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鉄の世界に咲く花は  作者: イロハ
一年生
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修学旅行 #7

脱衣場の入り口にかかる暖簾をくぐると、既に湿度が高く、温度が上がるのを感じる。


スリッパを脱いで脱衣場にあがる。

そこには複数の棚があり、篭がところ狭しと並べられている。

私たちは適当に篭を選び、手に持つタオルや下着を篭の中へ。


浴衣を脱ごうと帯に手をかけると、


「おっと紗愛まって!私帯引っ張りたい!」


「やだよ!自分の引っ張って…ちょっと待って!あ、幸助けてー!」


と、私はそこで地雷を踏んだことに気づく。

あの幸がこの状況で素直に助けてくれるハズがない。

口元を悪く緩めた幸が手をワキワキさせながらにじりよってくる。


「やめなさい!」


背後から谷本さんのよく通る声。

怒られた2人が谷本さんを見るや否や目を光らせる。


「ねぇ幸、谷本さんってさ…その…大きいよね?」


「なぁ葉菜、あれ、触ったら柔らかいのか?」


何やら不穏な会話を聞いてしまったような気がするがあえてスルー。

2人から解放された私は改めて浴衣を脱ぎ、下着を外してタオルを手に取る。

周りのクラスメイトの大半はもう脱衣場にはおらず、浴場の湯気越しに姿があった。

ふと、左手の指をクイクイと引っ張られた。


「紗愛、早く行こう?」


左を見ると、タオルで前を隠した夕が立っていた。

上目遣いの愛らしい姿に、私のなかで微かに燃えていた谷本さん救助の灯火はあえなく鎮火。


夕の手を握り返し、


「行こっか」


と返事。

その返事に夕の顔色がうっすらと明るくなった。

手を繋いだまま、2人そろって浴場の入り口へ。


「ちょっと新城さん、黒森さん、どっちでもいいから助けてよー!」


ごめんね谷本さん。

私が助けに入っても、私という犠牲者が増えるだけなの。

恐らく。

罪悪感を揉み消すように夕の手を再び強く握り、足早に浴場へ。


まもなくして脱衣場から谷本さんの悲鳴が聞こえた気がした。

別に、いじめてる訳じゃないもんね。

ただの女の子同士のちょっとハレンチなじゃれあいだもんね。

…………きっと。多分。大丈夫。

周りのみんなも特に気にしている様子はないので、私も周囲の雰囲気に流されることにした。



シャワーの前に来ると、さも当然のように夕が私の前のイスに座った。

蛇口をひねると、シャワーから水が出る。

手で温度を確かめると、まだ若干冷たかったので、手で水をはじいて夕にかける。


「ひゃっ」


と小さな声をあげて驚く夕。

不意を突かれて恨めしそうにこちらを見る夕に、


「ごめんごめん」


と謝る。

シャワーからお湯が出始めたところで、夕の髪にかける。

シャンプーを手に出し、手で泡立ててから夕の長い髪をワシャワシャと洗う。

夕も目を閉じて気持ち良さそうで何よりだ。


一通り洗い終わったところで泡を流す。

次は体だが、流石に前は自分で洗うようなので、背中を流すことにした。

夕の華奢な背中を泡でこする。


「気持ちいいですかー?」


と尋ねると、夕は頷いて返事をした。

その顔が少し赤らんでいたので、私は思わず悪い笑みを浮かべ、

「えいっ」

「―――――――――――っ!?」


脇腹をツンと指でつつくと、夕の体がビクッと跳ねた。

赤い顔で睨まれ、私は両手を上げて降参ポーズ。

夕はシャワーで泡を流すと、立ち上がって私に座るよう促す。


ここで断るとしばらく機嫌が悪そうなので、というかこんな状況でなくても断らないが、素直に従いイスに腰を下ろす。


「紗愛、髪きれいだね」


「ほんと?ありがと」


髪の先まで丁寧に洗ってもらったところで、夕がボディーソープを指差した。


「次、背中流す、から、ボディーソープ取っ」


「「風呂だーー!」」


見事に夕の声を遮り、葉菜と幸が浴場へ飛び込んでくる。

2人はシャワーで軽く体を流し、浴槽へダイビング。


「…ごめん夕、なんだった?」


「……いい、自分で取る」


ふいっとそっぽを向きながらボディーソープを手に取る夕。

泡立った手で背中をこすってもらっていると、


「はぁ…全く何なのよあの人たちは…」


隣のイスに谷本さんがやって来た。


「お疲れ様ー谷本さん」


苦笑いをしながら谷本さんに声をかける。


「ええどうも…あの人たちの元気にはほとほと呆れるわ」


谷本さんも苦笑いをし、こちらを見る。

その様子から察するに、半ば見捨てたようになったことは特に気にしていないようで一安心。

後ろを見ると、例の2人は意外にも暴れることなくゆったりとお風呂を楽しんでいた。


「いつもあれだけ大人しければいいのに………」


谷本さんの小さなボヤキは、シャワーから流れる水音にかき消されてしまった。

その後、私は夕に全力で両脇腹をつつかれながらも無事背中を流してもらった。


「私は先に浴槽に行くね。夕も行く?」


すると夕はフルフルと首を横にふる。

どうしたものかと思うと、夕は谷本さんの方を向き、


「背中、洗ってあげる」


「そう?じゃあお願いするわ」

微笑(ほほえ)まな光景を見届け、私は浴槽へ向かった。

足の指先で温度を確かめると、ちょうどいい感じ。

足からゆっくりと浴槽へ入る。


全身が湯に浸かるのと、葉菜と幸から思い切りお湯が飛んでくるのはほぼ同時だった。

どーも筋肉痛なイロハです!


やってきましたお風呂回。

こういうシーンは中々書くのが難しいですね。

前回の後書きで事前に予告したのでどうかお許しを………(泣)

どのあたりの描写なら許されるのか、探り探り書いていきます(笑)


想像よりだいぶ長くなったお風呂シーン。

例の暴走コンビと夕を中心に書きました!

どうか届いて夕のかわいさ!


さて、今回はこの辺りで終わりたいと思います!

次話も読んでいただけると嬉しいです!

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