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霧原朝陽の優雅な日常  作者: 佐久間ネロ
1/1

(^▽^)/

Episode1 入学式、

K大の入学式は毎年部外者にすらSNSにアップされるほど、奇抜で自由なことで有名である。在学生が地面でこたつを構え麻雀をしているのはもう恒例であるうえに(麻雀部とかではないらしい)、近日ではコミケレベルのコスプレ大会が始まっており、学長の石像に扮する強者も出てきたほどだった。

そして現在、この物語の主人公である霧原朝陽きりはらあさひも、幼馴染の神野京かみのきょうと一緒にこの奇抜な入学式に参列していた。

「噂には聞いてたけど、すごいねこれ。」

朝陽は人ごみにのまれそうになるも何とかして京の服の裾をつかんだ。

「やめろよ朝陽、伸びるだろ。」

幼馴染の安否より自分の服の裾を気にするような子どもの育て方はしないでおこうと朝陽は心の中で誓って京の手をつかんだ。

いやそうな顔をしながらも握ってくれるのが京なりのやさしさである。


中学時代からの幼馴染だったこの2人は、高校こそ違うものの大学ではシェアハウスをするくらいには仲が良く(本人たちの任意ではないが)、親同士も仲が良かった。

出会いは中学時代。転校してきた京の家庭は当初、世界をまたにかける山岳写真家・京の実父である神野学かみのまなぶ、小児科医である京の母親の神野鈴香かみのすずかともども非常に多忙な生活を送っていた。田舎あるあるだが、近所に住んでいた集落唯一の京の同級生だった朝陽の家はほったらかしにされた京をよく預かっており、一緒にいる機会は非常に多かった。運命の出会いとでもいおうか、お互い水魚の交わりと称するほどに馬が合い、1年もたたず阿吽の呼吸ないしツーカーの関係を築き上げたのだ。それだけ気が合ったということだろう、意図せずとも大学まで一緒になってしまった。


「入学式なんてかったるくて出てられっかよ。単位になるわけでもねーのに」

「まあわからんでもないけど・・・。そんなことよりあんた今日だって遅刻ギリギリの時間に起きて。ちょっとは早く起きなさいよ!!パンプスで走る私の身にもなってよね!」

「いや、そんなほっそいヒール履いてるからそんなことになるんだよ。スニーカーはいて来いよスニーカー。」

「あんたの都合で私が我慢するっておかしいでしょうが」

相変わらずのマイペースさに眩暈がしながらも、握った手は離すことのない朝陽だった。理由は簡単だ。迷子になりたくないからだ。


入学式の会場につき、席に着いたところで京が突然尋ねてきた。

「そういや朝陽、お前今度帰省するのいつ?」

先日まで実家にいた者の言葉とは思えないが、京の意図することに何となく察しがついたので、朝陽は触れずに話を続けた。

「そうだなあ。多分今度の大型連休になると思うけど。」

「・・・早羽いつ帰ってくるか知ってる?」

やっぱりな、と思いつつ、面白いのでからかってみる。

「さあ。多分一緒だと思うけど。そんなの自分で聞けばいいじゃない。」

「・・・・・・や、そうなんだけど・・・。」


もごもごと口をすぼめた京に、情けないわねえと朝陽はため息をついた。京は早羽のことになるといつもこれである。

だが、京は自分ばかりやられっぱなしなのも気に食わなかったので、話をすり替えた。


「お前こそ、太陽さん2年にしてMr.N大になってファンクラブまでできてるらしいじゃねーか。そんなにペランぺランで大丈夫か?もう彼女の一人や二人できてんじゃねーの?」

そうやって左下の朝陽を見ると、真剣に受け止めすぎて困惑しまくっていた。

「・・・うそ、初めて聞いたんだけどその話。」

「嘘だわ。分かれよ。」

朝陽が京を蹴り飛ばしたのは言うまでもなかった。


お互い片思い歴が二桁に到達する(しようとする)ほど恋愛には奥手だ。

京の想い人こと川野早羽かわのさわは小中学校時代の朝陽らの同級生で、中学校からはよく3人でつるんでいた朝陽の親友である。現在は東京のM大学の文学部歴史学科考古学専攻で、ちなみに見た目は完全に男で身長も京と同じくらいである。


「早羽だって忙しいでしょ。まだ一般教養だろうけどゼミに入ってからは海外飛び回るって言ってたじゃない。」

「帰ってこねーかなあ。」

「帰ってこないかもねー。」


明らかにテンションが低くなった京を見て朝陽は笑った。


「なに笑ってんだよ」

「いや、不屈の京様が一人の人のために一喜一憂してるのが面白くて。」

「へーへー。お前も俺とおんなじ運命たどれ」


やだ、不吉なこと言わないでよと朝陽が騒ぎ始めたところで入学式が始まった。


九條太陽くじょうたいようは朝陽の一つ上の幼馴染で、現在はN大学の医学部医学科に通っている、才色兼備のできた男だ。

ここだけの話、お互いがお互いを好きすぎて周りが見えなくなっており、朝陽のスートーカーと化した太陽は小中高とずっと「残念なイケメン」と称されていた。何かにつけ朝陽に連絡を取り電話をかけ、同級生にも話す内容は朝陽がこうこうこうしてどうかわいかったかなどである。小学校時代のミニバスケットから始まり、中高時代はバスケ部のエースとして活躍していたため、他校や他学年にファンはたくさんいたが校内の同学年には微塵もモテなかったというほど残念だったそうだ。ヤンデレを極めし残念な幼馴染である。

もちろん、太陽の想いを朝陽は知らない。


「でも、確かに太陽君だもんね。・・・彼女できちゃったらどうしよう。」


できるわけねーよと思いながらも、うまくいかれてもしゃくなので(京は太陽のことがあまり好きではないのだが、この話はまた後日)京はいつも朝陽を煽っている。もちろん太陽も煽っている。


「うーん、大学生ともなったら魅力ある人はいっぱいいるだろうしな。大人な女性っていうの?いくら太陽さんといえどやられちゃってるんじゃね?」

「わたし、大人の魅力ないかな」

「うん。皆無」

そんなすぐに否定すんなと殴られた京だった。

「じゃあ自分であるとおもうのかよ」

「・・・・・・」

「そういうことだよ。」


神様は不公平だとわめく朝陽に、多分そうでもないなと思う京であった。


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