たよりも、もっと笑顔に見えた。

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