【マスターになる権利】
見ず知らずの、虎に、マスターになってくれと迫られたトウマ。その決断とは…
005
『なぁ、トウマー。マスターぁ!ねぇ、なってよー!』
子供みたいに駄々こねるな!子供はかわいいとは思えるけど、お前はちょっと違う!
「だいたい、マスターってなんだよ!」
『う~んとね……ま、マスターはマスターだよ!僕で例えるなら、僕の飼い主のこと!』
はあ、俺は、虎を飼うことになるのか?マスターになったら?いやいやいや、ちょっと怖いんですが。寝てる間に食料にされそう。
『ん?変なこと考えてるでしょ?僕が、マスターとなったマスターを食べるわけないでしょ?マスターじゃなかったら、あり得なくはないけど?お腹ペコペコだし。』
「へー。で?俺は何をしたらいいわけ?」
ま、転生して4日で死にたくないだけだからだけど?マスターにならない理由もないからだけど?(死にたくないもん。だって、この世界に来て、小説書くって決めたもん。)正直言うと、虎のペコペコだし。と言ったときの顔が、本気だと言うことに気が付いたんだ。
『う~ん、なにもしなくてもいいんだけど。僕、虎って名前あんまり好きじゃないんだよ。だから、名前付けてよ。』
あー、きた。定番なやつ。名前付けて。俺の小説のネタにでもするか?うん。そうしよう。そもそも、どんなストーリーにするか決めてないんだよな。ファンタジー系か、学園系のどっちかがいいかな。あ、あぁぁ!ファンタジー系……この世界、ファンタジーまんまだったんだった‼じゃあ、ノンフィクションとして俺の話を物語にしちゃおうかな?うん、それなら、面白味はないかもしれないけど、ストーリー的には問題無さそうなんだよな。今後、どういう風に進んでくのか分からないけど、それはそれで面白そう。
『おい!トウマ!聞こえてんのか?おーい!』
「お、おう。で、なんだっけか?名前?そうか、」
普通に虎で、目の色は銀。毛並みはサラサラで、申し分ないほど整っている。
俺は、別に虎のままで良いと思うんだけどな。う~ん、、、
「お前って、女。なんだったっけ?」
『ま、一応ね。こんな喋り方だけど。気にしないで。』
女なのか。名前も、それっぽいのが良いよな?琥珀?いや、白くないしな。虎、タイガー……銀、シルバー……
『あ、女っぽいのじゃなくていい。かっこいいのが良いからさ。』
女っぽくって考えてた俺の、時間を無駄にしやがって。責任とれよな。
トウマは、頭を絞って知識のあるかぎり考えてみたが、考えれば考えるほど出てこなくなってしまった。
「浮かばないんだけど。」
ん?返答がない。どっか行ったのか?
「ね、寝てる……?!俺が、必死になって考えてるのに、よくそんなときに……」
うん。普通に寝顔が可愛いんだけど。こんなに、怒ってるはずなのに、怒れない……もう!何なんだよ!タイガー、シルバー、ここからもう一回考え直してみるか。考えすぎず、難しすぎないやつで。
「あぁ!!思い付いた!」
『ふぉえ!?』
「シルガー。でどう?なかなか、かっこいいと思う!」
タイガーのガーと、シルバーのシル。単純だけど、普通にかわいいと思うし、かっこいいと思う。服のセンスはないけど、ネーミングセンスはあるかも?
久しぶりに、達成感があって一人で浮かれてしまった。
『う~ん、マスターが付けてくれた名前だから、文句はないんだけど……』
「なんだよ?」
この期に及んで、まだ何かさせるつもりか?名前しかつけてないんだけどさ。
『ネーミングセンス、無いね。ま、可愛いから良いけど?』
ツンデレかよ。褒めれば、ふわふわ浮いてくれる感じのやつかよ。てか、以外とネーミングセンス無いってのが、心に刺さってるんですけど。今にでも、小さな部屋に閉じ籠りたいくらい、泣きたい。
『よろしくね!マスター!』
そんな人の思いを、お構いなしに満面の笑みをふるうシルガーに、ムカつきはするが、怒る気は起こらなかった。何なんだろうな、この矛盾。
4日目のお昼は、文句なしの晴天である。
次回、【シルガーの過去】 まだ、トウマの小説は進まない。いつになったら、書き始められるのやら……勇者ってのは、忙しい。