いつまでも、いつまでも。
「そんな冷たい石をずっと眺めてどうしたんだい?」
長方形の濡れたような黒い石を前に立ち尽くす君。
吸い込まれるような君の瞳に僕は映っていない
もう見つめ合うことの喜びと幸福すら忘れかけてしまっている
形の良い耳に僕の声は決して届かない
僕に名前を呼ばれて振り向いた時の笑顔はいつまでも忘れはしない
いつもはしていない口紅が塗られた唇に触れることはできない
初めてのデートの別れ際にした、あの甘いキスは昨日のように思い出せる
石を撫でる君の白い手に僕の手は決して重ならない
雪の降る日でも僕を温めてくれたその手はまだ僕の感覚を覚えているのだろうか
いつだって君を愛していた
いつまでも君を愛している
これからも君を愛し続ける
交錯することのない視線と想い
でも、きっとまたいつか
君と逢えるかな
だから僕は今日もここで待つ
君が来てくれる限りずっと待つ
いつか君が来なくなるその日まで
▽
黄金の満月が妖しく空に輝いている。
その光が照らすのは一人の少女。
何もない虚空を見つめて、石に刻まれた亡き恋人の名をぽつりと口にした。
答える声は、ないーー