#005「目覚し」
#005「目覚し」
@シュエットの家、東海林の部屋
フィッシャー「グンモーニング、ショージ!」
フィッシャー、ベッドにダイブ。
東海林「グフッ」
フィッシャー「外は今日も快晴だよ」
フィッシャー、カーテンと窓を開ける。
東海林「眩しっ」
フィッシャー「早起きな鳥は、より多くの餌にありつけるっていうだろう? まぁ、シュエットは深夜から明け方に執筆して、昼前まで寝てることが多いけど」
東海林「そうですか。ビッキーは?」
フィッシャー「あとで起こすよ。寝起きが悪いんだけど、その癖、起こさないと怒るんだ。だから、助っ人を先に起こそうと思って」
東海林「そういうことですか。すぐ着替えますね」
フィッシャー「オゥ。なるべく早く済ませてくれよ」
フィッシャー、廊下に向かう。
――今夜からは、きちんと鍵を閉めておこう。毎朝、闖入者に体当たりされて目覚めるのはゴメンだ。
*
@シュエットの家、ビッキーの部屋
フィッシャー「よく寝てるようなので、起こす前にアイドル時代の写真を鑑賞しようと思いまーす」
東海林「やりたい放題ですね」
フィッシャー「鍵を預けるほうが悪いんだよ。たしか、この辺にあるんだ」
フィッシャー、ベッドの下からスクラップブックを引っ張り出し、広げて見せる。
フィッシャー「あった、あった。右側で歌ってるのがビッキー」
東海林「いかにもアイドルって感じですね。純情可憐な正統派」
フィッシャー「そうだろう? 人気絶頂期に婚約発表、そして解散。もったいないことだよな」
東海林「そうですね。でも、人知れず気苦労が絶えなかったようですし、人気の影で、それを妬む人も少なくなかったのではないでしょうか?」
フィッシャー「放っとけば良いのに。悪目立ちする奴は、そのうち勝手に自滅するさ」
東海林「そうでしょうか?」
フィッシャー「そうに決まってるじゃないか。だって、考えてご覧よ。自分の居ないところで自分の悪口を言うかもしれない人と、お近付きになりたいと思うかい?」
東海林「それは、思いませんけど」
フィッシャー「だろう?」
――ポジティブかつプラス思考。お人好しで性善説に則って行動する、ちょっと頭の中がお花畑な好青年。
ビクトリア「朝から何を騒いでるんだい、私の過去写真を勝手に覗いてさっ」
ビクトリア、フィッシャーの右手首を叩く。スクラップブック、フィッシャーの足下に落ちる。
フィッシャー「アウッ。角が、角が足先に」
フィッシャー、右膝を曲げ、両手で右足を前に抱え、左足で跳ね回る。
東海林「お騒がせして、すみません。普通に起こすつもりだったんですけど」
ビクトリア「ショージが謝ること無い。フィッシャーが原因なのは、火を見るよりも明らかだから。――いつまで跳ね回ってんだい、フィッシャー」
フィッシャー「怒りの火が静まるまでだよ」
ビクトリア「なら、一生跳ね回ってな」
フィッシャー「ウワッ、酷い! 何とか言ってよ、ショージ」
――朝から賑やかなことで。今日も今日とて、けたたましい一日になりそうだ。