第0発目 始まりの拳
初めての方は初めまして、他の作品から来た方はありがとうございます。
Banapanと申すものです。今回は人生初VRMMOを書いていただきます。未熟な部分があればすぐに指摘しても構わないので宜しくお願いします。
毎週日曜日に他作品と共に投稿しますのでどちらもよろしくお願いします。
「真央お姉ちゃん、ミーと一緒にゲームしよう!」
私の名前は大黒真央。高校一年生で明日から夏休みだ。下校中に私の学校の中等部三年生になった可愛い私の妹、大黒みゆがサイドテールを揺らしながらゲームをしようと話を振ってきた。
「・・・ゲーム?」
「そう、最近話題になっているフルダイブ型のVRMMO,‘MUGEN・JOB・ONLINE’って言うゲームだよ。明日の午後1時に正式オープンするから一緒にやらない?」
「・・・良く、分からない」
「やり方はミーが教えるからさ」
みゆの一人称が独特な呼び方でミーと言っている。最初はみゆと言っていたけど、大きくなるにつれてミーに変わった。
しかし、ゲームか・・・あんまりやった事も無いし、そもそもみゆの様にバイトをしているわけでも無いしね。今話題になっているVRゲームだったっけ?
「・・・お金無い」
「大丈夫!実はミーがそのゲームのβテスター特典で二つソフトを当たったんだ!後は真央お姉ちゃんのVRヘッドギアを買えばオッケーだから」
そういえばこの前、何か凄く喜んでいた時期があったような。あれだったのかな?
「・・・いくら?」
「え〜っと、5万」
「・・・高い、2万5千円」
「残りの2万5千円はミーが払うからね?お願い!」
可愛い妹がここまで言うんだったらやるしかないね。最近になって新しいことに挑戦して見たいと思ったし、 ゲームやってみようかな?
「・・・分かった、買う」
「本当?ありがとう、お姉ちゃん!」
みゆは嬉しいあまり抱きついて来た。可愛いなぁ。私の妹、マジ天使だね。
そのまま家に帰っていると、目の前に派手に髪を染め服装も制服と言えないほどにカスタマイズされている不良軍団が見えてきた。周りから見れば避けれ通るのが常識だけど、私達はあえて避けずに真っ直ぐ進んだ。なぜかと言うと・・・
「「「お疲れ様です、姉御!!!」」」
不良達が左右に分かれながら道を開けて、角度120度頭を下げながら大声で挨拶してきた。
「・・・声、近所迷惑」
「「「(さーせんでした!)」」」
今度は声を低く勢い良い挨拶を繰り返した。私達が通りすがっても不良達は頭を上げないまま姿勢維持していた。
「やっぱりお姉ちゃん、凄いね!いつ見ても慣れないけど」
「・・・迷惑」
「この都市全部の不良達を従わせるなんて。流石にお爺ちゃんに鍛えられたから最強だね」
「・・・判断しにくい」
「でも、お姉ちゃんがちゃんと話せたらここまではしないかもねー」
「・・・無理」
「口数が少ないと怖く感じるのかもね」
「・・・みゆ、意地悪」
「だって、お姉ちゃんコミ症でしょ?」
うっ、みゆはたまに毒舌になって痛い事を言うね。
そう、私の一番の悩み。それは、人とは上手く喋れない。目を合わせるのが怖いとそう言うのではなくて、単に言葉がワンテンポ遅く、言葉が少ない。世間で言うとコミ症。別にコミ症だから人付き合いが嫌いではなく、友達がいないと言うわけではない。友達が少ないだけ、のはずだ。口数が少なくても家族は私の言いたい事は伝わるけど、赤の他人となると上手く伝わらない。そのせいで不良達に何度も絡まれたけど、武闘家の爺様に鍛えられていたので返り討ちにしまった。その後も続々と私目当てで来る不良達が後を絶えなかったけど、手を出されたら構わず正当防衛と言う名の鉄拳をお見舞いした。以来さっきの様に私を見かける度に従っている。
「だから、一緒にゲームして治して行こう。ゲームだったら現実じゃない仮想空間みたいな所だからね。なりきりでも良いから沢山喋ってみようよ」
この場にマジで天使が降臨した。まさか私の事を思ってゲームを進めたのね。こうなったらとことん楽しんで見ようじゃない!
「・・・買おう」
「今から行く?それなら電車に乗って隣駅まで行かないといけないけど」
「・・・行こう」
「分かった!それじゃ、駅までゴーゴー!」
「・・・怪我するよ」
私はみゆに引っ張られながらVRヘッドギアを買いに行った。
早速ゲーム販売店に着いた私達。ゲームを買うのは初めてでどこにどうすれば良いのか分からなかったけど、みゆが色々と教えてくれた。最初は聞き取れていたけど、途中から専門的用語が出てきて何を言っているのか分からなくなった。周りを見回すと「MJO(MUGEN・JOB・ONLINEの略)間も無く正式オープン!」と大きく宣伝されていた。広告の映像を見るとゲームとは思えないほどリアルな風景で何人の人は大きな岩の人形と戦っていた。その中で目立つのが金髪でポニーテールの女騎士が仲間が攻撃される前に仲間を守り、岩の人形の注意を引いていた。凄いのが全ての攻撃を盾で防ぎ、弾き返しては隙を作っていた。女騎士のお陰で無事に岩の人形を倒した。あんな大きな敵に迫られているのに怖くないなんて、凄いね。
ん? あのキャラクター、よく見るとみゆに似ている様な似てない様な気が?
