一本道
1990年。ある大学生たちの話。
とある場所の、めったに車が走らない一本道で、キズがたくさん付いた普通車が走っていた。
乗っているのはジョシュという運転手と、アダムという男が助手席に座っていた。
ジョシュは、生まれて初めて通る道だったせいか、周りが木々だというのにもかかわらず、必要以上に運転に集中していた。
アダムは、その集中して運転しているジョシュに聴いた。
「おい、口を動かせよ。たかが一本道だ。シカしか飛び出してこねえよ。」
ジョシュは、嫌な雰囲気が漂う一本道を、手に汗を握りながら運転をしているのに、助手席で偉そうにしているアダムにイライラしていため相手にしたくなかった。
アダムは、『森ばっかでつまんねえな』 『タバコ吸っていいか』 『女の幽霊なんかいるのか』。
独り言のように喋っていた。
『女の幽霊なんかいるのか』というアダムの言葉に、ジョシュは文句を言った。
「この町の心霊スポットの真相を解き明かして本にして金にする。だからカメラを用意したんだ。
なのにも関わらずテメーは寝坊した。ジョニーとエドワードは先に着いたというのに。」
彼らの友人、ジョニーとエドワードは時間通りに心霊スポットに着いていた。
その心霊スポットというのは、町はずれにある、森の中の古い喫茶店。
その場所に訪れた若者たちは、二度と帰ることができないと言われていた。
場所がわかりにくいが、ジョニーとエドワードは運よくその場所に着き、アダムがふたりと携帯電話で連絡を取りながら、その場所に向かっている状態だった。
ジョシュ以外、乗り気ではなかった。
アダムはジョシュに、聴くのを忘れていたことがあった。
「そういえばジョシュ、その心霊スポットってどんな場所だ。」
アダムは、トンネルや廃墟と化したホテル、昔の民族の家など、どんなものか期待していたが、返ってきたのは、肩透かしの場所だった。
「喫茶店だ。古い喫茶店。そこを訪れた若者たちが、まれに行方不明になるらしい。」
喫茶店。アダムには怖さが全く伝わらなかった。
ジョニーからの電話で、その古い喫茶店のドアに『OPEN』というふだが掛かっているという情報が入った。
今も経営されているということは、心霊スポットではないだろう。
しかし、何としてでも心霊スポットと言われている真相を目の当たりにしたかったのと、本にして金を稼ぎたいという考えを持ったジョシュは、中止にするという考えは出さなかった。
しばらく走っていると、道の横で目立つワンピースを着た女性が親指を立てて合図を送っているのが見えた。
ジョシュは、こんな不気味な場所でヒッチハイクだなんて気持ち悪いと思い、無視しようとしたが、アダムがジョシュに言った。
「あの子、顔や髪の毛は不健康だが、ピッチピチの十八歳に違いない。今すぐ止めろ。」
ジョシュは通り過ぎたいのだが、良心があったのか、その女性を後ろに乗せることにした。
興奮していたアダムが、女性に質問をした。
「君、名前はなんていうんだ。というか何故ここにいる。心霊スポットの近くだ。お化けに”襲われる“。」
ジョシュは、アダムは相当な女好きというのを知っていたため、彼には飽きていた。
その女はアダムの質問にしっかり答えた。
「あたしはベティーっていうの。喫茶店に訪れたかったけど、自転車が壊れちゃって。あなたたちもどうせ喫茶店に訪れに来たんでしょ。母さんは町で一人暮らししているからずっと暇なのよ。」
古い喫茶店の話題が出てきて、ジョシュはチャンスだと思った。
ジョシュ、アダム、ベティーの三人で、その喫茶店に訪れることにした。