修学旅行 #1
「んっ…んんー…」
両手を上にあげて体を伸ばす。
大きなあくびをした後にうっすらと目を開ける。
ベッドから降りて部屋のドアへと向かう。
そこにあるのはいつもの見慣れたカバンよりも一際大きなカバンが置かれている。
カバンを手に取って部屋を出ようとしたところで枕元の携帯がなった。
[寝坊助!ちゃんと起きたかー!今日は待ちに待った修学旅行だよ!こんな日に寝坊なんてシャレにならんからねー!]
送り主は葉菜。
メールの文脈からして既にテンションマックスなのが伝わってくる。寝起きからテンションマックスの人の体質が私には全く理解不能である。
10秒前まで眠っていた脳ミソが起きた瞬間にフル回転だなんてどうかしている。
メールを読み終え再び部屋のドアへ。カバンをもってリビングへと向かう。
リビングのドアを開けると嗅ぎなれた味噌汁のにおいが漂ってきた。自分の席について、
「おはよー…いただきます」
と朝の挨拶と食事の挨拶を同時に済ませて食べはじめる。
「……みんなの前でそんなだらけるんじゃないよ?」
お母さんは呆れ顔。
ふう、とため息を吐きながら洗濯物をしていた。
未だ半目の状態で味噌汁をすすり、ご飯を口へ運ぶ。
ものの3分で朝食を食べ終え、洗面所へ向かう。
歯を磨いて顔を洗い、制服に着替えるいつもの流れ。
「あれ?お母さんあれどこー?」
「あれはいつものとこよー」
もはや結婚何十年目かの夫婦のようなやり取りを母と交わしてお目当ての家の鍵を手に取って玄関へ向かう。
「いってきまーす」
「はいはい、楽しんでらっしゃいね」
いつものようにニコニコと送り出してくれた。
自転車のかごに手提げカバンを入れて自転車にまたがる。
家の敷地を出たところには何故か葉菜がたっていた。
「遅いぞ紗愛!まだ眠そうだけどいくよ!」
「え?葉菜?おはよう。何で?」
半ば急かされるように声をかけられた。
「紗愛が遅刻するんじゃないかーって心配してたんだよ!紗愛ならこんな日でも遅刻しそうなくらい寝るんじゃないかと…またおばさんに起こしてもらったんでしょ」
図星なのであえて返事をしなかった。
シカト。
メールで大方予想はついていたし、いつもそうだからもう驚かないが元気がすごい。
「楽しみすぎてあまり寝られなかったよー。今夜はホテルでよく寝られるかな?」
しかもこの元気で寝られなかったなどと言い出すのだからやっぱりすごい。
「えーっと…1日目はなんだったっけ?」
寝ぼけた声で今日の予定を訪ねる。
「今日?今日は確か―――――――――」
学校について自転車を駐輪場に停める。
グラウンドにはバスが1台停まっている。
その隣には宮井先生と何人かのクラスメイトが整列、駄弁っていた。葉菜は自転車を停めるが否や大きなカバンを揺らしながらクラスメイトの下へ駆けていった。
私はのんびりとカバンを持って歩きだそうとしたところで葉菜の自転車に鍵が刺さりっぱなしであることに気がついた。
葉菜の自転車の鍵を抜いてポケットに入れる。
「葉菜ー。鍵忘れてるよー」
「あっ!ごめーん!ありがとー」
今度はこっちへ駆けてきた葉菜が鍵を受け取りまたクラスメイトの下へ帰っていく。
まったく朝から忙しいことだ。
「おはようございます」
「「おはようございます」」
みんな揃ったところで宮井先生に挨拶をする。
欠席はなく、無事全員で修学旅行へ出発することができる。
「おはようございます。では、さっそく荷物をバスの荷台へ入れてください。連絡はバスの中でもしたいと思います」
バスの乗員の人にお願いしますと荷物を渡し、順にバスへ乗り込んでいく。
「今日、修学旅行1日目は、栞にも書いてある通り、まず機体の生産工場へ見学へ行きます。その後、夕方になってからはホテルへ向かいます」
今日は工場見学。
憧れの機体がつくられていくところが見られるととても楽しみにしていた。
そして夜はホテルのご飯、お風呂、みんなでお話。
それももちろん楽しみである。
「出発します。みなさん、シートベルトをお願いしますね」
運転手さんの案内でみんながシートベルトを締める。
それを確認した運転手さんがアクセルを踏み、バスが走り出した。
修学旅行、たくさん思い出が作れるように目一杯楽しもう!
こんにちはこんばんはイロハです。
なんとなく気がのったので後書きを書いております。
とりあえず、読んでいただきありがとうございます。
さて、1話から話題にはあがっていた修学旅行ですが、今回からスタートになります。
ぜひ、たくさんの思い出をつくってほしいものです(笑)
後書きになれていないので何をかいたらいいのかわかりません(汗) ということでこの辺にしようと思います。
次回も読んでいただけると嬉しいです。