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鉄の世界に咲く花は  作者: イロハ
一年生
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日常の片鱗

 西暦6000年、身の毛もよだつ咆哮が轟いた。


 黒い雨が降った。


 それが人々に対する宣戦布告であると理解したのは、それからまもなくのことである。






「ん…ふあぁぁ……」


 眠い目を擦りながら大きなあくびをする。

今頃東の空には大きな太陽とかいう星が照っていることだろう。

いつもの事ながら朝は苦手だ。

なぜこんなにも気持ちがいい布団のなかからでなければならないのか。

 辛い。


「そろそろ起きなよー、遅刻するぞー」


 毎朝の母の口癖のような文句。

後半の言葉の効果は、学生にとっては絶大なものだ。

 私はいやいやベッドから降り、自分の部屋のクローゼットを開き、制服を手にとって着替える。

とても、憂鬱な時間だ。

 とはいっても、学校が嫌なわけではない。

朝がいやなだけだ。


 階段を降りてリビングのドアを開くと、味噌汁のにおいが鼻腔を刺激してくる。


「いただきますぅ~…」


 半分寝ぼけての朝食。

食べながら寝てしまうことも少なくない。


「相変わらずねぇ。もう少し年頃の女子らしくしたら?来週は修学旅行なんだから。葉菜ちゃん達に恥ずかしいとこみられるぞ?」


 そう、来週は修学旅行。

私の通っている白峰高校では1年生が修学旅行に行くのだ。

葉菜と同じ班になれたときは嬉しかった。

クラスのみんなとはもうだいぶ仲良くなったけど、それでも幼稚園の頃からの幼馴染みと同じなのはどこか安心する。


「ごちそーさまぁ~………」


 朝に弱い私はたいして朝ごはんも食べられないタイプ。

ご飯と味噌汁だけの簡単な朝食を済ませ、洗面所へ向かう。

顔を洗って歯を磨いた後、昨晩のうちに準備した、玄関においてあるカバンを手に取る。


「いってきまーす」


 顔も洗い、寝起きよりは芯のある声で登校の合図を親に送る。


「はいよ、いってらっしゃい。気をつけて」


 母の返事を聞くや否や、戸に手をかけ、ゆっくりと押す。ドアが開くと、みなれたいつもの道路や向かいの家が目に飛び込んでくる。





 太陽なんて見えない、暗黒の空と共に。








 自転車をこいで高校へ向かう。

他の信号と比べて妙に長い信号につかまり、ぼんやりと待っていると、


「おーーい、紗愛ー!」


と、元気に名前を呼ばれた。


 葉菜だ。

 朝だというのに元気ハツラツな声が、ぼんやりとしていた耳に刺激を与える。


「おはよ、紗愛!相変わらず眠たそうだね」


「んん、おはよぉ葉菜。そっちこそ、朝から元気だねぇ」


 弱々しい返事をすると、葉菜はさらににかっと笑顔を見せる。


「だってさ、来週は修学旅行だよ!お泊まりだよ!今から楽しみでしょうがなくって!」


 うちの高校は修学旅行は1年生の行事になっている。

他の学校では2年生か3年生の行事というのが一般的だろうが、うちの学校ならではなのだろう。


 まあ確かに修学旅行は楽しみだ。

かといってそれが朝の活力に繋がるかといえばそれはまた別の話。

幼いころから一緒なのだから少しはうつったりしないか、その元気。


 なんて、何気ない会話をしていると、信号はいつの間にか青。

二人はペダルを踏み、ゆっくりと自転車が動き出す。

ここから学校まではそう遠くない。

自転車で7分ほどで着く。


「ねえ見た?昨日の歌番組!やっぱり‘敢ジャニ’はかっこいい!」


「あー、見たよー?よかったよね、新曲!」


 ‘敢ジャニ’の話ともなれば眠気は勢いよく引いていく。

私たちは‘敢ジャニ’の大ファンなのだから。


「今度LIVEの抽選会行ってくるから!お一人様チケット2枚までだから、紗愛の分も絶対取ってきてあげる!任せとけ!」


「頑張って!お願いします!」


 頭を下げて葉菜に託す。

どうかあたってくれますようにと。

あいにくその日は前々から家族で遠出をする予定がはいっており、抽選会に行くことができない。

だから、葉菜に「なんとか!」とお願いしたところ、二つ返事で「了解!」とのことだ。


 話しているうちに、学校に着いた。

門を通り、自転車置き場へと向かう。

今日はいつもより少しはやかったため、日頃より自転車の数は少ないように感じる。


 自転車を並べてとめ、昇降口へと向かう。

その間にも修学旅行やら敢ジャニの話やらをしながら進む。

昇降口にたどり着き、スリッパに履き替え、教室へ。


 私達1年生の教室には既に6人ほどクラスメイトがいた。

葉菜はカバンも下ろさずそのクラスメイトのもとへかけより、会話を始める。

 私は自分の机へと向かい、カバンをおいて教材の整理を始める。

その後はちらほらとクラスメイトも登校してきて、いつの間にか全員出席。

 ガラっと教室の前の戸が開くと、担任の宮井先生が入ってくる


「はい、あいさつしますよ。全員、立ってください」


 朝の習慣、先生とのあいさつを済ませると、その日の連絡事項諸々を聞き、朝の時間が終わる。

宮井先生が教室をでると、クラスメイトは一斉に話を始める。

私も例にもれず、隣の子と会話を始める。


「今日は1時間目から実習だって…………めんどくさいねー」


「いいんじゃない?目も覚めるし」


「えー、でも午後とか寝ちゃうよお」


 会話をしていると、時間の流れはあっという間。

すぐに1時間目開始5分前のチャイムが鳴り、実習のために移動をすることに。


 用具を手に取り、教室を出て、更衣室へ向かう。

汗をかくため、制服ではなく一度着替えるのだ。

着替え終わって校庭へでると、既に宮井先生が待っていた。


「そろそろ1時間目、はじめますよ。みなさん、並んでください」


 先生の声に合わせるように、始業のチャイムがなる。








 兵士訓練高「白峰高校」。

 今日も1時間目が始まる。

どうもこんにちは。イロハと申します。

この度は、「鉄の世界に咲く花は」を読んでいただき、誠にありがとうございます。本作は自身も初の執筆となりますので、至らぬ点は多いかと思いますが、次回も読んでいただけたら幸いです。


改め、読んでいただき感謝感謝です。(‐人‐)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最初の印象としては、読みやすいという感じです。 時間はゆっくり流れていて、その分、描写は丁寧だと感じます。 [一言] 学生のリアルな気持ちとかが、出てて面白いと思います。
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