犠牲者の目撃者
「ジョニーが血を流したまま誘拐された。」
アダムは怯えた声で、何度もその言葉を繰り返していた。
あまりにも急すぎる事態に、ジョシュたちは愕然としていたが、ニーナはすぐに彼らに言った。
「警察に通報してくる。あなたたちは中にいて。外に出るのはダメよ。危なすぎる。」
彼女はそう言って、外が危険だというのにも関わらず、古い携帯電話を持って外に出た。
しばらくして、ニーナは喫茶店に戻り、入り口のドアの鍵を閉めた。
ジョシュは、心霊スポットではないと気づいた。
その”何か“というのは、幽霊でもなく、ヴァンパイアやゾンビのような、何かしらのバケモノであるということを知った。
アダムやジョシュ、エドワードは、ベティーのように、ビクビクしていた。
ベティーは今も前を向いてビクビクしている。
喫茶店の外に何かがいるという状況の中、ニーナは冷静に言った。
「警察が来るまで喫茶店の外に出ちゃダメ。何かがいる。」
喫茶店から出てはいけないということを言われた彼らは、早く逃げ出したかった。
ドアを開けて、車に乗って逃げれば命は助かるはずだが、もしもその間に襲われたらという不安があったせいか、誰も逃げることができなかった。
しかしエドワードは、喫茶店の中で警察を待つよりも、早く逃げることだけを考えていたのか、彼はニーナにこう言った。
「ここにずっといても、ここに来るかもしれないだろ。」
そう言って彼は、その”何か“を確認するために、窓から向こう側を見渡した。
見渡しても森ばかりだったが、彼は目を凝らして辺りを見渡した。
森の中を双眼鏡のように見渡していたら、何かが動く影が見えた。
その影は最初、森の中をうろついているかのような動きをしていたが、急に止まった。
その瞬間エドワードは、視線が合ったかのような緊張感が走った。
はっきり見えなかったが、動物やモンスターではないのは確かだった。
その何かは、エドワードを震えた指で指してきた。
その何かは、指先にしか震えていなかったが、エドワードは、恐怖で身体が震えていた。
エドワードは震えた声で、こうささやいた。
「なんだアレは。」
ジョシュはその瞬間、何かがいるということからか、カメラを手に持って窓の向こう側へ向かった。
ニーナが撮影禁止だと注意しているのにも関わらず、彼はひたすら、窓の向こう側を撮影した。
シャッター音が喫茶店の中で鳴り響いているとき、ニーナは焦った声で言った。
「ちょっと、撮影はダメって言ったでしょ。」
しかしジョシュはやめることなく、ひたすら写真を撮っていた。
そうしていると彼は、エドワードの言っていた何かの存在に気づいた。
その何かを確実に写すために、彼はカメラをズームさせた。
ズームしているとき、その何かは森の奥へ消えていった。
しかしジョシュは、消えていく前にシャッターを押していた。
そのあとジョシュはテーブルのほうへ向かい、椅子に座って、その瞬間をカメラ越しに見たものの、森の中ということもあり、ハッキリと写らなかった。
ハッキリと写っていなかったものの、あることが判明したため、ジョシュは皆に言った。
「髪の毛が存在しているのがわかるから、人間だ。だけど、地面に付くのかってくらい長い髪だ。」
ぼやけているものの、白髪のため目立っていた。
アダムはその発言に首を突っ込んだ。
「バカ言うな。人間じゃねえよ。」
ジョシュとアダムとニーナは、その何かを見るために窓の向こう側を向いていたが、エドワードは窓の向こう側をしばらく見た後周りを見渡していた。
ジョシュやアダム、ニーナは窓の向こう側を今も見ているが、ベティーは今も、前を向いてビクビクしていた。
他の人たちは、その正体を見たいがために窓の向こう側を見ているのに、ベティーだけは窓の向こう側を見ていなかった。
するとエドワードは、そういう状態であるベティーを不審に思ったのか、彼はベティーにこのようなことを言った。
「なぜ窓の向こう側を見ない。たとえ怖かったとしても、この状況なら、興味本位で見るはずではないのか。もしや、”知っている“のか。」
ベティーは首を横に振るも、それでもエドワードはベティーを怪しんでいた。
窓の向こう側を見ていたジョシュとアダムの視線は、ベティーのほうに向いた。
彼らは、外にいた何かとベティーには、何かしらの関係があるのかという疑問が浮かび上がった。
ベティーの身体の震えがより激しくなり、混乱しているかのように目が泳ぎ始めた。
アダムはエドワードに言った。
「謎の解明なんかしなくていい。とにかくここを逃げ出そうぜ。」
『とにかくここを逃げだそうぜ。』という言葉に、アダム自身にある疑問が浮かび上がった。
エドワードがベティーを怪しんでいるとき、アダムの怪しんだ先はベティーではなく、ニーナに変わった。
彼はニーナにこのような質問をした。
「なんでさっさと逃げるという選択をしなかった。俺が中に入って目撃したことを伝えたとき、みんな車で逃げていれば生き残れたのに。」
ニーナは彼にこう答えた。
「もし私が犯人なら、警察なんか呼ばなかった。とにかく、警察が来るのを待って」