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王の過去  作者: 黒のノートパソコン
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4.友の死の探索

 「なぁお前見た?あれ」

 「ん?あれって何だよ」

 「学校裏サイトだよ」

 「あー。見た見た。いやー、確か自殺した女の子がこの学校にいるんだよな?」

 「そうそう!」

 (学校裏サイト…?そんなものがあるのか。いや、これは使えるぞ。)

 監視者が誰か分からないこのままよりましだろうと僕は判断した。早速家に帰って検索すると、確かに裏サイトは存在していた。しかしアクセスを何度試してもできなかった。

 「も、もどかしい…。」

 他に入るサイトがないのか探っていると、ある情報にたどり着いた。どうやらIPアドレス(?)によってパソコンからでは入ることができないそうだ。なんだよと僕はため息をつき、携帯で調べてサイトにアクセスした。そうすると確かに入ることができた。中身をチェックすると、確かに京のことであろう記事が溢れていた。さらには人物を特定する記事もあり、顔写真や学年、出席番号、そしてどこから見つけたのか分からないが誕生日や血液型、身長、住所さえも掲載されていた。ネットの特定力はここまで高いのかと実態を目の当たりにすると、ゾッとする。このままでは自分も危ないかもしれないと気が引き締まる。

 「ますは使い方だな。もし匿名にできるなら匿名設定をしておきたいな。なるほどルームを作るか既存ルームに入ることでコミュニティに参加できるのか。そこからユーザー名を自分で設定して、利用規約に同意するを押せば入れるのか。退室はこのボタンをタップすればいいんだな。総じて作りはシンプルだな。」

 同時に別問題も起こった。僕が匿名又は偽名にできるということは、他者も同様なのだろう。実際にコミュニティメンバーははっしーとかルーシーとか正直に言って誰か分からない。

 「また壁にぶつかるのか…」

 布団に横になり、僕は嘆くようにそう言って目を閉じた。


 彼らを逆探知する方法はないのかと考えはじめた。第一にインターネットを学び、以前障害になったIPアドレスとやらによって彼らを暴く方法が浮かんだ。第二に利用者に直接聞き、使用者を知っているのかどうか確かめる方法が浮かんだ。第三にルームを作り、おびき出す方法がある。結果から言うと第二の方法を使うことにした。第一の方法が時間と費用が掛かりすぎると思ったし、第三は相手の方の特定力が上回っている場合にはこちらが特定されかねないからだ。第二も特定される恐れが十分にあるのだが、彼らの勢力はあくまでも限られている。だからこそ監視者がいる。つまり勢力範囲外の人から聞き出すことは可能だろうと考えたわけだ。

 (まずはあの子なんていいかもしれないな。)

 僕が目星を付けた子は廊下側3列目に座る男の子で、彼はサブカルチャーが好きだと自己紹介で言っていたように覚えている。ほとんどの人が映画鑑賞やアイドル、音楽、スポーツが好きと自己紹介している中でサブカルチャーと答えた彼は少し異彩を放っていた。

 「ちょっといいかな。」

 僕はゆっくり彼に近づき、声をかけた。彼は本を読んでいたが、僕の方を向いて、目を見開き、首を傾げた。今まで一度として話しかけてこなかった人に話しかけられたら誰だってそんな反応をするだろう。

 「少し聞きたいことがあるんだ。でもメールで話したいんだ。だからメールアドレスを交換したいんだけどいいかな?」

 当初は直接聞くつもりだったが、もし監視者に見られている可能性を考えると見えにくいメールでやり取りした方が理に適っていると即座にひらめいた。

 「え、なんで?」

 当然のことだった。いきなりメールアドレスを聞かれ、彼の僕に対する警戒心はいよいよ伝わるレベルまで高まってしまった。僕も基本的に他人を警戒しているし、彼も僕と似ているのかもしれない。とにかく言い訳を考えなければならない。

 「いや、それはね。僕は話すのが苦手で、文字で話したいことを伝える方が得意なんだよ。もちろん、君が嫌がるならメールアドレスの交換に応じなくてもいい。でも僕は君に聞きたいことがあって、そのためにメールアドレスを教えてほしいんだ。だめかな…?」

 「まぁ、いいけど。」

 こちらに悪意が無いことをただただ示せば、大抵の人は理解してくれる。さらに先ほど疑っていたこともあり、すこし妥協してくれやすくなる。僕が見て来た人間の特性はどうやら彼にも当てはまったらしい。

 「ほんと!?ありがとう!!じゃあ帰ったらメールするね!好きな時間に返信してくれたらいいから」

僕は感謝を言って、自分の席に戻った。好きな時間ではなくすぐに返信してほしいというのが本音だけれど、彼にそこまで求めることはできなかった。


 自宅に戻り、彼にメールを送る。

 『昼間はありがとう。これからよろしくね。それでなんだけど、学校裏サイトって知ってたりする?僕は最近知ったんだけど、匿名で使えるなんてすごいよね。』

 まずは雑談を装って、彼が学校裏サイトを認知しているのかを確かめる。返信は思ったよりもすぐに来た。

 『うん、知ってるよ。』

 短いメールで、何の味気もない。偏見かもしれないが、僕くらいの年齢の人って絵文字や顔文字やクエスチョンマークとか(笑)とか付けるものだと思っていた。とにかく彼は裏サイトの存在を知っているようだ。

 『匿名とか偽名の人がいるよね。彼らを特定したいんだけど、どうやってやるか分かったりする?』

 僕は何とか雑談にしようと悩んだ。結局、5分考えて導いた答えはこれ以上雑談のように粉飾することは僕のコミュニケーション能力では難しいというものだった。非常に残念だが、もう雑談ではなく本題に入ることにした。彼は僕が本題に入ったと分かるだろうか。

 『どうして特定したいのか分からないけど、知っているよ』

 (やった!!)

 彼の返信を見て僕は軽くガッツした。少しだけ光が見えてきた。あとは裏サイトで勢力範囲外の人を特定し、その人に脅すような形になるが監視者を聞き出す。そして監視が軽い人間からクラスチャットの履歴を見せてもらい、京のことを知る。流れは出来ていた。

『教えてほしいんだ。もちろん見返りが必要なら、僕にできる範囲で協力させてもらうから。』

彼が一方的に僕に協力する可能性はあるかもしれない。でも僕としては彼が僕を裏切って、京をいじめた勢力に僕のことを漏らすことだけは避けたい。だから見返りを与え、相互関係を築きたいというのが僕の狙いだった。

 『うん、いいよ。どれくらいプログラムやシステムについて知ってる?』

 『じ、実は素人同然で全然知らない…。』

 『だったら、特定してほしい人を教えてよ。僕の方で調べるから。』

 そのメールを受け取って、僕は喜ぶどころかむしろ不安に思った。まずなぜ彼はここまで協力的なのか。僕らの接点はまるでなかった。それはつまり友情を武器に彼に頼みごとをすることができないことを意味していた。そうであった関わらず、彼は僕にありえないくらい協力的だった。

(なにを企んでるんだ。僕のことを漏らすことが狙いか。それとも見返りに強大なものを要求するつもりだろうか。確かに『じゃあこれから僕の言う事を聞いてほしい』といったこちらの自由を見返りにした条件を出されるとまずい。だからといって、ここで僕が『何が望みなんだ』と不信感を表すと協力的だった彼が非協力的になるかもしれない。そうなると、ようやく見つかった光が失われることになる。わからない。彼の望みは一体何だ。)

 もしも僕に優れた頭脳があったならば、彼の意図を掴むことができたかもしれない。しかし僕にはそんな頭脳はない。僕はしばらく悩んだ。そして―。


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