「・・・似てる」
「ありゃ、やっぱり分かる?キャラメイクを念入りにがんばったけど、お姉ちゃんにバレちゃったな〜。ここだけの話だけど、あれβ版の私達パーティーでプレイした実際の映像なんだよね」
「・・・有名人?」
「結構色々な異名で呼ばれてるけど、あれは一番プレイが上手かった瞬間を色んな角度から撮った映像なんだよね」
「・・・凄い」
「たまたまだよ、たまたま。あ、あそこにヘッドギアがあるよ!」
話題を逸らそうとしているけど、みゆは嬉しそうな顔をしていた。ゲームだとあんなに輝いているんだね。中々楽しめそうな気がするよ。
ヘッドギアの値段は税込合わせて5万位だった。私が持っている全額とみゆが出してくれた残りの半分でヘッドギアを購入した。勿論、上手く話せないからお会計全てをみゆに任せた。
「ヘッドギア、ゲットだぜ!」
「・・・古い」
「良いじゃん!物とか何かを手に入れたらこのセリフが一番なんだよね」
「・・・そう?」
「ま、無事に買ったし!帰ろうっか?帰るついでに夕飯の具材も買って帰ろうよ」
「・・・ハンバーグ」
「ハンバーグ食べたいの?だったらひき肉を買って帰らないとね。肉が無かったからね」
「・・・楽しみ」
「そうだね!んじゃ帰ろう」
それから家に近くの駅に戻り、夕飯の材料を買ってから帰った。両親2人とも共働きで夕飯が出来る頃に帰って来るので、家事の殆どをみゆがこなしている。私は家事が上手くないので物を片付るかゴミを出すのが全部だ。
今日の夜ご飯は私の要望通りにハンバーグ!私の大好物だ。しかも今日のハンバーグは中にチーズが詰まっている。みゆが私とゲームが出来るのが嬉しいのかいつもより奮発してくれたみたい。やっぱり私の妹は天使だ。
「「ただいま〜」」
丁度出来上がった頃にお父さんとお母さんが帰って来た。私は二人の荷物を持ってあげた
「・・・お帰り」
「ありがと」
お父さんは私より背が高く、ざっと185センチ位で自分で言うのも何だけどかなりイケメンだ。最近小じわ出て気にしているみたいだけど、ダンディーな外見になって来た。
「いや〜、さっき帰る時に隣の町の不良だったのか知らないが絡まれたよ。でも、真央ちゃんの親衛隊に守られて事無く帰れて良かった良かった」
「・・・潰す?」
「おっと、女の子がそんな物騒な事を言っちゃいけない。凛々しさが無くなるぞ?」
お父さんはイケメンで愉快な人だから結婚していてもモテる。家族相手でもこんな感じなので家族でもたまにドキッとなってしまう。
「もう、あなた!立ってないで早く上がってください!」
お母さんはみゆと同じで元気溢れる性格の持ち主だ。ポニーテールがよく似合う。二人の子持ちとは思えないほど若く見えていて、たまに買い物を行く時に姉妹かと間違われる事があった。
「おっといけない。みゆの料理が冷めてしまうな」
「しっかりしてくださいね」
「・・・ハンバーグ」
「おお!今日の夕飯はハンバーグか。楽しみだ」
二人は靴を脱いですぐ台所に向かった。
「パパ、ママ、おかえりなさい!」
「「ただいま」」
「もう座っていて良いよ。もう出来たからね」
「はーい」
みんな家族の決まった席に座った。
「それではいただきます!」
「「「いただきます」」」
早速ハンバーグをフォークで切り込むと中に入っていたチーズがとろけながら出てきた。一口に切って口に運ぶ。感想は予想を裏切らず凄く美味しい!幸せだ〜
「うん!美味しい。今日の夕食は豪華ですね」
「みゆちゃん、なんか良い事があったのか?」
「へへへ、お姉ちゃんと一緒にゲームできるのが嬉しくて奮発しちゃった」
「おお、真央ちゃんもMJOをやるのか?」
「真央ちゃんも一緒に遊べるの嬉しい事ですが、宿題ややる事をちゃんとしてから遊んでくださいね」
「はーい!」
「・・・大丈夫」
「なら大丈夫です。寝る時間もちゃんと守ってくださいね」
家族でゲームの話をしながら美味しく夕食食べた。食事を済ませた私は部屋に戻って寝る準備をした。部屋の中は可愛いぬいぐるみやグッズが置いてある。家族や親友以外は知らない秘密だ。ほかの人たちは私の部屋にダンベルやトレーニング用の道具が置いてあると思い込んでいる。なおさら他の人に知られたくないので秘密してもらえるようにお願いした。
明日で夏休みと初のゲームだ。楽しみだね。沢山喋れるか不安だけど、頑張ろう。
小さな決意と期待と共に眠りについた。
女番長って憧れますね。