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異世界保健所  作者: hybrid
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序章

※現実の保健所と異世界保健所では業務内容が異なっている場合があります。ご注意ください。



その世界のその国にあるその王都は、かつての大戦で得られた莫大な戦争賠償により経済が潤い、生活水準のみならず、文化水準までも向上していた。



人、亜人は勿論のこと、何かしらの形で意思疎通が可能な生物ならば、誰でも受診できる医院。


医学とは異なる方法で人々を治療し、あるいは救済を与える魔法院。


医学、魔法の発展を推し進め、教育と研究を担う学院。


医院や魔法院と協同し、あらゆる病を癒す薬を処方する薬局。


周辺諸国の特産品を日々仕入れ、食卓に彩りを加えるマーケット。


どの種族の舌をも唸らせる、極上の料理を提供する食堂。


生活の疲れを落とし、料理と風情をもってもてなす大浴場や旅館。


人々の娯楽の中心となり、流行を発信する劇場。


無生物から生物へ、又は世界から世界への転生を請け負う転生院。



これらは全て、大戦の後にできたものだ。

大戦の前にも類似したものはあったが、今ほど洗練されてはおらず、規模も小さかった。ところが、大戦が終結したことで人々の心に安心と余裕が生まれ、これに戦争賠償による経済の活性化が相まった。戦争や病苦に恐れることなく、楽して遊んで暮らしたい、という人々の心理は各種産業の発展と大規模化の原動力になったのだ。


原動力に後押しされ誕生した各種施設は必然、健康や歓楽を提供するものであり、しかし同時に、ある種のリスクを孕んでいた。というのも、使用者が多い施設で感染症の発生や転生ミス等の事故や事件が発生すると、その被害は甚大になるのである。実際、この王都では過去に医院による医療ミス、学院での病原体漏洩、旅館での感染症事案等が多発し、死傷者や感染者が発生していた。人々からこれらの問題解決の要求があり、王命により設立されたのが異世界保健所である。


即ち、感染症の発生や転生ミス等のリスクを除去し、人々の生命と健康に関わる事項、「公衆衛生」を監視、向上させるのが異世界保健所の仕事である。ただし、一口に「公衆衛生の監視、向上」といってもその業務は多種多様であり、感染症の調査、研究から医院の人事管理の監査、果ては高齢者の食事に対するアドバイスまである。そのため、異世界保健所職員は多種多様な知識、技能、経験を有しており、医学系の資格を持つ者、星系魔法の大魔導士より免許皆伝を授かったもの、転生ミスを実際に被った異世界の一般人等、枚挙に暇がない。


これは、転生者ではないがいくつかの資格を持っている異世界保健所職員「テイク・ヘンドラ」が、行きつけの娼館「ダーク・ミクスチャー」に業務で立ち入り検査を行うところから始まる、異世界公衆衛生物語である………




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