【一章】 終わり、そして始まり
初めての投稿でおぼつかない事が多々あるでしょう。
言葉使いも未熟なものでして…
これから執筆していくのと同時に、自身の語彙力も身につけて行けたらいいなーと思っております。
「あーあ、もう春休み終わりか。」
今日は春休み最終日。俺は今バイト終わりの帰路を辿っている所だ。荷物はいつも手提げ袋に入れ、手の甲を肩に乗せるようにして荷物を背負っている。
「夏休みも冬休みも、春休みまでもバイト漬けで終わっちまったよ…」
左には河川敷。とは言ってもかなり草が生い茂っており、容易には降りていけない。かなりしばらくの間芝刈を放置されているようだった。この道を通る時は毎回、「この中掻い潜ったら虫やら種やらがこびり付くんだろうなぁ」という感傷に浸りながらブルっと身震いさせていた。
右には桜の木々が列を為しており、春には綺麗な花弁の花火を見せてくれる。
今もその可憐なる花々の舞台のすぐ真横を通り過ぎながら欠伸をし、荷物を持つ方の手とは逆の方の左手で口を開閉とさせている。
「早く帰って母さんの家事の手伝いやら里紗の遊び相手をしてやんなきゃな。」
幾度も靴裏で踏みつけた道を猫背気味な格好の悪い背を向け、似合わない鼻歌を奏でながら帰宅するのであった。
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ガチャり…
「ただいま」
「おかえりー!」
少々発音の歪んだ声がさっきまで静寂を感じていた耳に飛び込んできた。
「おう、里紗か。毎度毎度部屋から飛び出て来るなよ。」
「お、お兄ちゃん、な、んて?」
里紗は先天的に耳が聞こえなかった。生まれてから音を聞いたことがないのはどんな感じなのだろう。それは本人にしか分からないだろう。故に
「あぁ、すまん。」
そう一言置いて、俺は手話を用いり、妹、里紗とのいつも通りの言葉を音として交わすのではなく、表現として交わす手話へと切り替えた。
『 いつも部屋から飛び出てくるだろ?あれ、もう少し控えめに出来ないか?疲労困憊の果てにその追撃は身体に来るわ。』
『 だってお兄ちゃんと以外の人と話す時は筆談なんだもん。会話を一往復成立させるだけでも時間かかっちゃうから嫌になっちゃう…』
里紗は分かりやすく頬を膨らましながら俯き、「はやく遊ぼうよ!」と女性の必殺技とも言える上目遣いで訴えてきた。
ずるい、それはずるいぞ。
俺は里紗の上目遣いにだけは弱い。俺は手話で『 部屋で待ってろ。』と手短に催促し、母親である、里穂のもとへ向かった。
「ただいま」
「あら、帰ってたのね。おかえりなさい。頼んどいた物は買ってきてくれたかしら?」
「頼んどいたもの?」
心当たりがない。今日は朝から夕方まで、労働基準法に従いギリギリまで働いていたからもしかしたらメールでもきていたのかもしれない。
「メールを送ったはず…あらあら、送信していなかったわ。」
なんてこと…
「母さん、しっかりしてくれよ。で、今日の夕飯は何を作るんだ?」
「メールし忘れちゃったから予定が合わなくなっちゃったわ。あらあら。」
母さんは「あらあら」が口癖のおしとやか且つ天然要素も含む少しばかり頼りない母親である。
またか…なんて内心で呟きつつ、決して数少なくない俺が夕飯を作るイベントが発生した。
「仕方ない…俺が残り物で何か作るよ。」
そう背中で語りながら似合わない自前エプロンを慣れた手つきで腰の紐を結ぶんでいた。
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そんなこんなで料理は殆ど俺が作り、母さんは助手的な立ち位置で補佐をこなしてくれた。そのおかげもあり、案外早く完成した。
夕飯を3人で食べ、俺は日課である居間のある人物の遺影がかざりつけられたもとへ、足を運んだ。
遺影の写真に写っている人物は俺の父親だ。ちょうど物心がつき始め、様々な思い出を時に刻み始めると、そんな時に、会社への道程の途中、不慮の事故に巻き込まれたのだった。
だから正直父さんとの思い出は薄い。もっと父さんと同じ時を生きたかった。今でもそう思う。けれどその本音は心に留め、遺影を前に手を合わせ、特に何も無かった今日の思い出を静かに胸の奥で語った。
部屋に戻り寝る前にネット記事でも見ようかなと色々漁っていると、
「お母さんもう寝るわね。ふぁ〜、おやすみなさいね。」
何故全国のお母さんはわざわざ寝る事を報告しに来るのだろう。なんて返事をすればいいんだ?
「そんなの報告しなくていいだろ」と内心思いつつ、「ん」と素っ気ない返事を返す。
里紗はもう寝たし、俺も明日に備えてもう寝るか。
「明日から高校2年、か。」
そう、明日は始業式だ。
ヒロインは次回登場ですね。かなり自分好みの要素が入っておりますが、私と同じような好みを持つ方、気に入ってくれる方がいらしてくれたらありがたいです。
まずは一話目、御愛読して下さり、ありがとうございました。
引き続き、執筆に力を入れていきたいと思います。